著者
中川 恵
出版者
羽衣国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

大衆への普及が過去10年以内という点で新しいメディアと位置づけられるインターネットと衛星放送の普及が、中東地域の生活空間、政治的意思の形成、政治的意思形成の場となる公共空間にいかなる変容をもたらしているのか、とりわけ女性たちの政治的意思決定のプロセスを調査・分析した。その結果、モロッコの場合、衛星放送の普及と国家が進める社会・経済開発の両方がほぼ同時に進んだことが、女性の政治参加を促進したと結論づけることができた。
著者
木脇 奈智子 斧出 節子 冬木 春子 大和 礼子
出版者
羽衣国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

私たちの研究グループは、本調査に先立って、平成13年度・平成14年度にも、文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C)(1))を受け「育児におけるジェンダー関係とネットワークに関する実証研究」と題した大量アンケート調査を実施した。平成13年度調査では、マクロで見た場合の現代日本家族の子育ての特徴を明らかにした。その後私たちは大量調査ではすくいあげることができなかった個々の親たちの本音に迫りたいと考えた。また、平成13年度調査では分析の対象にできなかった単親家族、共働き家族、再婚家族、父親が育児休業を取得した家族など、近代家族を超える家族の子育てについても、取り上げ分析したいと思った。このような問題意識から実施したのが本調査である。平成16年5月に本調査に着手し、初年度には研究会を重ねて先行研究の検討と質問項目を作成した。平成17年3月から平成18年3月まではインタビュー調査と分析を行った。その結果母親22名、父親10名、計32名に生育歴や育児観、家事育児分担、ジェンダー観などそれぞれ1時間半におよぶインタビュー結果を得ることができた。対象者は当初平成13年度調査において「インタビュー調査に協力してもよい」と答えて下さった方々としたが、対象者の多様性を持たせるために、知人の紹介で関西圏に居住する共働きのご夫婦や単親家庭、再婚家庭へ対象者を拡げ、その結果を報告書冊子にまとめた。報告書は6章からなり、1章「調査の目的と方法」、2章「男性の子育てと仕事との葛藤」3章「専業主婦の子育て分業意識・子育て観」4章「家事・育児の外部化」、5章「定位家族体験と親子関係」6章「男性にとっての家事・育児とはなにか」となっている。夫婦で(別々に)インタビューを行っているカップルが多く、子育てや家事に関する男女の意識の違いやズレが明らかになった。
著者
酒井 治郎 林 兵磨
出版者
羽衣国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、近年、わが国で問題となっているNPO(非営利組織)と、それに伴う会計問題を対象に検討を行ってきた。これまでNPOに係る事件の背景には、NPO会計の不備がその原因の一つとなっていると考えられる。そこで、本研究はNPOの会計問題を解決し、これからのNPOの発展にも寄与することを意図している。まず、統一化の可能性を、アメリカの会計学者であるWiliiam.J.Vatterが提唱した理論から模索した。彼の理論には、企業のことを「私的な人格を否定した資金そのもの」とあるという認識であったが、この彼の見解を基盤にして、それを一部修正することによって、今日のNPO会計の問題解決および営利企業会計とNPO会計との統一化の可能性も見だせることを提案したのである。ところで、最近わが国では、既存のNPO法人(とりわけ公益法人)の非効率な経営実態など、様々な問題点が指摘されているところである。こうした問題点を改善するために、公益法人会計の中にも営利企業会計の考え方を導入しようとして、公益法人の会計基準も改訂作業が進められているところである。本来、企業会計は、資本主義社会における営利企業の発展に伴って確立されてきたものであり、また「一期間における費用と収益との適切な対応」させることを根幹においている。この考え方を公益法人会計にも適用することは、公益法人の管理者に対し、経営資源の有効的活用、効率的経営の実施を意識づけるのに役立つと期待されているのである。つまり、企業会計は営利企業のみならず、公益法人等NPOにとってもまた有用であるとする見解が台頭してきたのである。ただし、単純に既存の公益法人会計に企業会計方式を導入することはできない。株主が存在しない公益法人の「資本」概念をいかに確立するかという点があげられる。ちなみに、日本の公益法人会計改革において、前例として参考にしたアメリカ会計では、この課題に直面して、結局のところ株主の存在という点だけを必要以上に重視してしまい、NPO会計改革が不十分なものに終わってしまった。そこで、われわれの研究では、アメリカの失敗のケースも踏まえ、株主という存在も、組織体への資源提供者の一つの種類にすぎないと捉えることによって、公益法人にも営利企業における資本に相当するものの存在を認め得ることと提案したのである。こうしたわれわれの提案は、公益法人会計と営利企業会計との統一化を前進に寄与するものと考えている。さらに、わが国のNPO会計における具体的問題点の一つとして、学校法人会計もとりあげた。この中でとりわけ、学校法人会計の計算体系が、企業会計のそれとは大きく異なり、この学校法人会計の計算システムでは、固定資産の不必要な取得を誘発する等の問題点を指摘し、こうした点からも前述の公益法人会計のみならず、全てのNPO会計において、企業会計と統一した枠組みの中で捉えることの必要性を指摘したのである。