著者
阿部 好一 黒坂 俊昭 塚田 康弘 上倉 庸敬 岡田 行雄
出版者
神戸学院女子短期大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

舞台における空間と時間について, その特色を明らかにし, 併せて現代演劇の独自性と将来への展望を考察した. 舞台の空間については, その一種の「曖昧さ」に着目した. たとえば映画では, カメラは対象を接写から遠景にいたるまで様々の距離において把えることが出来る. この事実は, 映画空間が観客の目にとって自由に縮小・拡大するのと同じ意味を持つ. 演劇の場合, 観客にとって舞台空間はつねに一定の大きさと形態をしか持てない. だから時にはストーリー展開に直接関係のない夾雑物まで観客の目にさらけだす. このことは舞台空間の不自由さと否定的に考えられているが, チェーホフやウェスカーの作品のある場面のように, 舞台上のふたつの人物群が互いに無関係な行動, 台詞をとることによって本来の意味以上の深い意味を表わすことがある. この「多義性」は極めて演劇的な表現である. と我々は考える. ついで舞台の時間については, その「流動性」に着目した. 映画に比べ演劇は, 時間の転換が不自由であると言われてきたが, 現代演劇では自由で柔軟な時間構造を持つようになってきている. それらは主として演出の技法によって試みられてきたが, 近年はシェーファーの『アマデウス』のように, ドラマトウルギーそのものに自由な流動性を持つものが現われている. その流動性は, ドラマに一種の「抽象性」をとりいれることによって保証されている, と我々は考える. 現代演劇にあらたな可能性をもたらすものは, 「再生された異化」であろう, と我々は推定する. 演劇のコミュニケーションは, 舞台上の人物相互のあいだに行なわれるものと, 舞台・客席のあいだに行なわれるものとの二重構造を示している. しかし実際の演劇の場では, 多くの観客はこの両者を混同し, 舞台上の人物に同化しがちである. だからこそブレヒトは「異化」が必要であると考えた. 現代演劇はこの異化を, あたらしい技法によって, 再活性化するのだ.
著者
土井 政和 岡田 行雄 正木 祐史 渕野 貴生 井上 宜裕 武内 謙治 金澤 真理 佐々木 光明
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、(1)社会内処遇について理論的実証的検討を行い、(2)更生保護基本法要網試案を作成することであった。目的(1)との関連では、前年度までの研究の成果として刑事立法研究会編『更生保護制度改革のゆくえ-犯罪をした人の社会復帰のために』(現代人文社・2007年5月)を公表した。いくつかの事件をきっかけに誕生した「更生保護の在り方を考える有識者会議」の提言は、傾聴すべき改善案を含む一方で、監視強化の方向性をも内包したものであった。その方向性は更生保護法にも引き継がれている。それは、指導監督と補導援護を統合し、援助とケースワークを基本に実施してきた従来の実務動向とは逆行するものと評価できよう。本書では、そこに欠けている歴史的視点や一貫した社会的援助の理念、保護観察対象者の法的地位及び国際準則等について分析検討を行った。これらの成果を生かす形で、更生保護立法に対する働きかけも継続的に行った。参議院法務委員会参考人意見陳述(6月5日):土井政和「更生保護法案についての意見」、更生保護法案審議中の参議院法務委員会等に対する「更生保護法案についての意見」提出(2007年5月4日)、「『仮釈放,仮出場及び仮退院並びに保護観察等に関する規則の一部を改正する省令案』に関する意見募集」(法務省:案件番号300110003)に対する意見書提出(2007年9月4日)、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則の制定について(意見募集)」(法務省:案件番号300110006)に対する意見書提出(2008年3月10日)がこれである。目的(2)の達成のため、最終年度における研究会の過半を費やして、要綱試案策定に力を注いだ。その成果は、現在取りまとめ中であるが、龍谷大学矯正・保護研究センター2007年度研究年報に掲載の予定(8月刊行予定)である。