著者
森 大輔
出版者
熊本大学法学会
雑誌
熊本法学 = Kumamoto law review (ISSN:04528204)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.344-416, 2020-03-26

本稿では,松村・竹内(1990),秋葉(1993),Merriman(1988)という,日本の死刑の抑止効果に関する3つの先行研究の計量分析について,公的統計のデータを再収集して,各研究の計量分析を再現するという方法で再検討を行った。その結果,松村・竹内(1990)の研究では死刑に関する変数は殺人発生率に統計的に有意な効果を持たないという結果となり,秋葉(1993)やMerriman(1988)の研究では統計的に有意な効果を持つという結果となったのは,前者が死刑言渡し率,後者が死刑執行率と,両者が用いていた死刑に関する変数が異なるからである可能性が高いことがわかった。また,これらの研究には,系列相関,多重共線性,説明変数の内生性,単位根の存在といった共通する分析手法上の問題点が存在する。さらに,時系列データの接続性の問題や変数の選択の問題も存在する。再現という作業は,時に重要な点や既存の研究の問題点の発見などにつながるものにもなりうる。
著者
森 大輔
出版者
熊本大学法学会
雑誌
熊本法学 = Kumamoto law review (ISSN:04528204)
巻号頁・発行日
no.148, pp.344-416, 2020-03-26

本稿では,松村・竹内(1990),秋葉(1993),Merriman(1988)という,日本の死刑の抑止効果に関する3つの先行研究の計量分析について,公的統計のデータを再収集して,各研究の計量分析を再現するという方法で再検討を行った。その結果,松村・竹内(1990)の研究では死刑に関する変数は殺人発生率に統計的に有意な効果を持たないという結果となり,秋葉(1993)やMerriman(1988)の研究では統計的に有意な効果を持つという結果となったのは,前者が死刑言渡し率,後者が死刑執行率と,両者が用いていた死刑に関する変数が異なるからである可能性が高いことがわかった。また,これらの研究には,系列相関,多重共線性,説明変数の内生性,単位根の存在といった共通する分析手法上の問題点が存在する。さらに,時系列データの接続性の問題や変数の選択の問題も存在する。再現という作業は,時に重要な点や既存の研究の問題点の発見などにつながるものにもなりうる。