著者
白石 和弥 石森 裕康 奥村 一 下薗 健志 糸山 享
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.64, pp.122-125, 2017-12-01 (Released:2019-03-01)
参考文献数
12

神奈川県におけるミナミアオカメムシの分布状況を明らかにするため,2015年から2016年の2年間にわたり,同県内の複数地点の圃場における発生を調査した。2015年の調査では,川崎市において神奈川県内では初めてとなるミナミアオカメムシの発生を確認した。2016年の調査では,川崎市に加えて藤沢市,横浜市でも発生を確認し,小田原市に設置された予察灯への誘殺も確認した。以上の結果から,日本国内での分布域を拡大しているミナミアオカメムシが神奈川県においても定着している可能性があるため,今後の継続的なモニタリングが必要と考えられた。
著者
竹内 浩二 竹内 純 菊池 豊 秋山 清 網野 範子 沼沢 健一 伊藤 綾
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.56, pp.99-102, 2009 (Released:2010-12-28)
参考文献数
8

東京都多摩地域でソルゴー障壁を組み合わせた露地ナス生産圃場において,ソルゴー上の昆虫と天敵を調査したところ,ヒエノアブラムシが5~10月に発生し,これを捕食するテントウムシ類やクサカゲロウ類,ヒラタアブ類など30種以上の土着天敵が確認された。また,現地ではソルゴー品種として主に‘風立’を使っていたが,この妥当性を試験圃場,現地栽培圃場で調査したところ,アブラムシ類の発生,草丈など生育状況による防風性,出穂の状況から,東京都においては‘風立’が適当と考えられた。また,試験圃場において露地ナス栽培におけるソルゴー障壁の効果を検討した。ソルゴー障壁区では定植後の農薬散布を実施しなかったが,アブラムシ類の発生は対照区(定植後のアブラムシ剤3回)に比べて少なく,ミカンキイロアザミウマ,カンザワハダニの発生も対照区並に抑えることができた。しかしながら,ホコリダニが多発することがあり,ソルゴー障壁栽培を導入し減農薬栽培を行うにあたってはテントウムシ類やクサカゲロウ類,ヒラタアブ類などに影響が少なくかつホコリダニに効果の高い薬剤の選択といった対応が必要と考えられる。
著者
髙橋 怜子 福田 充 山﨑 周一郎 駒場 麻有佳
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.65, pp.26-28, 2018-12-01 (Released:2019-12-30)
参考文献数
4

トマトかいよう病は管理作業等による二次伝染でほ場内に蔓延すると考えられる。本病原菌汚染ハサミを用いた連続切り付け処理により伝染能力を検証したところ,連続して切断作業をする場合,50回以上の作業の間,本病菌を伝搬させる可能性が示唆された。すなわち,ほ場においては汚染ハサミ1本で50株以上に本病が伝搬される可能性がある。そこで,地上部からの二次伝染防止対策として,各種消毒資材を用いたハサミ消毒による防除効果を検討した。その結果,熱ハサミで最も防除効果が高く,次いで,70%エタノール,塩素系殺菌剤であるケミクロン®Gで防除効果が認められた。ベンチアゾール系殺菌剤であるイチバン,食酢,重曹では防除効果は認められなかった。
著者
太田 光輝 丁 林堅
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会年報 (ISSN:03888258)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.41, pp.9-11, 1994

イネ育苗期に発生する苗立枯細菌病及びもみ枯細菌病の同時防除を想定して, 種子消毒及び土壌施用薬剤について検討した。その結果, 従来から防除効果が認められていたコサイドSD, スターナ水和剤, カスミン粒剤単用以外に, 種子消毒剤 (テクリードCフロアブル, ヘルシードT水和剤, スポルタックスターナSE, ベンレートT水和剤) と床土施用剤 (カスミン粒剤) との併用による防除効果が高いことが判明した。
著者
野田 聡 藤田 耕朗
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会年報 (ISSN:03888258)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.39, pp.43-44, 1992

コムギ黄化萎縮病の発生要因と被害について検討した。本病の発生は, 1990年11月28日~30日の台風28号がもたらした大雨による圃場の浸水が原因と推察された。発病茎率が高まると子実重, 精子実重, 整粒千粒重が減少し, 整粒歩合が低下した。発病茎率と精子実重との間には最も高い負の相関が認められた。発病茎率が50%の場合, 減収率は4割に及んだ。
著者
長坂 幸吉 日本 典秀 上杉 龍士 勾坂 晶 光永 貴之
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.63, pp.81-86, 2016-12-01 (Released:2017-12-26)
参考文献数
11

コレマンアブラバチ (以下コレマンとする) とナケルクロアブラバチ (以下ナケルとする) の併用によるアブラムシ防除効果を施設イチゴにおいて検証した。2014年作では発生初期のワタアブラムシ (以下ワタとする) に対して,両アブラバチを各1頭/m2で放飼した放飼区と無放飼区とでワタの個体数を比較したところ,放飼区では有意に個体数増加が抑制された。2015年作では,各アブラバチを0.5頭/m2で放飼した放飼区と無放飼区との間で接種したチューリップヒゲナガアブラムシ (以下チューリップとする) の個体数を比較したところ,放飼区での個体数は無放飼区に比べて有意に少なかった。また,同時に発生したワタに対しても,有意に個体数増加を抑制した。コレマンはワタのみにマミーを形成したが,ナケルはワタとチューリップの両方にマミーを形成した。これら2事例の結果から,コレマンとナケルの併用により両アブラムシが同時発生しても密度を抑制できる可能性が示唆された。
著者
伊藤 綾 竹内 浩二 高木 章雄 櫻井 文隆 渋澤 英城 菅谷 悦子 栄森 弘己 山岸 明
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53, pp.153-156, 2006-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
6

近年, 東京都の江東地域においてエダマメの葉の黄化や生育不良, 収穫減少などの生育障害が発生している。そこで2005年に都内のエダマメ圃場63カ所を調査した結果, 江東地域では20圃場で生育障害が発生していた。そのうち19圃場では根部にダイズシストセンチュウのシストの寄生と, 土壌中に高密度の本種のシストと卵を認め, ダイズシストセンチュウが生育障害の原因となっている可能性が高いと考えられた。なお, 多摩地域においても初めて本種の分布を確認した。
著者
井上 美保 手塚 信夫 森 章一
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.56, pp.17-19, 2009 (Released:2010-12-28)
参考文献数
5

アブラナ科野菜黒腐病菌およびネギとニラの種子から検出されるFusarium属菌を対象に,70%エタノールに汚染種子を浸漬し,消毒効果と発芽への影響を調査した。ハクサイとチンゲンサイの黒腐病菌自然汚染種子およびチンゲンサイの人工汚染種子をエタノールに浸漬,風乾後,本菌の検出と発芽試験を行なった結果,10分間以上の浸漬では本菌は検出されなかった。また,15分間以内の浸漬では正常に発芽したが,30分間の浸漬では発芽がやや遅れた。また,ネギおよびニラのFusarium属菌自然汚染種子を用いた試験では,1分間以上の浸漬で本菌は検出されなかった。3分間以内の浸漬では正常に発芽したが,10~15分間の浸漬では発芽がやや遅れ,30分間の浸漬では根の先端が褐変した。以上の結果,黒腐病菌汚染種子のエタノール消毒には10~15分間,Fusarium属菌汚染種子の消毒には1~3分間の浸漬処理が適切である。本エタノール消毒法は,種子の乾燥が非常に早く簡便なため,少量の種子消毒に有効である。
著者
藤永 真史 小林 久茂 小松 和彦 小木曽 秀紀 上原 敬義 小野 佳枝 冨田 恭範 小河原 孝司
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.52, pp.25-29, 2005-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
4

長野県のセルリー栽培において最も問題である病害は, 連作によって引き起こされる難防除土壌病害の萎黄病である。これまでは, 化学合成薬剤である土壌くん蒸剤によって恒常的に防除を実施してきたが, 現状, 生産農家からは環境に負荷をかけない防除法の開発が強く要望されている。そこで, セルリー萎黄病防除対策として, 家庭用小型ボイラーを利用した簡易型熱散水殺菌装置による熱水土壌消毒法の有効性を検証した。その結果, 本法はセルリー萎黄病に対し高い防除効果を示すとともに, セルリー萎黄病菌密度は収穫時まで低く維持され, さらに, アスター萎凋病菌, カーネーション萎凋病菌, トルコギキョウ立枯病菌に対しても, 十分な殺菌効果が認められた。これらの作物は施設花き生産の基幹品目であることから, 今後の普及適応拡大に有望と判断される。
著者
酒井 宏 白石 俊昌 萩原 廣 竹原 利明 中山 尊登 齋藤 初雄 漆原 寿彦 蓼沼 優
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会年報 (ISSN:03888258)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.45, pp.77-79, 1998-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
3

スイカ黒点根腐病に対する熱水処理, および臭化メチル代替薬剤の防除効果について検討した。その結果, クロルピクリン錠剤の効果が高く実用性が高いと考えられた。熱水処理, カーバムナトリウム塩液剤ともにクロルピクリン錠剤より効果がやや劣るが, 実用性があると考えられた。
著者
国安 克人 竹原 利明 千葉 恒夫 上原 勝夫 大畑 明
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会年報 (ISSN:03888258)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.40, pp.97-99, 1993-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
2

熱水土壌消毒法が農業研究センター内圃場における試験でホウレンソウ萎ちょう病に対する防除効果が認められた。そこで茨城県の主要野菜生産地の1つである岩井市のホウレンソウ栽培現地において実証試験を行った。約90℃の熱水の注入により土壌温度は表層から30cmの深度まで65℃以上に上昇し, 4~5時間持続した。フザリウム菌密度および発病調査結果からホウレンソウ萎ちょう病に対する熱水土壌消毒の効果はクロルピクリン処理とほぼ同等であった。収量はクロルピクリン処理区が熱水処理区に比較して高く, 熱水土壌消毒による増収は認められなかった。熱水処理区では生育初期のホウレンソウの葉身に黄色のかすれ症状がみられたが, のち回復し, 熱水注入による土壌の多湿等による顕著な生育阻害は認められなかった。ホウレンソウ種子から0.3~0.6%の低率ではあるが萎ちょう病菌が検出されたことから, クロルピクリンおよび熱水消毒区において認められる病原菌復活の一原因として汚染種子に由来する萎ちょう病の発生が推定された。
著者
小河原 孝司 冨田 恭範 西 和文 西宮 聡 窪田 耕一
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53, pp.35-39, 2006-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
4

メロンつる割病レース1が前作で多発生した現地のビニルハウスにおいて, 熱水土壌消毒の防除効果およびその持続効果について検討した。サブソイラーを用いて深さ50cm程度まで耕私後, 2003年6月中旬に熱水土壌消毒装置を用いて約200L/m2の熱水を処理し, 約1週間放置した。処理期間中の最高地温は, 深さ30cm位置で64.7~92.9℃と, 高温を維持した。熱水処理前に深さ30cmまでの土壌から Fusarium 属菌が検出されたが, 処理後には深さ10cmで未検出, 深さ30cmでは菌密度が低下した。7月中旬にメロン品種「アールス雅春秋系」を定植したところ, 収穫時における発病株率は0~0.5%と, 高い防除効果が認められた。その後, 土壌消毒を行わず, 2003年12月下旬にメロン品種「オトメ」を定植したところ, 2月中旬 (交配期) には発病株率が37%と高くなった。生物検定法により, ハウス内土壌のつる割病菌の汚染程度を調査したところ, ハウス全体に菌が蔓延していた。