著者
平岡 真合乃 五味 高志 小田 智基 熊倉 歩 宮田 秀介 内山 佳美
出版者
神奈川県自然環境保全センター
巻号頁・発行日
no.10, pp.71-79, 2013 (Released:2014-03-06)

丹沢山地大洞沢試験流域内の流出土砂量と土砂生産源の季節変化を把握するために、流域末端の沈砂池で流出土砂量の測定と、流域内斜面でのインターバルカメラを用いた林床被覆の連続観測を行った。流出土砂量は台風などの大規模降雨時に多くなる傾向が見られたが、流量変化との関係は見られなかった。流域内で裸地は流路沿いに分布しており、斜面傾斜が40°以上と急傾斜であったことから、潜在的な土砂生産源と考えられた。林床被覆率は秋季から冬季の気温の変化にともなって経日変動していた。気温が0℃付近を変動している期間の裸地面では、凍結融解作用にともなう土砂の不安定化や移動が確認でき、土砂生産の季節的な変動が示唆された。
出版者
神奈川県自然環境保全センター
雑誌
神奈川県自然環境保全センター報告 = Bulletin of the Kanagawa Prefecture Natural Environment Conservation Center (ISSN:13492500)
巻号頁・発行日
no.2, pp.61-62, 2005-03

本種は、大型の美麗種で南方に多く分布し、日本で広く産する蛾類である。食樹は、キハダ、シンジュ、ニガキを主に食し、他に、クヌギ、エゴノキ、クスノキ、ゴンズイ等も記録がある。神奈川県内では各地に記録があるが、厚木市内では得られていない。2004年9月20日、自然環境保全センターの神奈川県フィールドスタッフである青木トシ氏が見慣れない幼虫を撮影されたとのことで、厚木市郷土資料館に写真を持参された。同氏によれば9月19日に神奈川県フィールドスタッフメンバーらと、厚木市七沢で発見されたとのことであった。写真は、筆者の一人、槐が確認したところ、全身が白粉で被われ、各節に黒点が散在する点、50mm前後と大型である点、各節の亜背部、気門下線部に各1個の大きな肉片突起を有する点など、特徴的な形態を有することなどから、本種幼虫であると同定した。
著者
青木 淳一
出版者
神奈川県自然環境保全センター
雑誌
神奈川県自然環境保全センター報告 (ISSN:13492500)
巻号頁・発行日
no.2, pp.81-85, 2005-03

丹沢生物相の異変。私が丹沢の調査に関わったのは今から43〜44年前の「丹沢大山学術調査」で、まだ私が26歳の時です。学術調査ですから、研究者や専門家が自分達の専門分野を興味の赴くままに調査したということです。その報告書をなくしてしまったので神田の古本屋で探したら大変高価であったのでびっくりしました。みなさんが報告書を入手するのも大変ですから、第1回目の調査以降どんなことがわかったかについて、私の専門の動物の観点からお話ししていきます。
著者
越地 正 谷脇 徹 田村 淳
出版者
神奈川県自然環境保全センター
雑誌
神奈川県自然環境保全センター報告 (ISSN:13492500)
巻号頁・発行日
no.5, pp.3-9, 2008-03
被引用文献数
1

神奈川県丹沢山地一帯において2007年に大発生したブナハバチによるブナの被害調査を行った。ブナハバチ被害の中心は西丹沢の檜洞丸から加入道山にかけての標高1400m以上の地域であった。これらの地域一帯ではブナの葉が丸坊主になり残った葉脈が褐色に変わる異常な景観がみられた。葉の大部分を食害する「激害型」被害は80%を超える地点もあり、今までにない激しい規模の被害を受けたことがわかった。今回発生したブナハバチ被害により激害を受けたブナは、さらに衰弱枯死が加速する恐れがある。また、繰り返しブナハバチの大発生がみられる檜洞丸においてブナの衰弱枯死過程を調査したところ、ブナ枯れ跡地のギャップを中心に衰弱枯死が拡大していることがわかった。これらのブナの衰弱枯死原因を観察した結果、1997年以降はほとんどがブナハバチの繰り返しの食害によるものであった。
著者
谷脇 徹 笹川 裕史 藤澤 示弘
出版者
神奈川県自然環境保全センター
雑誌
神奈川県自然環境保全センター報告 (ISSN:13492500)
巻号頁・発行日
no.4, pp.41-45, 2007-03

スギノアカネトラカミキリによる材質劣化被害の実態把握のため、平成18年度にアンケート法による広域被害実態調査を実施した。得られた最新の調査結果と昭和54年度、昭和60年度、平成元年度および平成17年度の被害実態調査結果とあわせて、27年間に渡る被害発生の経年変化について検討した。調査箇所数の最も多い昭和60年度〜平成元年度における各市町村の被害状況について、被害状況や位置関係から7つの地域区分(複数市町村からなる地域)に分類した。その結果、激害地域から無被害地域まで段階的に認められ、激害地域から離れるほど被害程度が小さくなる傾向にあった。また、広域レベルでは被害の顕著な経年変化はみられなかったが、各地域内の詳細な被害経年変化については不明であり、今後の課題として残された。この課題について、GISによる新たな被害解析手法を導入することで、地況や林況データを含めた詳細な被害要因解析が可能になると期待される。