- 著者
-
寺田 良一
- 出版者
- 都留文科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2002
1998年の「NPO法」の施行以来、日本においても、小規模な任意団体が主であった環境運動組織が環境NPOとして組織化、制度化され、政策決定に対する影響力や圧力行使、対抗的政策提言活動等を行う基盤が遅れ馳せながら整備された。本研究においては、環境NPOの公式的な組織化、制度化以降の環境運動組織の機能変容、政策提言(アドボカシー)能力や社会的影響力の増大等を、主として定性的に明らかにすることがめざされた。比較的NPOとしての公式化、制度化が進んだアドボカシー型環境NPOを中心として聞き取り調査を広範に進めた結果、以下のようないくつかの知見が得られた。第1に、NPOとしての組織化の経緯から、a)海外の既存の環境NPOの日本支部的に発展してきたもの、b)国内のおいて比較的長期間環境運動や消費者運動としての活動実績を持ち、NPO制度の確立とともにそれへと組織化されたもの、c)比較的最近の環境問題に対応して活動を開始し、当初から環境NPOの形態を採っているもの、といった類型が得られた。全体として、税制優遇や寄付控除制度等を欠いた日本の不十分なNPO制度ゆえに、財政基盤は脆弱であり、政策提言や政治的影響力行使に必要な専門的力量や人材も不十分である。しかしながら、こうした基盤の弱さにもかかわらず、NPOとして公式組織化しえたことで、自治体や企業セクターとのパートナーシップ形成は著しく進展した。事業化や活動の独自性を打ち出し、NPOとしての独自のニッチを見出す努力も見られる。たとえば、海外に本部を持つ既存の環境NPOや新興環境NPOで国際的な活動や国連等をアリーナとした活動が特徴的であったり、草の根的基盤を持っ環境NPOが地域レベルの政策提言等に関与する傾向などが見られる。