著者
入戸野 宏 小森 政嗣 金井 嘉宏 井原 なみは
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

“かわいい(kawaii)”は日常生活でよく使われる言葉であり,日本のポップカルチャーの代表ともいわれる。本研究では,“かわいい”を対象の属性ではなく,対象に接することで生じる感情であると捉え,その性質と機能について質問紙調査と実験室実験を用いて検討した。その結果,“かわいい”は,好ましい人やモノを“見まもりたい”“一緒にいたい”という接近動機づけに関連した社会的なポジティブ感情であり,主観・生理・行動の3側面に影響を与えることが明らかになった。
著者
金井 嘉宏 入戸野 宏
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.131-141, 2015-03-31 (Released:2015-04-04)
参考文献数
22
被引用文献数
2 6

本研究の目的は,人間や動物の赤ちゃん,およびキャラクターやモノに対する“かわいい”感情を共感性や親和動機によって予測するモデルを構築することであった。582名の大学生に対して,多次元的共感性尺度,親和動機尺度,各対象に対する“かわいい”感情の評定尺度で構成される質問紙調査を行った。モデルに性差が見られるか検討するために多母集団同時分析を行った結果,人間や動物の赤ちゃんだけではなく,モノに対する“かわいい”感情も共感性が予測することが示された。モデルに性差はなく,共感性が高いほど,これらの対象に対しては“かわいい”感情を抱きやすいことがわかった。親和動機は人間の赤ちゃんに対する“かわいい”感情のみ予測した。一方,キャラクターに対する“かわいい”感情は共感性,親和動機のいずれによっても予測されなかった。社会的動機としての親和動機に加えて接近動機を測定し,共感性や“かわいい”感情との関係を調べる必要性が議論された。
著者
金井 嘉宏
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.40-51, 2015-11-30 (Released:2015-12-10)
参考文献数
30
被引用文献数
1

近年のメタ分析の結果から,社交不安症に対するさまざまな薬物療法と精神療法の効果を比較した場合,Clark & WellsやHeimbergのモデルに基づく個人対象の認知行動療法が最も有効であることが示されている。一方,そのメタ分析において十分な治療効果が得られない患者の存在も指摘されており,さらなる治療の改善が求められている。社交不安症の認知行動療法では,恐れている社交場面への曝露が共通して含まれているが,その基礎理論となる恐怖条件づけと消去に関する認知神経科学の発展が著しい。本稿では,この認知神経科学の発展に基づいてエクスポージャーの改善を提唱しているCraskeのinhibitory learningや,不安症の治療法としても注目されているアクセプタンス&コミットメント・セラピーの観点から,社交不安症の認知行動療法の治療効果を高めるためのエッセンスをまとめることを目的とした。
著者
岡島 義 金井 嘉宏 陳 峻雲 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-12, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、社会不安障害(SAD)を対象として、安全確保行動のひとつである「恐怖場面内での回避行動」を測定する尺度(Avoidance Behavior In-Situation Scale:ABIS)を作成することであった。健常大学生121名とSAD患者10名を対象に、不安喚起場面とその場面内で用いる「恐怖場面内での回避行動」について自由記述による回答を求め、項目を作成した。次に、健常大学生470名とSAD患者46名を対象に自己記入式によるABI尺度を実施した。探索的因子分析を行った結果、2因子28項目が抽出され、十分な信頼性を有していた(α=.90)。妥当性は、内容妥当性と基準関連妥当性の観点から確認された。以上の結果から、ABISは高い信頼1生と妥当性を有することが明らかにされた。
著者
笹川 智子 金井 嘉宏 村中 泰子 鈴木 伸一 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.87-98, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
30

本研究の目的は、日本版Fear of Negative Evaluation Scale(FNE;石川ら,1992)の短縮版を作成し、その測定精度を項目反応理論(IRT)の観点から評価することであった。項目数を削減することによる情報量の損失を、段階反応モデルを用いることで補い、12項目五件法の尺度を構成した。テスト情報関数の形状から、作成された短縮版は幅広い尺度値レベルで安定した測定精度を保つことが示された。特に特性値の高い被検者に対しては30項目二件法の原版よりも有効性が高く、Leary(1983)のBrief Fear of Negative Evaluation Scale(BFNE)との比較においてもすぐれた測定上の特徴をもつものであった。また、簡便なスクリーニングテストとしての有用性や、他の尺度との併用など、臨床・研究場面への応用可能性が論じられた。
著者
横光 健吾 金井 嘉宏 松木 修平 平井 浩人 飯塚 智規 若狭 功未大 赤塚 智明 佐藤 健二 坂野 雄二
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.354-360, 2015 (Released:2015-10-25)
参考文献数
23
被引用文献数
4 5

This study explores the psychological effects that Japanese people experience when consuming their “Shikohin”, such as alcohol, tea, coffee, and tobacco. We conducted a cross-sectional study among 542 people, from 20-to 69-year-old, who regularly consumed any one of “Shikohin” in Tokyo, Kanagawa, Saitama, and Chiba. The participants responded to an anonymous questionnaire concerning the consumption patterns of their “Shikohin” and the psychological effects that they experienced in taking in their “Shikohin”. Results obtained using the K-J methods showed three common psychological effects in each “Shikohin”. These effects included an increase in relaxation response, the promotion of social relationships, and an increase in positive mood. Our findings suggest that Japanese people may get some common effects through consumption of different “Shikohin”.
著者
金井 嘉宏
出版者
Japanese Society of Anxiety Disorder
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.40-51, 2015
被引用文献数
1

近年のメタ分析の結果から,社交不安症に対するさまざまな薬物療法と精神療法の効果を比較した場合,Clark & WellsやHeimbergのモデルに基づく個人対象の認知行動療法が最も有効であることが示されている。一方,そのメタ分析において十分な治療効果が得られない患者の存在も指摘されており,さらなる治療の改善が求められている。社交不安症の認知行動療法では,恐れている社交場面への曝露が共通して含まれているが,その基礎理論となる恐怖条件づけと消去に関する認知神経科学の発展が著しい。本稿では,この認知神経科学の発展に基づいてエクスポージャーの改善を提唱しているCraskeのinhibitory learningや,不安症の治療法としても注目されているアクセプタンス&コミットメント・セラピーの観点から,社交不安症の認知行動療法の治療効果を高めるためのエッセンスをまとめることを目的とした。
著者
入戸野 宏 吉田 綾乃 小森 政嗣 金井 嘉宏 川本 大史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は,3年間の研究期間の2年目であり,これまでに実施した実験や調査を継続・発展させるとともに,新しいテーマに取り組んだ。主な研究成果は,以下の5つである。(1) 接近-回避の潜在連合テストパラダイムを用いて,幼児顔と接近動機づけが連合していることを明らかにした。成人顔は接近動機づけとも回避動機づけとも連合していなかった。また,正立顔の方が倒立顔よりも効果が大きかったので,物理的形状(丸み)だけでなく,顔の全体処理が影響していることが示唆された。(2) 6か月齢の幼児顔を80枚収集し,それぞれに179点の標識点を入力した。200名の男女の評定に基づいて,かわいさの高い幼児の平均顔とかわいさの低い幼児の平均顔を作成した。さらに,それらをプロトタイプとして50枚の合成顔の変形を行い,かわいさを増強した顔と減弱した顔からなるデータセットを作成した。(3) 65歳以上のシニア層を対象とした「かわいい」に関するインタビュー結果(20名)について質的な整理を行った。キャラクター文化に対する関心は非常に低かったが,「かわいい」という感情そのものは肯定的に捉えていることが分かった。(4) 「かわいい」概念のプライミングが社会価値志向性に及ぼす効果を調べた実験データをまとめた。統計的に有意な効果が得られず,パーソナリティ要因の影響が大きいことが示唆された。(5)多変量の探索手法であるベイズ最適法を用いてかわいい造形物(二次元の模様)を生成するプログラムを試作した。
著者
金井 嘉宏 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.159-170, 2003-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、脅威刺激に対する注意バイアスに対処スタイルが及ぼす影響について検討することであった。大学生50名を実験参加者とし、ドットプローブ課題を行った。単語の呈示条件は500ms,1500msの2条件であった。上下に対呈示された単語が消えるとすぐに、どちらかの単語と同じ位置にドットが呈示された。参加者はドットの位置の判断をボタン押しで求められた。注意バイアス得点を従属変数とする分散分析の結果、対処スタイルの主効果が有意傾向であった。対処スタイルによって注意の向け方は異なるが、注意の方向は明らかにされなかった。また、500ms条件では、脅威語に対する注意の向け方に対処スタイルによる違いはみられないが、1500ms条件ではsensitizersの注意の向け方は明らかにされなかったが、repressorsは脅威語に注意を向けることがわかった。本研究の結果は、不安の情報処理モデル理論から考察された。
著者
笹川 智子 金井 嘉宏 陳 峻斐 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.285-295, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、児童期の行動抑制(behavioralinhibition:BI)傾向を測定するRetrospectiveSelf-ReportofInhibition(RSRI;Reznicketal.,1992)の日本語版を作成し、標準化することであった。都市部近郊に住む546名の大学生と38名の社会不安障害患者を対象に、自己記入式の質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果、原版と同様の2因子構造(「対人場面における行動抑制」と「非対人場面における行動抑制」)が確認された。また、内的整合性(α=.84)や再テスト信頼性(r=.87)の値も十分に高いことが示された。不安障害やうつ病の既往歴をもつと回答した調査対象者では有意に高いRSRI得点が報告され、児童期の行動抑制の自己評定と親評定は、中程度の相関関係にあった。このことから、RSRI日本語版は十分な信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。
著者
金井 嘉宏 笹川 智子 陳 峻雲 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-110, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、他者のあいまいな行動に対する解釈バイアスの観点から社会不安障害と対人恐怖症を比較することであった。実験参加者を抽出するために、592名の大学生が他者からの否定的評価に対する社会的不安測定尺度(FNE)と対人恐怖症尺度(TKS)に回答することを求められた。カットオフ得点を満たした大学生40名が解釈バイアスについて調べるためのスピーチ課題を行った。FNE得点とTKS得点が高い群は14名、 FNE得点は高いがTKS得点が低い群は7名、 FNE得点は低いがTKS得点が高い群は3名、FNE得点とTKS得点が低い群は13名であった。スピーチ課題中、聞き手は予備調査によって抽出されたあいまいな行動を行った。その結果、社会不安障害傾向と対人恐怖症傾向がともに高い者は低い者に比べて、あいまいな行動を否定的に解釈していたが、社会不安障害と対人恐怖症に違いはみられなかった。
著者
金井 嘉宏 笹川 智子 陳 峻雲 嶋田 洋徳 坂野 雄二
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.97-110, 2007-09-30
被引用文献数
1

本研究の目的は、他者のあいまいな行動に対する解釈バイアスの観点から社会不安障害と対人恐怖症を比較することであった。実験参加者を抽出するために、592名の大学生が他者からの否定的評価に対する社会的不安測定尺度(FNE)と対人恐怖症尺度(TKS)に回答することを求められた。カットオフ得点を満たした大学生40名が解釈バイアスについて調べるためのスピーチ課題を行った。FNE得点とTKS得点が高い群は14名、 FNE得点は高いがTKS得点が低い群は7名、 FNE得点は低いがTKS得点が高い群は3名、FNE得点とTKS得点が低い群は13名であった。スピーチ課題中、聞き手は予備調査によって抽出されたあいまいな行動を行った。その結果、社会不安障害傾向と対人恐怖症傾向がともに高い者は低い者に比べて、あいまいな行動を否定的に解釈していたが、社会不安障害と対人恐怖症に違いはみられなかった。
著者
貝谷 久宣 金井 嘉宏 熊野 宏昭 坂野 雄二 久保木 富房
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.279-287, 2004-04-01
被引用文献数
1

本研究の目的は,社会不安障害を簡便にスクリーニングできる尺度を開発することである.社会不安障害患者97名,パニック障害患者37名,健常者542名を対象に自記式の調査を行った.探索的因子分析の結果,本尺度は「人前でのパフォーマンス不安と他者評価懸念」,「身体症状」,「対人交流に対する不安」の3因子28項目と日常生活支障度に関する項目で構成された.各因子および全項目の内的整合性は高かった.また「人前でのパフォーマンス不安と他者評価懸念」得点,「身体症状」得点,合計得点は,社会不安障害群と他の2群を弁別可能であった.したがって,本尺度は高い信頼性と妥当性を有することが明らかにされた.
著者
金井 嘉宏 佐々木 晶子 岩永 誠 生和 秀敏
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.520-526, 2010 (Released:2012-03-20)
参考文献数
22
被引用文献数
6 4

The purpose of this study was to investigate the relationship between subtypes of social anxiety and distorted cognition of bodily sensations. The package of questionnaires including the Social Phobia Scale (SPS) and the Social Interaction Anxiety Scale (SIAS) was administered to 582 undergraduate students. To identify subtypes of social anxiety, cluster analysis was conducted using scores of the SPS and SIAS. Five clusters were identified and labeled as follows: Generalized type characterized by intense anxiety in most social situations, Non-anxious type characterized by low anxiety levels in social situations, Averaged type whose anxiety levels are averaged, Interaction anxiety type who feels anxiety mainly in social interaction situations, and Performance anxiety type who feels anxiety mainly in performance situations. Results of an ANOVA indicated that individuals with interaction type fear the negative evaluation from others regarding their bodily sensations whereas individuals with performance type overestimate the visibility of their bodily sensations to others. Differences in salient aspects of cognitive distortion among social anxiety subtypes may show necessity to select intervention techniques in consideration of subtypes.
著者
横光 健吾 金井 嘉宏 佐藤 健二 杣取 恵太 坂野 雄二
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.87-90, 2019-07-01 (Released:2019-07-06)
参考文献数
20

The purpose of this cross-sectional study was to examine the relationship between happiness, satisfaction, and the psychological effects of consuming “shikohin” at social events on psychological health. Five hundred and thirty-two participants (270 men, 262 women; mean age=44.91 years, SD=13.81 years) from a community sample in Tokyo, Kanagawa, Saitama, and Chiba completed a set of questionnaires and the data were analyzed. The results of partial correlation analyses showed that when people experienced positive and negative social life events, the psychological effects of consuming “shikohin” showed a weak but positive correlation with happiness and satisfaction.
著者
金井 嘉宏 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.117-129, 2006-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本稿の目的は、社会不安を示す者の生理的反応に着目した研究の成果について展望を行い、社会不安を示す者と示さない者における生理的反応の変化の大きさを比較した研究結果と今後の課題について考察するとともに、自らの生理的反応の変化を他者に気づかれることに恐れを抱く社会不安障害(SAD)患者への介入方法について考察することであった。展望の結果、社会不安を示す者は示さない者に比べて生理的反応の変化が大きいことを示す研究と、両者の生理的反応の変化の大きさに違いはみられないことを示す研究があり、結果は一致していなかった。一方、社会不安を示す者は示さない者に比べて生理的反応を多く経験していると報告していた。生理的反応の変化に関する結果の不一致についてストレス対処、SADのサブタイプ、認知的側面の観点から考察するとともに、生理的反応の変化を他者に気づかれることに恐れを抱くSAD患者への介入方法について論じた。
著者
岡島 義 金井 嘉宏 笹川 智子 金澤 潤一郎 秋田 久美 陳 峻要 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.297-309, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、社会不安を測定するSocialPhobiaandAnxietyInventory(SPAI)の翻訳版を開発することであった。大学生431名を対象に自己記入式の調査を行い、探索的因子分析を行った。その結果、SPAI日本語版は原版と同様の2因子45項目で構成され、各因子を「社会恐怖」「広場恐怖」と命名した。各因子の内的整合性(α=.88〜.96)、および再検査法による信頼性(r=.67〜.72)は高かった。既存の社会不安測定尺度と相関は中程度であったため、高い併存的妥当性が認められた。また、「社会恐怖」下位尺度において、確認的因子分析を行ったところ、原版と同様の5因子構造であることが確認された。以上の結果から、SPAI日本語版は高い信頼性と妥当性を有することが明らかにされた。
著者
国里 愛彦 高垣 耕企 岡島 義 中島 俊 石川 信一 金井 嘉宏 岡本 泰昌 坂野 雄二 山脇 成人
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.21-31, 2011

本研究は、環境中の報酬知覚について測定する自己記入式尺度の EnvironmentalReward Observation Scale (EROS) 日本語版を作成し、信頼性と妥当性の検討を行うことを目的とした。大学生と専門 学校生を対象に調査を行い、414名(男性269名、女性145名;平均年齢18.89±0.93歳)を解析対象 とした。探索的・確認的因子分析の結果、日本語版EROSは1因子構造を示した。信頼性において、 日本語版EROSは十分な内的整合性と再検査信頼性を示した。項目反応理論による検討を行った結果、 広範囲な特性値において測定精度の高いことが示された。日本語版EROSは、抑うつ・不安症状や行 動抑制傾向との負の相関、行動賦活傾向と正の相関を示した。不安症状を統制した場合、日本語版 EROSはアンヘドニア症状との相関が最も強い値を示した。以上より、日本版EROSの構成概念妥当 性が確認された。
著者
金井 嘉宏 入戸野 宏
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.131-141, 2015
被引用文献数
6

本研究の目的は,人間や動物の赤ちゃん,およびキャラクターやモノに対する“かわいい”感情を共感性や親和動機によって予測するモデルを構築することであった。582名の大学生に対して,多次元的共感性尺度,親和動機尺度,各対象に対する“かわいい”感情の評定尺度で構成される質問紙調査を行った。モデルに性差が見られるか検討するために多母集団同時分析を行った結果,人間や動物の赤ちゃんだけではなく,モノに対する“かわいい”感情も共感性が予測することが示された。モデルに性差はなく,共感性が高いほど,これらの対象に対しては“かわいい”感情を抱きやすいことがわかった。親和動機は人間の赤ちゃんに対する“かわいい”感情のみ予測した。一方,キャラクターに対する“かわいい”感情は共感性,親和動機のいずれによっても予測されなかった。社会的動機としての親和動機に加えて接近動機を測定し,共感性や“かわいい”感情との関係を調べる必要性が議論された。