著者
薗田 啓之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1051-1053, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
8

脳は生物にとって最も重要な臓器の一つである.その機能を健全に保つため,脳血管には血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)が存在し,脳内への物質輸送を制限している.この機構のおかげで脳はその機能を維持できているわけだが,ひとたび脳疾患を患い薬物治療が必要になると,このBBBの存在が大きな障壁となる.つまり,脳の恒常性を維持するBBBによって必要な薬物までもが脳内への輸送をブロックされるのである.脂溶性低分子化合物の中には高い脳移行性を示すものもあるが,ペプチド・タンパク質等の親水性高分子はほとんど移行性を示さない.しかしながら,ペプチドやタンパク質であっても脳に必要な物質についてはBBBに存在する特別な輸送システムを介して能動的に輸送されることが分かっている.例えばインスリンやトランスフェリン等はBBBの実体である脳血管内皮細胞上の受容体を介して血液中から脳内へと輸送される.このような生体が元来持っている輸送システムを利用した脳内薬物送達技術の開発が世界中で行われている.本稿では,J-Brain Cargo®(JCRファーマ)を含む各種BBB通過技術について紹介する.

言及状況

外部データベース (DOI)

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これまでにプロドラッグ、ナノ粒子による輸送、脳室内投与、血液脳関門の破壊(!)など様々なアプローチがなされてきましたが、現在有望とされているのが血液脳関門に元々備わっている特定の分子の受容体を介した能動輸送システムを利用する方法です。 13/n https://t.co/M9B53FyGGb
@Masaya__2022 参考文献の一例 https://t.co/wzMloPtSGv
@terupurine @iga_2012 これ疑問ですね。 一般的に抗体は約0.1% が脳脊髄液中に移行するらしいです。 なので濃度上げてゴリ押しなんですかね? https://t.co/1Zjs5ly9FN
規模感が違えど、これも合成生物学だと思ってます。生命現象をハックした薬ですよね。 https://t.co/A4esLQBRD5
https://t.co/EaNlpoPci7 J-Brain Cargoの実体はレトロウィルスではないのだろうか? 特許出願を見るとタンパク質を主成分にした技術もJRCファーマから出願されてるが。。。
ペプチドリームとJCRファーマが、BBB透過性特殊環状ペプチドの創製に成功。 3年前のレビューだけど、ArmaGenのBBB透過技術では、抗体投与量の2-3%を脳に運べる。ペプチドリームの技術のコスト・使いやすさ・効果がどの程度か気になる。 https://t.co/61rlavzXUZ https://t.co/EWXKsBNaM3

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