著者
宮岡 徹
出版者
静岡理工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

宮岡は,対象表面の粗さ・滑らかさを触ることによって知る触微細テクスチヤー知覚について研究し,「振幅情報仮説」を提唱した.この仮説が正しいなら,触覚系はローパスフィルタ特性を示すはずである.本研究は,このローパスフィルタ特性を調べることを研究目的とした.1.数理モデルの作成:触覚系がローパスフィルタ特性を持つなら,どのような結果が導出されるかについて,その特性を記述する数理モデルを作成した.このモデルによれば,触覚系がローパスフィルタ特性を示す場合,心理測定関数に特定のパターンが観察されるはずであった.2.能動触による実験:本実験では,回折格子を刺激として用いた。回折格子に指で触れ,溝に対し直角方向に一定速度で動かせば皮膚には三角波状の振動が与えられる。この振動は,基本周波数がはっきり決まっており,それより低い周波数成分を含まない。従って,基本周波数成分が皮膚及び神経系のフィルタを通過できた場合にはじめて,その回折格子表面に何らかのテクスチャーが感じられるはずである。本実験では,刺激に触れている指を20mm/sの速度で能動的に動かし,2つ1組の刺激のどちらを粗く感じるかを,二肢強制選択法により判断した。その結果,触覚系フィルタの通過限界周波数は400〜600Hzの間にあることが明らかとなった。また,この能動触実験の結果得られた心理測定関数は,ローパスフィルタのモデルで予測された心理測定関数と一致した.3.運動制御装置の作成と受動触による実験:ローパスフィルタ特性測定実験をさらに正確に実施するために,刺激移動速度を機械的に制御して,固定した指に受動触の状態で刺激を呈示する装置を作成した.この装置により実験を行なった結果,能動触実験と一致する結果が得られた.受動触実験で得られた心理測定関数も,数理モデルの予測に合致した.本研究の結果,触覚系の微細表面テクスチャー知覚における「振幅情報仮説」は基本的に正しいことが明らかとなった.
著者
久保木 功
出版者
静岡理工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

工業用純チタンC.P.Tiおよび冷間加工が可能なβrich(α+β)チタン合金SP700に,種々の条件で一方向ねじり加工および繰返しねじり戻し加工を施した試験片を製作した.これらの試験片に室温および高温引張試験,硬さ試験,表面粗さ測定および組織観察を行い,次の知見を得た.まず,工業用純チタンC.P.Tiでは;(1)繰返しねじり戻し加工により,正方形断面を持つ板材試験片でもねじり加工後の稜線が比較的直線的であり,それほど大きな外観形状の変化は見られず,原形回復できることがわかった.(2)繰返しねじり戻し加工ではねじり加工が進行しても,それほど表面粗さに大きな変化はなく,一方向ねじり加工より表面粗さを小さくすることができる.(3)繰返しねじり戻し加工とその後の再結晶焼鈍により,中心から外周に向かって結晶粒が徐々に微細化し,硬さが増加していく傾斜組織が形成されることがわかった.(4)一方向ねじり加工や繰返しねじり戻し加工を行うことで引張強さは増大する.このとき一方向ねじりより,ねじり戻し加工したほうがねじり量(比ねじり角)が大きくでき,引張強さは大きくなる.(5)高温引張試験では,変形温度923Kにおいて繰返しねじり戻し加工材のほうが冷間圧延材よりひずみ速度感受性指数m値が大きくなる(m=0.28).これに対応して,ねじり戻し加工材の全伸びは冷間圧延材よりいずれのひずみ速度でも10〜20%程度大きい.次に,チタン令金SP700では;(6)繰返しねじり戻し加工を行っても,硬さは大きく変わらなかった.しかし,引張強さは焼鈍材に比べ大きくなった.このときねじり戻し加工した試験片の表層部と中心部の結晶組織は外周方向に伸張していた.
著者
大塚 二郎 十朱 寧 越水 重臣
出版者
静岡理工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

モータとボールねじからなる精密位置決め装置に存在する数箇所の熱源(主に,ボールねじ部と軸受部)により,位置決め装置のステージの熱変形ドリフト(熱に起因する位置決め誤差)が生じる.そこで本研究では,精密位置決め装置の軸受ハウジング側面2箇所とステージ上面の計3箇所にペルチェモジュール(以下,ペルチェと呼ぶ)を取り付け,ペルチェにかかる電圧を制御しながら冷却を行い,熱変形ドリフトを低減することを目指した.実験の結果,ハウジング部に対しては温度フィードバッグ制御を,ステージに対しては軸の熱変形量をフィードバッグ制御することにより,速度250mm/s,加速度1Gまでの条件下で,軸の熱変形量を2μm程度まで低減することに成功した.