著者
塩入 俊樹
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.20-24, 2006-01-10

本稿では,シンポジウム「災害医療の実情と展望:新潟中越地震の経験から」の中で,新潟大学精神科(以下,当科)が行った「こころのケア対策」について述べる.地震発生の翌24日,当科の染矢教授と新潟県福祉健康部健康対策課とで協議が行われ,被災地での精神科医療の一元化を図るために「こころのケアチーム」を編成し,それによる統制のとれた支援を行うことが決定された.更に同日には,精神保健福祉センターに「こころのケアホットライン」を開設.翌25日,当科と県立精神医療センターを中心に「こころのケアチーム」が編成され,我々のチームは情報収集を行いつつ,26日に現地入りした.当科の「こころのケアチーム」の活動エリアは長岡市の山古志村避難所で,当初は小千谷市も担当した.活動内容としては,各避難所を巡回・診療と,広報活動である.また,人口の多い小千谷市では,精神医療センターと協力し"こころのケア診療所"を開設した.山古志村の各避難所においては,延べ193件(93名)の巡回診察を行い,継続治療が必要な方は全て紹介状を作成して地域の医療機関での通院をして頂いている.主訴としては,不眠が一番多く,余震に対する過度の不安,食欲不振,抑うつなどもみられた.12月に入ると,被災者の方々が徐々に仮設住宅に移られ,新たな生活が始まった.この時点で災害時精神科初期医療はほぼその目的を終え,今後は中長期的な「こころのケア」を考えていく必要がある.そこで,我々新潟大学精神科では,以下の4つのケアプランを立て,村民の皆さんの負担にならないよう十分配慮し,かつ健康対策課とも密に連携しながら実践する予定である.(1)20年間にわたる松之山での自殺予防研究の経験から,山古志村診療所の佐藤良司先生を中心にして,看護師さんや村担当保健師さんも含めた勉強会を定期的に行い,うつ病等の精神医学的知識を修得し,それによって早期発見,早期治療をめぎす.(2)GHQのような健康度調査票を適切な時期に繰り返し行い,high risk者のピックアップとその情報を現地のスタッフに活用し,早期治療に役立てる.(3)村民の方を対象としたうつ病等の精神疾患の啓蒙のための小セミナーの開催.(4)地域行政職員を対象とした講演会の開催.これからが心のケアの本番と考えています.どうぞ皆様方のご支援,ご協力を宜しくお願い申し上げます.
著者
塩入 俊樹
出版者
Japanese Society of Anxiety Disorder
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.29-39, 2015

社交不安症(障害)(SAD)は,社会的状況に対する過度でコントロールできない恐怖または不安が生じ,そのためそのような状況を回避し,著しい社会機能障害を呈する不安症である。本稿では,SADの薬物療法について,最近の知見を中心に述べる。メタ解析やRCTによるエビデンスによると,SADの薬物療法としては,SSRIとSNRI, そしてRIMAがプラセボに比し有意に効果があるとされている。しかしながらわが国ではRIMAは使用できない。また最近承認され,SADに最もエビデンスがあるSNRIであるベンラファキシンもSADへの保険適応がないことから,わが国でのSADの薬物療法の中心は,現時点ではSSRIとなろう。
著者
塩入 俊樹
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.29-39, 2015-11-30 (Released:2015-12-10)
参考文献数
20

社交不安症(障害)(SAD)は,社会的状況に対する過度でコントロールできない恐怖または不安が生じ,そのためそのような状況を回避し,著しい社会機能障害を呈する不安症である。本稿では,SADの薬物療法について,最近の知見を中心に述べる。メタ解析やRCTによるエビデンスによると,SADの薬物療法としては,SSRIとSNRI, そしてRIMAがプラセボに比し有意に効果があるとされている。しかしながらわが国ではRIMAは使用できない。また最近承認され,SADに最もエビデンスがあるSNRIであるベンラファキシンもSADへの保険適応がないことから,わが国でのSADの薬物療法の中心は,現時点ではSSRIとなろう。
著者
塩入 俊樹
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.10-19, 2018-10-31 (Released:2018-12-28)
参考文献数
22

本稿では,「DSM診断基準における不安症の変遷」と題して,米国精神医学会の公式診断基準であるDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の最初の版であるDSM-Iが世に出た1952年から,現在使われている最新のDSM-5が出版された2013年まで,約60年にわたる不安症(AD)の概念・分類の変遷について,述べる。ADはDSM-I(1952)やDSM-II(1968)までは,それぞれ「精神神経症反応」,「神経症」として分類されていた疾患群の一部で,DSM-III(1980)に初めて用いられた疾患名である。当時は,強迫症(OCD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)なども不安症に含まれていたが,様々な紆余曲折を経て,両者はDSM-5(2013)において,ADとは別の独立した疾患群となり,現在のADの形に落ち着いたと言ってよい。その変遷には,各疾患の病態メカニズムの相違等も関連しているため,最後に,AD, OCD, PTSDについての生物学的病態についても筆者の考えを述べてみたい。
著者
高橋 三郎 塩入 俊樹
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.153-159, 2003-02
被引用文献数
2