著者
宮崎 佑介 松崎 慎一郎 角谷 拓 関崎 悠一郎 鷲谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.291-295, 2010-11-30
参考文献数
27
被引用文献数
1

岩手県一関市にある74の農業用ため池において、2007年9月〜2009年9月にかけて、コイの在・不在が浮葉植物・沈水植物・抽水植物の被度に与えている影響を明らかにするための調査を行った。その結果、絶滅危惧種を含む浮葉植物と沈水植物の被度が、コイの存在により負の影響を受けている可能性が示された。一方、抽水植物の被度への有意な効果は認められなかった。コイの導入は、農業用ため池の生態系を大きく改変する可能性を示唆している。
著者
宮崎 佑介
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.167-176, 2018 (Released:2018-07-23)
参考文献数
44

今後の市民科学の在り方を議論する上での意見として、科学、研究、市民の概念を整理し、論考した。日本語の「研究」は新規性を重視しない定義づけがなされている一方で、英語の「research」には新規性の有ることがその定義となっている点についての差異が認められた。また、東アジア(日本を含む)では成人のみを市民と捉えることが一般的である可能性がある一方で、西洋では乳幼児から市民として捉え始める場合が多いことを指摘した。次に、佐々木ほか(2016)によって定義された市民科学の概念を、魚類に関する事例にあてはめ、科学への貢献の可能性と課題の抽出を試みた。以上の検討を踏まえ、今後の日本の市民科学が欧米のcitizen science に近いものを目指す必要があることと、同時に日本の独自性を追及していくことの価値を述べた。
著者
宮崎 佑介
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.237-246, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
62
被引用文献数
8

新興の学術領域であるCitizen Science(市民科学)の発展は、情報科学技術の発展と不可分の関係にある。生物多様性に関連する分野においても、その可能性はとみに高まっている。本稿では、市民科学に関連する生物多様性情報データベースの現況と課題を、国内外の事例から概観することによって、今後の生物多様性情報データベースを活用した市民科学の在り方を考える。
著者
宮崎 佑介 吉岡 明良 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.235-244, 2012
参考文献数
33

朱太川水系の過去の魚類相を再構築することを目的として、博物館標本と聞き取り調査を行った。美幌博物館、北海道大学総合博物館水産科学館、市立函館博物館、国立科学博物館において、朱太川水系から採集された魚類標本の調査を行い、13種の魚類標本の所在を確認することができた。しかし、市立函館博物館の1923年以前の標本台帳に記されているイトウ標本の所在は不明であった。また、朱太川漁業協同組合の関係者18名に過去の朱太川水系の魚類相に関する聞き取り調査を行い、42種の魚類の採集・観察歴について情報を得た。同定の信頼性が高いと考えられるのはそのうちの34種であり、地域の漁業協同組合の保護・増殖の対象種であるかどうかと、聞き取り対象者が生息量の増減を認識していたかどうかは、有意に相関していた。カワヤツメなどの氾濫原湿地を利用する魚類の生息量の減少を指摘する回答者が12名いた。現在は見られないイトウが過去に確かに生息していたこと、カワヤツメの生息量が急減したことが聞き取りからほぼ確かであることが判明し、黒松内町の生物多様性地域戦略における自然再生の目標設定、すなわち「氾濫原湿地の回復」の妥当性が確認された。多くの人々が関心をもって観察・採集してきた生物種については、聞き取り調査によって量の変化に関する情報を得ることができる可能性が示唆された。
著者
宮崎 佑介 松崎 慎一郎 角谷 拓 関崎 悠一郎 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.291-295, 2010-11-30 (Released:2018-02-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

岩手県一関市にある74の農業用ため池において、2007年9月〜2009年9月にかけて、コイの在・不在が浮葉植物・沈水植物・抽水植物の被度に与えている影響を明らかにするための調査を行った。その結果、絶滅危惧種を含む浮葉植物と沈水植物の被度が、コイの存在により負の影響を受けている可能性が示された。一方、抽水植物の被度への有意な効果は認められなかった。コイの導入は、農業用ため池の生態系を大きく改変する可能性を示唆している。
著者
友田 義崇 春田 泰宏 目井 孝典 宮崎 佑介 餘家 浩樹
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.870-875, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

背景.皮膚筋炎に悪性腫瘍が合併することが知られているが,肺癌が先行して皮膚筋炎を発症する例は稀である.症例.60歳.男性.2006年肺腺扁平上皮癌に対して左上葉切除術施行,pT2aN1M0 Stage IIAと診断された.2008年に縦隔リンパ節転移による再発を認め,化学放射線療法が行われた.2011年頚部に皮疹が出現,CKの異常高値を指摘されて紹介入院となった.手背にGottron徴候,四肢の筋力低下を認め,皮膚筋炎と診断した.肺癌の再発による縦隔リンパ節の腫大を認め,腫瘍随伴症候群を疑い肺癌に対する放射線照射による治療を行ったが,進行性の筋力低下を認めた.皮膚筋炎に対してbetamethasone,cyclophosphamideを併用,EGFR遺伝子変異を認めたため肺癌に対してgefitinibを投与し,筋力の改善を認めた.しかし8カ月後多発肺転移を認めるとともに皮膚筋炎の再燃を認めbetamethasone投与,化学療法を開始した.肺癌の再発とともにCK上昇,筋炎の悪化を認めたことより,腫瘍随伴症候群と診断した.結論.腫瘍随伴症候群としての皮膚筋炎が肺癌の診断後に発症する例は稀であり,報告する.
著者
村瀬 敦宣 宮崎 佑介 瀬能 宏
出版者
一般社団法人 日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.11-20, 2012-04-25 (Released:2014-05-16)
参考文献数
31

Twenty-seven individuals of Lateolabrax latus (165.7–691.5 mm in total length), a species normally associated with a rocky offshore habitat in southern Japan, were collected from July to October 2009 in the lower reaches of rivers in Yaku-shima Island, Kagoshima Prefecture, southern Japan by hook and line. Furthermore, schools of immature individuals were observed around hard structures (including rocks and tetrapods) or in riffle zones in the rivers, L. latus clearly making active use of river environments in Yaku-shima Island during its life history. Because a detailed morphological description of the species has not been given since its original description, the specimens from Yakushima Island are described and compared with other congeners. Characters of the former agreed closely with the original diagnosis of L. latus. Some individuals less than 200 mm standard length had tiny scattered spots, smaller than those on other congeners, on the region above the lateral line. Specimens from the Ambo River represent the southernmost record of the species.
著者
宮崎 佑介
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.237-246, 2016

新興の学術領域であるCitizen Science(市民科学)の発展は、情報科学技術の発展と不可分の関係にある。生物多様性に関連する分野においても、その可能性はとみに高まっている。本稿では、市民科学に関連する生物多様性情報データベースの現況と課題を、国内外の事例から概観することによって、今後の生物多様性情報データベースを活用した市民科学の在り方を考える。
著者
好川 真以子 中山田 真吾 久保 智史 岩田 慈 阪田 圭 宮崎 佑介 鳥越 正隆 齋藤 和義 田中 良哉
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.397a-397a, 2016 (Released:2016-09-03)

【目的】SLE末梢血ではメモリーB細胞が増加するが質的異常の詳細が不明である.今回,ケモカイン受容体発現によるB細胞の亜分類を試み,その誘導機構と病態との関連を検討した.【方法】健常人(HD)8例,関節リウマチ(RA)31例,SLE 56例の末梢血よりPBMCを分離,T・B細胞表面抗原,分化マーカー,ケモカイン受容体(CXCR3, CXCR5)を染色後,8 color FACSで解析した.また,HDから分離したB細胞を各種サイトカインで刺激し,ケモカイン受容体および転写因子発現の変化を8 color FACSで評価した.【結果】1)SLE末梢血B細胞ではHD,RAと比べ,エフェクターメモリー(EM; IgD−CD27−)B細胞が有意に増加した(p < 0.01).2)SLE末梢血B細胞ではHD,RAと比べ,CXCR5−およびCXCR3+の亜集団が有意に増加し,特にEM B細胞で顕著であった(p < 0.01).3)HDから分離したB細胞はIFNγ刺激でCXCR3発現が増強し,IFNβ刺激でCXCR5発現が減弱した(p < 0.05).4)HDから分離したB細胞はIFNγ刺激でT-bet発現が亢進した(p < 0.01).【考察】SLEではエフェクターB細胞が増加するのみならず,Type I IFNを介したCXCR5減弱,Type II IFNを介したT-bet発現誘導とCXCR3増強の両者を伴う質的異常が齎され,B細胞の病変組織への浸潤と炎症病態の形成に寄与する可能性が示唆された.