著者
高野 麻子
出版者
明治薬科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

グローバル化が進行する現代において、指紋、静脈、虹彩、声紋、顔といった身体的特徴を利用して個人を識別する生体認証技術が世界的に普及している。そもそも19世紀末に植民地統治と国民国家形成ひいては帝国形成のもとで誕生し、使用されてきた生体認証技術が、今日ふたたび注目されている理由とは何か。そこで本研究では、近代から現代に至る身体管理の変容と特徴を、生体認証技術の歴史を軸に描き出した。
著者
紀 嘉浩
出版者
明治薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

神経変変性疾患の多くでは、神経細胞内にタンパク質凝集物が蓄積する。この凝集物には、疾患発症を仲介するタンパク質や、逆に進行を食い止めるために働くタンパク質が集積している可能性がある。本研究では、ポリグルタミン凝集体とC9orf72遺伝子変異による筋萎縮性側索硬化症で生じるGly‐Alaリピート凝集体に共通して含まれるタンパク質として、MLF2に注目した。このタンパク質は疾患モデルマウス脳で局在が変化しており、異常タンパク質の影響を受けることが示唆された。MLF2の機能解明の手がかりとして複数の結合タンパク質を見出した。これらの知見は、今後、複数の神経疾患間の共通病態の理解に繋がると考えられる。
著者
越前 宏俊 大西 明弘
出版者
明治薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

標準的なヘリコバクターピロリ(HP)菌除菌療法はプロトンポンプ阻害薬、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用であるが、抗HP作用の中心であるクラリスロマイシン(CAM)は、シトクロムP450(CYP)3A4分子種の代謝活性を阻害することが知られており、多くのCYP3A4基質薬物との薬物相互作用が報告されている。この薬物相互作用機構をin vitro実験系とHP菌除菌療法施行中の患者で検討した。ヒト肝ミクロゾーム実験系を用いた検討では、CAMはCYP3A4選択的な阻害作用を有するものの、その阻害作用は弱く、治療量のCAMで得られるヒトの血漿中薬物濃度においては、わずか5%内外のCYP3A4活性阻害の影響しか示さないことが判明した。一方、HP除菌療法に標準的に用いられる投与量(400-800mg/day)と投与期間(1週間)で、CYP3A4活性の指標である内因性コルチゾールの6β位水酸化体への代謝クリアランス(CLm_<6・OHC>)が50%程度低下した。この矛盾は、ヒト肝ミクロゾーム実験系における競合的な酵素阻害では評価できない、薬物代謝酵素に対するmechanism-based阻害によるものであることを明らかにした。その結果、CAMは、時間依存的および濃度依存的なmechanism-based機構のCYP3A4阻害作用を有しており、種々の仮定をおいてin vitroからin vivoへの阻害強度の予測を行うと、ほぼin vivoでの阻害強度が予測できた。以上の結果から、標準的なピロリ菌除菌療法に用いられる投与量でのCAMは、肝薬物代謝酵素CYP3Aを有意に阻害するが、その機構はいわゆるmechanism-based阻害機構であり、その強度予測には、通常の基質競合に基づく検討のみならず、mechanism-based阻害の検討が必要であることが明らかとなった。
著者
長浜 正巳 石田 洋一
出版者
明治薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

真核細胞のリボソーム生合成において機能するシャペロン様AAA ATPase NVL2は、RNAヘリカーゼDOB1との相互作用を介してリボソーム前駆体に作用し、分子複合体の構造変換に寄与する。本研究では、NVL2の作用標的となるDOB1、エキソソーム、およびその他の相互作用因子からなるrRNA代謝複合体について解析を行った。その結果、DOB1の他に、ポリAポリメラーゼPAPD5およびRNA結合タンパク質ZCCHC7を含む複合体(TRAMP様複合体)の存在を動物細胞において確認した。さらにこの複合体が、rRNA前駆体を含む核内RNAの3’末端ポリアデニル化において機能している可能性を示した。