著者
曽山 和彦 本間 恵美子
出版者
秋田大学教育文化学部総合教育実践センター
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
no.28, pp.111-118, 2006-04

本研究では,教師のメンタルヘルス問題について,校外のサポート機能に焦点を当て,自尊感情及びバーンアウトの視点から検討を行った.本研究の対象は,自主的にカウンセリングを学び合うサポートグループ参加教師25名であり,実験群とした.実験群は,グループヘの10回の参加回数を基準にして,高群と低群の2群に分けた.また,一般の公立学校教師255名を対照群とした.実験群に対しては,自尊感情,バーンアウトを測定する質問紙調査を実施した.対照群に対しては,バーンアウトを測定する質問紙調査を実施した.その結果,高群は,低群に比べて自尊感情が高く,対照群に比べてバーンアウト合計が低いことが明らかになった.また,バーンアウトの下位尺度である個人的達成感低下が低いことも明らかになった.さらに,高群の自尊感情はバーンアウトに対する負の予測変数であることも明らかになった.これらのことから,サポートグループヘの参加は,参加者の自尊感情向上やバーンアウト軽減に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
北島 英樹 武田 篤 KITAJIMA Hideki TAKEDA Atsushi
出版者
秋田大学教育文化学部総合教育実践センター
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
no.29, pp.35-44, 2007-05-01

自閉症では,他者の指示に従い,与えられた課題をこなすことができるが,自らの要求や判断を介在させた生活を送るのが難しいことが指摘されてきている.したがって,自閉症の教育では,早くから主体性の確立に向けた支援を行っていくことが求められている.今回,この取り組みのひとつとして,ことばのない自閉症の児童に,VOCA(Voice Output Communication Aid : 音声出力型コミュニケーション装置)を活用することによって,自己の要求を積極的に伝えられるようになる支援を試みた.その結果, VOCAの使用によって,自分の要求を相手に伝えられるようになっただけでなく,集会の司会進行を努められるようになるなど,それまで苦手としていた集団での学習にも意欲的に取り組むようになった.本研究では,1年半にわたる学校と家庭でのVOCA指導の経過について報告するとともに,その有効性について検討する.
著者
佐川 馨
出版者
秋田大学教育文化学部総合教育実践センター
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
no.28, pp.33-43, 2006-04

本研究では,秋田県の学校音楽教育における「日本の音楽」の指導に関する教師の意識,授業での取り扱い,和楽器や指導資料の整備状況等についてアンケート調査を行った. その結果,秋田県においては「日本の音楽」の指導を好意的に捉えている教員が多く,「日本の音楽」に関する自分自身の知識・技能を高めたいと願っていることが分かった.また,授業での取り扱いは多いが,指導にあたっては自分の音楽経験に自身がもてず,苦手意識をもっていること,評価するための知識や音楽的感性などが充分ではなく,生徒の変容を的確に捉えられていない状況にあること,指導や教材研究に必要な和楽器や資料の整備が大きく遅れていること,などの問題点が明らかとなった.
著者
澁谷 真二 今野 和夫 SHIBUYA Shinji KONNO Kazuo
出版者
秋田大学教育文化学部総合教育実践センター
雑誌
教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
no.28, pp.53-62, 2006-04-01

友達関係は人生においてなくてはならないものだが,障害のある人にとっては,ノーマライゼーションの実現ということにおいて障害のない人との友達関係も欠かせない.この重要なテーマについての試行的・探索的な本研究では,作業所に福祉就労する知的障害者(41名,うち31名が20歳台)の保護者に対して質問紙調査を実施した.その結果,彼らには友達が少なく,特に障害のない友達をもっている人は僅少であること,保護者たちは子どもが就学前や学童期の頃は障害のない友達ができるようにといろいろ取り組んでいることが示唆された.また現在,程度に強弱はあるが,半数を明らかに上回る保護者(6割強)が,子どもに障害のない友達がいればよいと思い,一方でその実現を容易でないと考えていることが示された. さらに本研究では,筆者の一人(渋谷)が友達関係を深めてきている知的障害(ダウン症候群)の青年の母親に面接し,母親が友達関係の大切さを認識し,障害の有無を問わず友達ができるようにと青年の幼い頃から何かと配慮と行動を重ねてきていることが確認できた. 以上の結果を踏まえ,友達関係の構築に向けた支援のあり方について,また研究上の課題について言及した.