- 著者
-
橋立 博幸
内山 靖
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.3, pp.367-374, 2007 (Released:2007-06-18)
- 参考文献数
- 34
- 被引用文献数
-
7
10
目的 本研究では,地域在住高齢者における応用歩行の予備能の定量的な評価指標を開発し,その有用性と日常生活活動(ADL)や生活範囲を含んだ生活機能との関連性を検討することを目的とした.方法 対象は地域在住高齢者107人(平均年齢72.6±5.0)とした.歩行機能検査としてTimed"Up and Go"Test(TUG),10m歩行時間,6分間歩行距離(6MD),Physiological Cost Index(PCI),Rating of Perceived Exertion(RPE)を実施した.また,日常生活活動の指標として老研式活動能力指標(TMIG-IC)を調査した.TUGは至適速度(TUGcom),最大速度(TUGmax)にて計測し,TUGmaxに対するTUGcomとTUGmaxの差の割合(TUG-R)を応用歩行の予備能の指標とした.結果 TUG-Rは級内相関係数ICC(1, 2)=0.82と高い再現性を示した.TUG-Rは6MD, PCI, RPEと有意な関連を示し,歩行の持久性および安楽性を反映していると考えられた.TUG-RはTMIG-IC手段的自立に障害のある高齢者では有意に低下しており,高い移動機能を要するADLへの関連性が示唆された.ロジスティック回帰分析の結果,屋外活動の遂行にはTUG-Rが有意に関連した.結論 応用歩行の予備能を示すTUG-Rは,指標の再現性が高く,歩行の持久性,および生活範囲等の生活機能と密接に関連する高齢者において重要な臨床指標であると考えられた.