著者
北川 裕子 小塩 靖崇 股村 美里 佐々木 司 東郷 史治
出版者
Japanese Society of Anxiety Disorder
雑誌
不安障害研究 (ISSN:18835619)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.31-38, 2013

近年の日本では,いじめが原因と考えられる児童生徒の自殺が社会的に大きな波紋を起こしている。いじめは,被害側だけでなく加害側の児童生徒でも,不安・抑うつ,社会不適応,そして自殺問題と関連すると言われている。このような状況に鑑みて,効果的ないじめ対策教育の実施は喫緊の課題である。しかし,日本ではいじめ対策が各学校に任されたままであり,全国的な系統的いじめ対策プログラムが存在しない。また,効果検証がなされていない。そこで本研究では,日本におけるいじめ予防介入教育の構築に向けた一資料として,フィンランドの全国的ないじめ対策プログラムであり,その効果が大規模なRandomized Controlled Trial (RCT)により評価されている「KiVaプログラム」について紹介した。KiVaプログラムの効果として,いじめの減少,さらには児童生徒の不安・抑うつの低下,対人関係の改善などが確認されている。
著者
金井 嘉宏
出版者
Japanese Society of Anxiety Disorder
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.40-51, 2015
被引用文献数
1

近年のメタ分析の結果から,社交不安症に対するさまざまな薬物療法と精神療法の効果を比較した場合,Clark & WellsやHeimbergのモデルに基づく個人対象の認知行動療法が最も有効であることが示されている。一方,そのメタ分析において十分な治療効果が得られない患者の存在も指摘されており,さらなる治療の改善が求められている。社交不安症の認知行動療法では,恐れている社交場面への曝露が共通して含まれているが,その基礎理論となる恐怖条件づけと消去に関する認知神経科学の発展が著しい。本稿では,この認知神経科学の発展に基づいてエクスポージャーの改善を提唱しているCraskeのinhibitory learningや,不安症の治療法としても注目されているアクセプタンス&コミットメント・セラピーの観点から,社交不安症の認知行動療法の治療効果を高めるためのエッセンスをまとめることを目的とした。
著者
塩入 俊樹
出版者
Japanese Society of Anxiety Disorder
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.29-39, 2015

社交不安症(障害)(SAD)は,社会的状況に対する過度でコントロールできない恐怖または不安が生じ,そのためそのような状況を回避し,著しい社会機能障害を呈する不安症である。本稿では,SADの薬物療法について,最近の知見を中心に述べる。メタ解析やRCTによるエビデンスによると,SADの薬物療法としては,SSRIとSNRI, そしてRIMAがプラセボに比し有意に効果があるとされている。しかしながらわが国ではRIMAは使用できない。また最近承認され,SADに最もエビデンスがあるSNRIであるベンラファキシンもSADへの保険適応がないことから,わが国でのSADの薬物療法の中心は,現時点ではSSRIとなろう。