著者
大和 礼子
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.109-126,192, 1995-05-31 (Released:2017-02-15)
被引用文献数
9

The present study identifies two crucial factors which appear to determine the attitudes of Japanese middle-aged women toward 'sexual-division-of-labor'. Factor 1 reflects the following attitude: 'while men should be responsible for the household incomes, women should be responsible for the domestic chores'. This attitude seems to have a root in the idea that roles should be assigned to persons on the basis of their sexes. Therefore, Factor 1 is labelled 'Role-assignment on the basis of sexes'. Factor 2 reflects the following attitude: 'women should take reproductive roles because they have instinctive affection to their children and family'. Therefore, Factor 2 is labelled 'Women 's reproductive roles on the basis of their instinctive affection'. Although both factors influence the Japanese middle-aged women to accept their 'domestic roles', they are different each other in the following points. Fisrtly, while Factor 1 can not be compatible with the egalitarian attitude toward sex, Factor 2 can be compatible with it. Secondly, while Factor 1 has correlation with women's educational level, Factor 2 has correlation with their employment. This outlook suggests that these two factors are formed through different ways; Factor 1 is formed through education and Factor 2 is through employment.
著者
大和 礼子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.235-250, 2000-09-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
35

社会階層と社会的ネットワークとの関係については, 多くの研究が共通して, “階層が高い方がネットワークの構成は多様である” という知見を共通に報告している. 本稿ではまず先行研究の検討によって, この知見は社交・相談・軽い実際的援助などをネットワークとして測定した結果得られたものであることを示し, これを〈交際のネットワーク〉と呼ぶ. 次にこの交際のネットワークと, 自分の身体的ケアについてのネットワーク (〈ケアのネットワーク〉と呼ぶ) の両方を含んだ調査データを分析する. そしてその結果を基に, 交際のネットワークについては先行研究と同様, 男女ともに階層が高い方がその構成は多様であるが, ケアのネットワークについては, 男性と女性では階層の効果が異なることを示す. すなわちケアのネットワークは, 男性では, 階層が高い方が配偶者と子供に限定され多様性に乏しいが, 逆に女性では, 階層の高い方が家族に加えて専門機関を含める人が多く多様である.最後にこの結果に基づき, 社会的ネットワークは, 〈交際〉と〈ケア〉の両面からとらえられなければならないこと, そして〈公共領域と家内領域の分離〉という近代の支配的イデオロギーに適合するような形でネットワークを編成している人は, 階層の高い男性に最も多いことを論じる.
著者
大和 礼子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.40-40, 2002-03-31 (Released:2010-11-18)

スウェーデン政府は1995年から「女性の権力調査」というプロジェクトを行った。本書は, その一環として1996年に行われた, 質問紙とインタビューからなる調査報告書の翻訳である。この調査研究の理論的枠組みは次のようなものである。 (1) 家族生活の組織方法についての伝統的規範が弱まった現代のスウェーデンにおいては, 家事・賃金労働, 家庭内のお金の組織化は, 夫妻 (サムボとよばれる同棲関係を含む) 間の「交渉」によって決められる部分が大きい。 (2) なにが交渉に影響を及ぼすかについて, 3つの仮説 ((1) 経済的合理性, (2) ジェンダーに関する文化的既成観念, (3) 権力資源) がある。 (3) この研究では, 交渉において夫妻間には利益の不一致があることを前提にする, つまり (3) の権力資源仮説にとくに注意を払う。 (4) 交渉の結果は, 短期的・長期的に夫妻関係に影響を及ぼす。このような枠組みのもとで調査研究が行われた結果, 明らかになったのは, 第1に, 男女平等規範の浸透にもかかわらず, 実際の家事・賃金労働, お金の組織化には多様性があるということである。一方の極には家父長的な分担を行っている家族, もう一方の極には男女平等な分担を行っている家族があり, そして残りはこの2極の間に位置している。2極の間に位置する家族には, 共通したジェンダー関係のパターンがみられ, それは「男女ともに賃金労働につき家計に貢献することが基本とされるが, 子どもが幼い間は母親が育児の責任をおもに取るべきであり, また家事は男性も一部しなければならないが, おもに責任をもつのは女性である」というものである (ただしこの共通性を強調しすぎるのは危険だと著者らは述べている) 。第2に, なにが交渉に影響を与えているのかについては, 経済的合理性, ジェンダー観念, そして権力資源のどれもが, ある程度影響を与えている。ただし育児休業の取得については, 「育児は母親の責任」というジェンダー観念の影響が強い。第3に, 交渉の結果, とくに家事の分担に関して, 妻の側に不満が高く, これは家事分担に権力がかかわっていることを示す。また交渉についての不満・対立によって関係の解消 (離婚) にいたる場合もあるが, 過去の交渉の結果は, 離婚後の生活についての交渉や, 生活そのものにも影響を及ぼす。以上のような骨格だけの紹介では十分示すことができないが, この調査研究は「交渉」という概念を採用し, インタビュー調査を合わせて行ったことによって, 家事の分担, 育児休業の取得, お金の管理方法や配分などが夫妻間で決められていく過程を生き生きと描き出しており, 夫婦関係についてのさまざまな洞察や新たな仮説を考えるためのヒントに満ちている。また第1章で, この問題を考察するための3つの主要な仮説が, その学説史をも含めて整理されていて有用である。夫婦関係に関心をもつ人, 現代のスウェーデン家族に関心をもつ人には, ぜひ一読を勧めたい。
著者
落合 恵美子 伊藤 公雄 岩井 八郎 押川 文子 太郎丸 博 大和 礼子 安里 和晃 上野 加代子 青山 薫 姫岡 とし子 川野 英二 ポンサピタックサンティ ピヤ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

アジアの家族は多様であり、東アジアと東南アジアの違いというような地理的違いにも還元し尽くせないことが、統計的に明らかになった。一枚岩の「アジアの家族主義」の伝統も現実も存在しない。しかし圧縮近代という共通の条件により、国家よりも市場の役割の大きい福祉レジームが形成され、そのもとでは家族の経済負担は大きく、移民家事労働者の雇用と労働市場の性質によりジェンダーが固定され、近代的規範の再強化も見られる。
著者
木脇 奈智子 斧出 節子 冬木 春子 大和 礼子
出版者
羽衣国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

私たちの研究グループは、本調査に先立って、平成13年度・平成14年度にも、文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C)(1))を受け「育児におけるジェンダー関係とネットワークに関する実証研究」と題した大量アンケート調査を実施した。平成13年度調査では、マクロで見た場合の現代日本家族の子育ての特徴を明らかにした。その後私たちは大量調査ではすくいあげることができなかった個々の親たちの本音に迫りたいと考えた。また、平成13年度調査では分析の対象にできなかった単親家族、共働き家族、再婚家族、父親が育児休業を取得した家族など、近代家族を超える家族の子育てについても、取り上げ分析したいと思った。このような問題意識から実施したのが本調査である。平成16年5月に本調査に着手し、初年度には研究会を重ねて先行研究の検討と質問項目を作成した。平成17年3月から平成18年3月まではインタビュー調査と分析を行った。その結果母親22名、父親10名、計32名に生育歴や育児観、家事育児分担、ジェンダー観などそれぞれ1時間半におよぶインタビュー結果を得ることができた。対象者は当初平成13年度調査において「インタビュー調査に協力してもよい」と答えて下さった方々としたが、対象者の多様性を持たせるために、知人の紹介で関西圏に居住する共働きのご夫婦や単親家庭、再婚家庭へ対象者を拡げ、その結果を報告書冊子にまとめた。報告書は6章からなり、1章「調査の目的と方法」、2章「男性の子育てと仕事との葛藤」3章「専業主婦の子育て分業意識・子育て観」4章「家事・育児の外部化」、5章「定位家族体験と親子関係」6章「男性にとっての家事・育児とはなにか」となっている。夫婦で(別々に)インタビューを行っているカップルが多く、子育てや家事に関する男女の意識の違いやズレが明らかになった。
著者
宮坂 靖子 藤田 道代 落合 恵美子 山根 真理 橋本 泰子 上野 加代子 大和 礼子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

女性労働力率のパターンに着目すると、本調査の対象地域は、「逆U字(台形)型」の中国・タイ、30歳代から次第に低下する「キリン型」のシンガポール・台湾「M字型」の日本・韓国の3類型に分けられる。つまり日本・韓国以外の地域においては、出産・育児後も共働きが一般的であった。中国、タイ、シンガポールの共働きを支えてきたのは、親族(特に親)による育児支援と、必要な場合の家事使用人の雇用(家事・育児の市場化)であった。しかしより詳細に見ると、特にその後の展開においては各国で差違が見出された。現在の中国(南部)では、親族(特に祖父母)による援助と父親による育児・家事参加により、出産・育児期の女性の就労が可能になっている。タイ(都市中間層)の場合は、同居の親(一般的には妻方)からの援助と住み込みのメイドであったものが、近年インフォーマルな民間の託児所(保育ママさんによる保育)と家事の市場化に依存する形に変化してきている。都市中間層では専業主婦も誕生してきており、1998・1999年にはバンコクの女性労働力率にはM字の落ち込みが初めて出現した。シンガポールでは、親族、有料の養親、住み込みのメイドが主流である(養親とは、保育園に入れる2、3歳までの間有料で子どもを預かってもらうもの)が、最大の特徴は、住込みのメイドによる家事・育児の市場化である(特に家事に関しては、妻夫双方とも行わない)。最後に日本と韓国というM字型社会においても、女性の就業率は上昇している。それを支えている共通点は、妻型の親の育児援助と保育園の利用、および父親の育児参加である。ただし韓国では日本以上に緊密な親族ネットワークや他の多様なネットワーク(近隣、友人など)が存在しており、母親の育児の孤立化は生じていない。育児不安はアジア社会において日本固有の特徴であると言える。