著者
北川 裕子 小塩 靖崇 股村 美里 佐々木 司 東郷 史治
出版者
Japanese Society of Anxiety Disorder
雑誌
不安障害研究 (ISSN:18835619)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.31-38, 2013

近年の日本では,いじめが原因と考えられる児童生徒の自殺が社会的に大きな波紋を起こしている。いじめは,被害側だけでなく加害側の児童生徒でも,不安・抑うつ,社会不適応,そして自殺問題と関連すると言われている。このような状況に鑑みて,効果的ないじめ対策教育の実施は喫緊の課題である。しかし,日本ではいじめ対策が各学校に任されたままであり,全国的な系統的いじめ対策プログラムが存在しない。また,効果検証がなされていない。そこで本研究では,日本におけるいじめ予防介入教育の構築に向けた一資料として,フィンランドの全国的ないじめ対策プログラムであり,その効果が大規模なRandomized Controlled Trial (RCT)により評価されている「KiVaプログラム」について紹介した。KiVaプログラムの効果として,いじめの減少,さらには児童生徒の不安・抑うつの低下,対人関係の改善などが確認されている。
著者
川村 慎 堀口 雅則 小沼 健太郎 山下 慎一 小塩 靖崇
出版者
Japan Society of Sports Industry
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_481-4_491, 2022-10-01 (Released:2022-10-14)
参考文献数
33

There is growing academic and practical interest in mental health and wellbeing care systems for elite athletes, including rugby players. Concerns about career transition and its maladaptation are one of the athlete-related factors for mental health problems. The Player Development Program (PDP), which has been implemented mainly in New Zealand, Australia and Europe etc., is a system that supports elite athletes from multiple perspectives while they are active players. According to international practice reports and papers, PDP can also contribute to improving performance. We documented the practice and the feedback of the PDP conducted by the Japan Rugby Football Playersʼ Association (JRPA) as a “Research Note”. In the current practice, from December 2020 to October 2021, we matched 11 active Japanese rugby players and 11 Player Development managers (PDM) in a one-to-one setting to provide an opportunity to speak online once a month. During the period, 10 out of 11 pairs completed the trial. From the feedback after the 10-month practice, the satisfaction of the players was high, and the PDMs answered that it was necessary for active players. Future challenges for promoting the PDP in the Japanese sports society are the specification of PDP in Japan, securing financial resources for the operation, and securing PDM human resources.
著者
小塩 靖崇 住吉 太幹 藤井 千代 水野 雅文
出版者
日本精神保健・予防学会
雑誌
予防精神医学 (ISSN:24334499)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.75-84, 2019 (Released:2020-12-01)
参考文献数
30
被引用文献数
1

精神疾患に関する知識不足は、精神疾患の早期発見や支援の障壁となっている。このことから、思春期の若者のメンタルヘルスリテラシー向上が求められ、学校での教育プログラムの実施やその成果が報告されている。日本では2022年度より開始される新学習指導要領に「精神疾患の予防と回復」が追加され、約40年ぶりに精神疾患に関する内容が学校で扱われることとなった。 本稿では、国内外の先行研究の知見から、精神疾患の教え方、精神医療の専門家の関わり方を検討した。また、心の健康問題の援助希求や援助行動を促すための介入の計画に必要な理論的枠組みを考察した。 学校の授業では、新学習指導要領に記載される内容を網羅し、「どのような症状を経験したら、どこに(誰に)、どのように相談することで抱えている心の健康問題の解決につながるのか」等の、適切な対処に関する具体的な情報の提供が必須である。また、実際の行動変容につなげるためには、学校での知識教育のみでは不十分で、地域全体での周囲環境の整備が求められる。 学校教育への精神疾患に関する授業の導入をきっかけに、学校内だけでなく周囲の大人も、若者の心の健康問題に関心を持ち、受け入れ、対応する力を高めることが望まれる。また、若者に対する早期介入のニーズに対応するためには、従来の学校保健や地域医療の枠組みに加え、新しいシステムが必要となるだろう。
著者
山合 洋人 早貸 千代子 菱山 玲子 北村 篤司 小塩 靖崇 佐々木 司 Hiroto YAMAAI Chiyoko HAYAKASHI
出版者
筑波大学附属駒場中・高等学校研究部
雑誌
筑波大学附属駒場論集 = Bulletin of Junior & Senior High School at Komaba, University of Tsukuba (ISSN:13470817)
巻号頁・発行日
no.58, pp.130-138, 2019-03

成人の精神疾患全罹患者のうち50%は思春期で発症するといわれている1).しかしながら,現行の教育課程では精神疾患とその対処に関する正しい知識を学ぶ機会がないために,本人も周囲も不調になったことに気付きにくく,本格的な病気の進行・長期化といった状態を招いている可能性が高い.そこで,中学生を対象に心の不調や病気の予防・早期発見・早期対応の正しい知識と対処法(=メンタルヘルスリテラシー.以下,MHL)に関する教育プログラムを実践し,その教育的効果について検討した.MHL 教育プログラム実施前後の自記式質問紙調査で「精神疾患と対処の知識」「援助希求行動及び援助行動の認識・意思」「心の不調時における相談先」のそれぞれにおいて数値の向上・改善が示され,教育的効果が認められた.
著者
北川 裕子 小塩 靖崇 股村 美里 佐々木 司 東郷 史治
出版者
日本不安障害学会
雑誌
不安障害研究 (ISSN:18835619)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.31-38, 2013-08-31 (Released:2014-01-31)
参考文献数
35

近年の日本では,いじめが原因と考えられる児童生徒の自殺が社会的に大きな波紋を起こしている。いじめは,被害側だけでなく加害側の児童生徒でも,不安・抑うつ,社会不適応,そして自殺問題と関連すると言われている。このような状況に鑑みて,効果的ないじめ対策教育の実施は喫緊の課題である。しかし,日本ではいじめ対策が各学校に任されたままであり,全国的な系統的いじめ対策プログラムが存在しない。また,効果検証がなされていない。そこで本研究では,日本におけるいじめ予防介入教育の構築に向けた一資料として,フィンランドの全国的ないじめ対策プログラムであり,その効果が大規模なRandomized Controlled Trial (RCT)により評価されている「KiVaプログラム」について紹介した。KiVaプログラムの効果として,いじめの減少,さらには児童生徒の不安・抑うつの低下,対人関係の改善などが確認されている。
著者
早貸 千代子 横尾 智治 小澤 富士男 菱山 玲子 徐 広孝 鈴木 清夫 関口 隆一 高橋 宏和 千野 浩一 土井 宏之 早川 和彦 山本 智也 小塩 靖崇 佐々木 司 小宮 一浩
出版者
筑波大学附属駒場中・高等学校研究部
雑誌
筑波大学附属駒場論集 = Bulletin of Junior & Senior High School at Komaba, University of Tsukuba (ISSN:13470817)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.159-169, 2016-03

心も体も大きな変化をもたらす10代は、精神疾患の好発時期といわれている。その要員として、夜更かし・睡眠不足等の生活習慣の乱れや、悩みや心配事を相談せず(できず)一人で抱え込む(援助希求をしない)等が指摘されている。現在の教育課程では、精神疾患とその対処に対する正しい知識を学ぶ機会がないために、本人も周囲も不調になったことに気付きにくく、本格的な病気の進行・長期化といった状態を招いている可能性が高い。そこで、本校の成長過程プロジェクト研究(以下、PI)では中学2年生を対象に、保健の授業の中で、心の不調や病気の予防・早期発見・早期対応の正しい知識と対応法(以下、メンタルヘルスリテラシー)の教育を試みた。授業前後で精神疾患の知識の向上と援助希求行動と援助行動の考えの改善が見られたのでここで報告する。