著者
島田 めぐみ 野口 裕之 谷部 弘子 斎藤 純男
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.141, pp.90-100, 2009 (Released:2017-04-05)
参考文献数
6

本研究では,自己評価であるCan-do statements(Cds)を利用して,日本のT大学と海外協定校の日本語科目の対応関係を明らかにした。具体的には,T大学と,協定校5校の日本語学習者を対象に調査を実施し,各授業科目受講生のCds平均得点を用いて,T大学各レベルの授業科目と各協定校各学年の対応表を作成した。対応関係が明らかになったことにより,協定校においてより適切に単位互換を行うこと,来日前に留学生の配置クラスを予測することが可能となった。さらに,T大学と協定校における各項目の回答結果を比較することにより,技能の習熟度における相違点を検討した。今回使用した項目には,海外においては遭遇する可能性がない言語行動もあり,そのような項目は,おおむね自己評価が低くなることも明らかになった。
著者
林 明子 西沼 行博 谷部 弘子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.30-40, 2007-03-31 (Released:2017-04-30)

本研究では,日本語の普通体会話における発話末の表現形式とその韻律的特徴に焦点をあて,統語レベルの表現形式とそれを音声として表出した場合の両側面から,若年層男女の日本語運用の一断面について考察した.都内の大学で学ぶ19歳から29歳の日本語母語話者110名を対象に,説明場面での会話文作成と音声表出実験を行った結果,統語レベルの表現形式のヴァリエーションについては,統計的に有意な男女差は見られなかったが,韻律的特徴には,有意な男女差が認められ,女性は場面によって韻律的特徴を使い分けている様相が明らかになった.
著者
髙橋 美奈子 谷部 弘子 本田 明子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.72-89, 2019

<p>日本語が「第三者言語」として使用される機会が増えている現在、第三者言語接触場面における実証的な研究の必要性は高い。本稿では、実態と意識との乖離が指摘されているジェンダー規範を取り上げ、日本語学習者がどのようなジェンダー規範意識をもっているのかについて、相手言語接触場面と第三者言語接触場面を比較し明らかにする。分析に使用したデータは、留学生の日常談話データおよび意識を明らかにするための半構造化インタビューである。結果として、学習者は来日前から日本語のジェンダー規範についての知識があり、規範を肯定的にとらえていた。しかし、実際の言語使用においては、意識と異なり、規範にとらわれない自由な言語使用がみられた。中には、第三者言語接触場面より相手言語接触場面での方が日本語のジェンダー規範を順守しようとする言語使用もあった。学習者のもつ規範意識と実際の言語使用との複層性にどう向き合うか、日本語の教育に携わる者の意識が問われている。</p>
著者
髙橋 美奈子 谷部 弘子 本田 明子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば
巻号頁・発行日
vol.38, pp.46-62, 2017

<p>母語話者と非母語話者によるインターアクション場面である接触場面の研究は、非母語話者の言語使用実態の把握に有効であると言われている。しかし、非母語話者同士の「第三者言語接触場面」において学習者がどのような言語行動を獲得するのかという観点からの実証的な研究は十分とは言えない。特に、コミュニケーションを円滑にするための多様なストラテジーとして機能しているスピーチレベルシフトは、日本語学習者には習得が困難だと言われている。そこで、本稿では、学部レベルの国費留学生16名の日本語母語話者との会話および非母語話者との会話の2場面における自然談話データを用いて、第三者言語接触場面にみられるスピーチレベルシフトの機能のバリエーションを明らかにした。さらに、非母語話者であっても、相手との言語能力の差や親疎関係の差により、相手言語接触場面と第三者言語接触場面とでは出現するスピーチレベルシフトの機能が異なる可能性も明らかになった。本稿では、日本語学習において第三者言語接触場面を活用する意義を指摘し、多様な日本語使用者による日本語談話の価値の問いなおしを試みた。</p>
著者
髙橋 美奈子 谷部 弘子 本田 明子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.46-62, 2017-12-31 (Released:2018-01-12)
参考文献数
16

母語話者と非母語話者によるインターアクション場面である接触場面の研究は、非母語話者の言語使用実態の把握に有効であると言われている。しかし、非母語話者同士の「第三者言語接触場面」において学習者がどのような言語行動を獲得するのかという観点からの実証的な研究は十分とは言えない。特に、コミュニケーションを円滑にするための多様なストラテジーとして機能しているスピーチレベルシフトは、日本語学習者には習得が困難だと言われている。そこで、本稿では、学部レベルの国費留学生16名の日本語母語話者との会話および非母語話者との会話の2場面における自然談話データを用いて、第三者言語接触場面にみられるスピーチレベルシフトの機能のバリエーションを明らかにした。さらに、非母語話者であっても、相手との言語能力の差や親疎関係の差により、相手言語接触場面と第三者言語接触場面とでは出現するスピーチレベルシフトの機能が異なる可能性も明らかになった。本稿では、日本語学習において第三者言語接触場面を活用する意義を指摘し、多様な日本語使用者による日本語談話の価値の問いなおしを試みた。
著者
村松 泰子 大竹 美登利 直井 道子 福富 護 佐久間 亜紀 中澤 智恵 谷部 弘子 福元 真由美
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ジェンダーの視点からの教員養成のあり方の検討に向け、現状と問題点の把握のため、教員養成系8大学の教員・学生両者を対象に実証的研究を行った。初年次に教員に対する質問紙調査(回答703名)、2年次に学生に対する質問紙調査(回答1209名)を実施、最終年次に両調査の結果を合わせ分析し報告書を作成した。調査内容は、教職観、大学教員の教育活動・学生観、学生の学習活動・大学教員観、教師-学生関係、ジェンダー観などである。結果の一部は、下記の通りである。1)大学教員の7割以上が小学校教師は、経済的に安定・大学院レベルの知識が必要としているが、女性教員の過半は女性向きとし、男性教員の過半はそう思っていない。2)多くの大学教員は、学生の学力・まじめさ・積極性・批判精神・将来性には性別による偏りはないと見ているが、批判精神と将来性は女性のほうが女子学生を高く評価している。3)学生は男女とも、男性教員に「専門的知識の深い人が多い」、女性教員に「まじめな人」「やさしい人が多い」というイメージをもつものが多い。4)一般的なジェンダー観に関して、大学教員では「能力や適性は男女で異なる」に男性の過半数は同意、女性の過半数は不同意など、性別による差が大きい。学生も性別により差が見られる。学生の多くが「男女の違いを認めあうことが大切」としているが、「義務教育でもっと男らしさや女らしさを大切に」教育することには多くが否定的である。5)義務教育段階での教師と児童生徒の関係について「毅然とした態度を取るべき」などの権威的な考え方は、女性より男性教員のほうがやや強く、ジェンダーバイアスが強い教員ほど強かった。学生でも、管理主義的な考え方が男子学生のほうにより強かった。以上の通り、大学教員では、ジェンダーに関わる態度や意識が性別により異なる面があり、学生では男女ともに、意識としては男女平等を志向しながらも、すでにジェンダーを内面化している傾向がうかがえた。
著者
伊東 祐郎 酒井 たか子 三枝 令子 谷部 弘子 村上 京子 中村 洋一
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の特色と意義本研究は、テスト開発過程に不可欠なテスト理論(「古典的テスト理論」と「項目応答理論」)を導入し、統計的分析を加えることによって、これまで日本では認識の低かった試験問題の精度を向上させられる実証的研究を行い、項目プール実現化へ向けての基盤研究を行った。また、テスト開発における項目プール化は、日本ではほとんどそのための研究が行われておらず、本研究を通して得られた知見は、今後のテスト開発の新たな方法として、具体的な形で多くの大学等で応用できるものとなった。本研究を通して開発したシステムは、次のような5つの機能を持つものである。(1)蓄積機能:作成した問題項目を、コンピュータ内に蓄積し、保存することができる。また、問題項目のほかに、過去の試験結果のデータや項目分析結果も蓄積できるので、将来の問題項目作成を効率よく行うことができる。(2)抽出機能:出題領域や評価対象領域、また困難度などの条件に基づき、必要な数の項目を抽出して試験問題を構成・作成することができる。(3)組み替え機能:抽出条件が同じでも、設問の組み合わせや選択肢の組み合わせが可能となるので、異なる試験問題を作成することができる。(4)加工機能:蓄積・保管されている試験や問題項目を、測定目的に応じて編集・加工・削除することができる。また、既に蓄積されている項目を基礎に、全く新しい問題項目を作成することができる。(5)製版機能:抽出された問題項目を、パソコン上でレイアウト・編集ができる。