著者
小林 美恵子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.29-45, 2017-12-31 (Released:2018-01-12)
参考文献数
3

日本国憲法口語訳の「話しことば」文体について分析・記述する。口語訳には、「国民」を「俺」とし、「お前」の呼びかけを用いること、文末に「命令」「禁止」「依頼」「許可」「勧誘」など訴え型の述語形式が使われ、「よ」「ね」「な」「ぜ」などの終助詞が多用されていることなど、憲法原文にはない特徴が見られる。これらは、20代男性の訳者(話者)の立場から、同年代以下の親しい友人などを相手として想定した「話しことば」文体で書かれていることによる。それは憲法に対する親しみを喚起しているが、同時に口語訳されることによる解釈の制約や限界もある。
著者
髙宮 優実
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.70-86, 2018-12-31 (Released:2018-12-31)
参考文献数
27

言語形式的には「ほめ」であっても、実際には批判や非難として機能している場合がある。このような機能は、これまでに、小説やエッセイなど作者によってつくられた文章にもとづいた資料の分析からは言及されているが、本研究において自然談話を分析した結果、日常の会話において、特に第三者を批判する場面で「ほめ」の形をとった皮肉や嫌味といった否定的な機能が使われていることが明らかになった。これは、直接言語的に批判をするよりも、状況をユーモラスに捉え、事態の深刻さを回避する役割があるためと考えられる。
著者
斎藤 理香
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.15-16, 2018-12-31 (Released:2018-12-31)
参考文献数
3
著者
髙橋 美奈子 谷部 弘子 本田 明子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば
巻号頁・発行日
vol.38, pp.46-62, 2017

<p>母語話者と非母語話者によるインターアクション場面である接触場面の研究は、非母語話者の言語使用実態の把握に有効であると言われている。しかし、非母語話者同士の「第三者言語接触場面」において学習者がどのような言語行動を獲得するのかという観点からの実証的な研究は十分とは言えない。特に、コミュニケーションを円滑にするための多様なストラテジーとして機能しているスピーチレベルシフトは、日本語学習者には習得が困難だと言われている。そこで、本稿では、学部レベルの国費留学生16名の日本語母語話者との会話および非母語話者との会話の2場面における自然談話データを用いて、第三者言語接触場面にみられるスピーチレベルシフトの機能のバリエーションを明らかにした。さらに、非母語話者であっても、相手との言語能力の差や親疎関係の差により、相手言語接触場面と第三者言語接触場面とでは出現するスピーチレベルシフトの機能が異なる可能性も明らかになった。本稿では、日本語学習において第三者言語接触場面を活用する意義を指摘し、多様な日本語使用者による日本語談話の価値の問いなおしを試みた。</p>
著者
髙宮 優実
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.63-82, 2017-12-31 (Released:2018-01-12)
参考文献数
33

これまでのスピーチスタイルシフトに関する研究は、丁寧体基調の会話に使われる普通体を分析したものが多かったが、本稿では普通体基調の会話に現れる丁寧体に焦点を当てる。同年代の友人同士や家族間といった親しい間柄で話される日常談話を分析した結果、不平、非難、批判、反論、不同意といった不満を表明する際に、丁寧体が使われ、それには次のような3つの機能があることが示された。1)丁寧体で不満表明を繰り返すことにより、意味が強調され、相手を説得したり、理解させたりする効果がある。2)普通体基調の会話に現れる丁寧体には、相手に譲歩させたり、相手をなだめたりする効果がある。3)第三者について否定的なコメントをする際に、丁寧体を選択することによって、聞き手からの賛同を得る。このような機能は日本語での円滑なコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしている。
著者
髙橋 美奈子 谷部 弘子 本田 明子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.46-62, 2017-12-31 (Released:2018-01-12)
参考文献数
16

母語話者と非母語話者によるインターアクション場面である接触場面の研究は、非母語話者の言語使用実態の把握に有効であると言われている。しかし、非母語話者同士の「第三者言語接触場面」において学習者がどのような言語行動を獲得するのかという観点からの実証的な研究は十分とは言えない。特に、コミュニケーションを円滑にするための多様なストラテジーとして機能しているスピーチレベルシフトは、日本語学習者には習得が困難だと言われている。そこで、本稿では、学部レベルの国費留学生16名の日本語母語話者との会話および非母語話者との会話の2場面における自然談話データを用いて、第三者言語接触場面にみられるスピーチレベルシフトの機能のバリエーションを明らかにした。さらに、非母語話者であっても、相手との言語能力の差や親疎関係の差により、相手言語接触場面と第三者言語接触場面とでは出現するスピーチレベルシフトの機能が異なる可能性も明らかになった。本稿では、日本語学習において第三者言語接触場面を活用する意義を指摘し、多様な日本語使用者による日本語談話の価値の問いなおしを試みた。
著者
遠藤 織枝
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.102-123, 2017-12-31 (Released:2018-01-12)
参考文献数
28

介護の分野に外国人が加わるようになって以来、介護の用語の平易化がいっそう求められるようになっている。本稿では、現在介護の現場で使われている難解な用語は、明治期の看護学教科書に由来することを想定して看護学草創期の教科書に基づく用語の調査を行った。その結果、今回対象とした「臥床・汚染・頻回」の3語については、看護学の初めのころから使用されている事実が確認できたが、その使用法が現在とは異なっていたことも明らかになった。伝統の踏襲として使用し続けられることが、形骸的な継承になっているとすれば、そうした難解な用語を使用し続けることの意味をあたらためて問い直す必要があると思われる。