著者
中谷 美紀子 黒田 裕子
出版者
Japan Academy of Critical Care Nursing
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.42-49, 2010
被引用文献数
1

本研究の目的は,看護師が重要と認識しながらもニーズを満たすケア実践ができない心肺停止状態にある患者の家族ニーズと,その関連要因を明らかにするものである.初療経験満2年以上の看護師を対象に,研究者が作成した『看護師が測定する心肺停止状態にある患者家族ニーズ表(Family Needs of Cardiopulmonary Arrest Patients Inventory that Nurses Measure)』を用いて全国調査を実施し,有効回答数655名(59.8%)のデータを分析した.<br>対象者が重要と認識していてもニーズを満たすケア実践が最もできないニーズは「家族の存在を保証するニーズ」だった.ニーズ実践得点を用いて対象者を"高頻度実践群"(n=485,74.0%)と"低頻度実践群"(n=170,26.0%)に分類し比較したところ,"低頻度実践群"は"高頻度実践群"に比べて,有意に年齢が若く(p<0.01),看護師経験年数(p<0.01)と初療経験年数(p<0.05)が浅い特徴があった.しかし,"低頻度実践群"のうち,40歳以上でも初療経験5年未満の対象者は他の対象者に比べ,有意に実践できないと評価した.実践能力の向上を目指し,救急医療チームとして取り組む必要性が示唆された.
著者
中谷 美紀子 黒田 裕子
出版者
Japan Academy of Critical Care Nursing
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.34-41, 2010
被引用文献数
1 2

本研究の目的は,『看護師が測定する心肺停止状態にある患者家族ニーズ表(Family Needs of Cardiopulmonary Arrest Patients Inventory that Nurses Measure;以下FNCPAI-NMと略す)』を作成し,信頼性・妥当性を検討することである.この尺度は,看護師が重要と認識してもニーズを満たすケア実践ができない家族ニーズを明らかにするものである.<br>既存の2つの家族ニーズ表と,看護師より得た情報をもとに暫定版を作成し,専門家による内容妥当性,パイロットスタディによる探索的因子分析で概念構成妥当性を検討した.その結果4因子が抽出され,「待っている間の家族の心身の安寧・安楽を求めるニーズ」「家族の存在を保証するニーズ」「患者ケアに責任ある言動を求めるニーズ」「医療者に真摯な対応を求めるニーズ」と命名された.これらは搬送から死亡に至る特徴的なプロセスに存在する家族を捉えることが可能であるといえる.内的整合性を表すクロンバックのα係数は,全体で0.85,それぞれの因子で0.82~0.68となり,十分な信頼性を確保した.最終的に4因子20項目の『FNCPAI-NM』が完成した.
著者
木下 佳子
出版者
Japan Academy of Critical Care Nursing
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.20-35, 2011
被引用文献数
5

本研究は三部構成からなる.第一部では,記憶のゆがみをもつICU入室後患者の体験および対処行動を質的に明らかにした.体験は「被害を与えられた体験」「恐怖感や不愉快な感覚を伴う非現実的体験」「非現実的な光景や音との遭遇」「記憶の欠落」で,対処行動は「ICU体験を否定されずに語りたい」「現実か錯覚・幻覚・夢かと自問する」「記憶の再構築を行う」「非現実的な体験は自分だけではないことを知ろうとする」「体験の意味づけ・理由づけを行う」だった.第二部では,これらを元に「記憶のゆがみをもつICU退室後患者への看護支援プログラム」を考案,試用後完成させた.第三部では,その有用性を半構成的面接法による質的評価および不安抑うつスケール(HADS)と改訂版出来事インパクト尺度(IES-R)による量的調査を統合した方法論的triangulationで検証した.プログラムを記憶のゆがみをもつICU退室後患者20名(適用群)に適用し,非適用ゆがみあり群(N=31)と非適用ゆがみなし群(N=28)と3群間で比較した.質的評価では,18名がプログラム目標を達成し,体験を語れた・説明され理解した・事実を確認した・意味づけができたなどが語られた.量的検証では,非適用ゆがみあり群に対し適用群がHADS,IES-Rで有意に低値を示した.
著者
石塚 紀美 井上 智子
出版者
Japan Academy of Critical Care Nursing
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.11-23, 2015
被引用文献数
5

【目的】救命救急領域における家族の代理意思決定時の思いと看護師の代理意思決定支援と思いを明らかにし,よりよい看護支援の検討を行う.<br>【研究方法】参加観察,半構成的面接,診療録調査を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに準じて分析した.<br>【結果】7家族から〈救命救急という場と状況に影響された決断〉,〈患者の思いを優先した決断〉,〈自身の決断への評価〉,〈今後への受容と不安が交錯する〉,〈情報が欲しい〉,〈患者家族を支援して欲しい〉,〈看護支援は実感しにくい〉,〈看護師が家族の救いとなる〉の8つの側面が,10 人の看護師からは〈時間を内容で埋める〉,〈救命と人生を考える〉,〈家族の力量と現状に応じた関わり〉,〈周囲を調整する〉,〈家族に寄り添う〉,〈同じ見解のもとチームで協働する〉,〈人生と命に関与する困難さ〉,〈知性と感性を養う必要性〉の8つの側面が導き出された.<br>【結論】家族が救命救急という場や状況に左右されず,最善の決断ができるよう支援する必要がある.