著者
西 和文 林 浩之 佐藤 剛 福田 徳治
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会年報 (ISSN:03888258)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.38, pp.55-58, 1991-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13

ダイズ白絹病菌 Corticium rolfsii 菌核を埋没した圃場に熱水土壌消毒を実施したところ, 本法は, 埋没菌核を死滅させる効果の高いことが明らかとなった。しかし, 地温が低く, あるいは熱水注入量が少ないため, 地温の上昇が不充分な場合には, 土壌深部の菌核は死滅しなかった。熱水土壌消毒の効果は圃場の耕種条件によっても異なり, 堆肥無施用圃場より堆肥連用圃場での効果が高かった。本試験の結果から, 熱水土壌消毒はタイズ白絹病の防除に対して有効であると考えられた。
著者
西 和文 佐藤 剛 福田 徳治
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会年報 (ISSN:03888258)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.39, pp.39-42, 1992-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
9

5年間堆肥連用及び堆肥無施用のコムギ立枯病自然発生圃場で, 10月下旬, 熱水土壌消毒を実施したところ, いずれの処理区においても深さ20cmの地点では地温が55℃以上に達し, 堆肥連用圃場は125l/m2及び150l/m2区では, 深さ30cmの地点でも地温は55℃以上となった。このことは, 10月下旬でも, 多くの土壌病害に対し熱水土壌消毒の防除効果が期待できることを示している。熱水土壌消毒により, コムギ立枯病はほぼ完全に抑えられた。また熱水土壌消毒区では, 無処理区に比べ生育が良好で, 穂数は増加し, 収量も増加する傾向であった。
著者
本林 隆 沼沢 健一 遠藤 佳成
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会年報 (ISSN:03888258)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.39, pp.261-262, 1992-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
1

越冬前の幼虫に対しては高い防除効果が得られた八丈島のクワゴマダラヒトリNPV散布地域において, 越冬後幼虫の密度が無散布地域と同レベルもしくは高くなる現象が認められた。そこで, その原因を明らかにするため, NPVの散布回数を増加したり, 春先の幼虫の移入が起こりにくい地域で散布試験を行った。その結果, 越冬前の調査では, NPVの1回の散布によって幼虫密度は無散布区の約1/150の0.1頭/m2に低下し, 2回の散布と同等の防除効果が得られたが, 春先の越冬後幼虫の密度は0.6頭/m2と増加した。一方, 幼虫の移入が起こりにくい隔離散布区では, 越冬前, 後とも幼虫密度は0頭/m2であった。このことから, NPV散布地域で, 越冬後の幼虫密度が越冬前に比べ増加するのは, 越冬後の幼虫の分散に伴う散布地域周囲からの移入によるものと考えられた。
著者
桑原 克也 高橋 まさみ 大堀 智也 三木 静恵
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.58, pp.85-89, 2011-12-01 (Released:2013-01-25)
参考文献数
11

群馬県では,施設キュウリのネコブセンチュウの防除対策として,フスマを用いた土壌還元消毒 (以下フスマ還元) が普及しているが,十分な防除効果が得られない事例があった。そこで,低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒 (以下エタノール還元) およびフスマ還元による下層土のネコブセンチュウに対する防除効果について,2009年と2010年の圃場試験により検討した。2010年試験でのフスマ還元後の土壌では,深さ20cmまでしかジピリジル反応を示さなかったのに対し,エタノール還元処理後では深さ50cmの土壌までジピリジル反応を示し,下層土まで還元状態が維持されていることが確認できた。2009年試験でのフスマ還元後の表層ではネコブセンチュウ第2期幼虫は検出されなかったが,深さ20cm以降の土壌層で検出され,栽培終了時にネコブセンチュウ密度が著しく増加した。一方,エタノール還元処理後では2か年とも深さ50cmまでの土壌層からは検出されず,栽培終了時でのネコブセンチュウ密度の増加はわずかであった。2か年の試験ともエタノール還元の防除価は,フスマ還元の防除価より高かった。よって,低濃度エタノールを用いた土壌還元消毒法では,下層土壌まで還元状態を維持しており,下層土のネコブセンチュウに対して安定的な防除効果があると考えられた。
著者
池田 二三高
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.57, pp.97-99, 2010 (Released:2012-02-22)
参考文献数
3

ウスモンミドリカスミカメTaylorilygus apicalis (Fieber)の成虫は,キク科植物の筒状花と筒状花の間に1粒ずつ産卵する。稀にホウの内側にも産卵する。産卵対象となる花は,筒状花を有する小ギク以下の小さな花に限られ,園芸種や雑草でも同様である。特にセイタカアワダチソウ,ヨモギ,アチノギク類など筒状花の小さい花を好む傾向が強かった。
著者
大井田 寛
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.60, pp.111-114, 2013

本研究では,CSNV などの媒介者として重要であり,薬剤抵抗性が発達しているミカンキイロアザミウマ (以下,ミカンキイロとする) のトマト生育初期における効果的な防除法の確立を目的とした。トマトの育苗期後半 (定植7日前) または定植時にシアントラニリプロール0.5%粒剤を株元処理し,その後の密度推移を調査することにより,生育初期における防除効果の違いを明らかにした。無処理区では,ミカンキイロ成虫が定植約1ヶ月後以降に急増し,幼虫も漸増して同時期には極めて高い密度に達した。一方,育苗期後半処理区では,ミカンキイロ成虫および幼虫が定植約1ヶ月後まで,それぞれほとんど観察されない状態で推移し,調査終了時まで低い密度に留まった。定植時処理区でもミカンキイロ成虫および幼虫は定植約3週間後まで低密度に抑えられたが,その後は増加し,最終調査時には無処理区の約1/2の密度に達した。これらミカンキイロの密度推移の状況から,本粒剤の残効は育苗期後半処理で処理後約5週間まで顕著に高く,定植時処理では処理3~4週間後まで期待できると考えられた。