著者
奥田 裕 荻野 禎子 小澤 佑介 原田 慎一 江連 亜弥 内山 靖
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.357-362, 2006 (Released:2007-01-11)
参考文献数
22
被引用文献数
20 12

臨床的体幹機能検査(FACT: Functional Assessment for Control of Trunk)を開発し,信頼性を明らかにすることを目的とした。FACTは体幹にかかわるパフォーマンスの可否を判定するもので,10項目20点満点で構成されている。脳卒中者23例を対象として,理学療法士5名でペアを作り,別々にFACTを実施した。検者間信頼性について,合計点では級内相関係数(2,1),項目毎の合致率は%と κ係数を用いて検討した。内的整合性はクロンバックの α係数を用いた。合計点は検者間で高い信頼性を認めた(ICC(2,1)=0.96)。項目毎では87~100%の一致率が示され, κ係数は0.62~1で臨床導入が可能な信頼性を有することが示された。また,クロンバックの αは0.81であった。FACTは体幹機能をパフォーマンスによる得点尺度で捉えることができ,治療指向的な検査法の一つとして臨床,研究両分野での適用が期待される。
著者
奥田 裕 荻野 禎子 小澤 佑介 原田 慎一 江連 亜弥 内山 靖
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.357-362, 2006-11-20
参考文献数
22
被引用文献数
4 12

臨床的体幹機能検査(FACT: Functional Assessment for Control of Trunk)を開発し,信頼性を明らかにすることを目的とした。FACTは体幹にかかわるパフォーマンスの可否を判定するもので,10項目20点満点で構成されている。脳卒中者23例を対象として,理学療法士5名でペアを作り,別々にFACTを実施した。検者間信頼性について,合計点では級内相関係数(2,1),項目毎の合致率は%と &kappa;係数を用いて検討した。内的整合性はクロンバックの &alpha;係数を用いた。合計点は検者間で高い信頼性を認めた(ICC(2,1)=0.96)。項目毎では87~100%の一致率が示され, &kappa;係数は0.62~1で臨床導入が可能な信頼性を有することが示された。また,クロンバックの &alpha;は0.81であった。FACTは体幹機能をパフォーマンスによる得点尺度で捉えることができ,治療指向的な検査法の一つとして臨床,研究両分野での適用が期待される。<br>
著者
網本 和 内田 賢 内山 靖 大城 昌平 金谷 さとみ 酒井 桂太 福井 勉 山田 英司 横田 一彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.812-817, 2020-07-15

内山 本日は理学療法教育をめぐる現状を共有し,今後の展望について意見交換したいと思います. まず,教育関係者の共通認識として主要な行政文書を確認しておきます.2月28日付の文部科学省・厚生労働省の事務連絡として「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う医療関係職種等の各学校,養成所及び養成施設等の対応について」が出され,在学中の学生に不利益が生じないよう,迅速かつ弾力的な対応が示されています.
著者
江連 亜弥 原田 慎一 小澤 佑介 荻野 禎子 奥田 裕 内山 靖
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.147-150, 2010 (Released:2010-03-26)
参考文献数
18
被引用文献数
12 6

〔目的〕本研究は,脳卒中片麻痺者の体幹機能と日常生活活動との関係を明らかにすることを目的とした。また麻痺側機能との関係,FIMの運動項目,認知項目との比較,病巣別による体幹機能の違いも検討した。〔対象〕回復期脳卒中片麻痺者56名(平均年齢66.3±10.7歳)とした。〔方法〕体幹機能は臨床的体幹機能検査(Functional Assessment for Control of Trunk,以下FACT)を,ADLはFIMを,麻痺側機能はBrunnstrom recovery stageを用いて評価した。〔結果〕FACTとFIM合計は非常に高い相関が得られた。FIMの認知項目では体幹のみ高い相関が得られた。病巣別では中大脳動脈起始部,被殻,視床の病巣部位を比較したが,視床は体幹との相関がみられなかった。〔結語〕脳卒中片麻痺者のADLには麻痺側機能よりも体幹機能との関係が強いこと,認知機能とも関係があること,病巣により体幹機能が異なることが示唆された。
著者
吉田 剛 内山 靖 熊谷 真由子
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.143-150, 2003-12-30 (Released:2020-08-21)
参考文献数
16
被引用文献数
1

目的:嚥下時の喉頭運動が片麻痺や異常姿勢による頸部周囲筋の筋緊張異常により二次的にも阻害されうることに注目し,喉頭位置と喉頭挙上筋の筋力に関する臨床的指標を開発した.本研究の目的はこれらの指標の信頼性を検証し,臨床導入の可能性を模索するために,健常人の加齢・性差による影響を含めた基礎資料の獲得と,慢性期脳血管障害 (CVD) 患者との比較から開発した指標の臨床的有用性を明らかにすることである. 方法:対象は健常者,高齢者,CVD患者の109名であった.そのうち,検者内および検者間信頼性の検証は,嚥下障害のあるCVD患者10名を対象とし,加齢変化と性差の影響の検証は,健常若年者群30名と,高齢者群17名,CVDの有無については,高齢者群17名と慢性期CVD嚥下障害なし群20名,嚥下障害の有無については,慢性期CVD嚥下障害なし群20名とあり群32名を対象として各2群間を比較した.測定項目は,相対的喉頭位置を求める指標として,頸部最大伸展位でオトガイから甲状軟骨上端間距離GT,甲状軟骨上端から胸骨上端間距離TS,この2つの指標からGT/(GT+TS)を算出することによる相対的喉頭位置 (以下,喉頭位置) とし,喉頭挙上筋の筋力は頭部最大屈曲位での保持能力を頭部落下程度で4段階に分けるGSグレードとした. 結果および考察:検者内信頼性ICC (1,1) は,GT=0.943,TS=0.837,GSグレードは100%の一致率であった.検者間信頼性ICC (2,1) は,GT=0.905,TS=0.926,GSグレード=0.943であり,測定の信頼性は高かった.健常若年者群では,GT=6.4±0.9cm,TS=12.2±1.0cm,喉頭位置=0.34±0.04,高齢者群では,GT=6.6±1.0cm,TS=9.5±1.1cm,喉頭位置=0.41±0.05であった.以上より,加齢によりTSが短縮することで喉頭位置が下降することが明らかとなった.性差については健常若年者群でGTのみ有意差がみられた.また,CVDの有無による有意差はみられなかったが,嚥下障害の有無では,慢性期CVDにおいてTS,喉頭位置,GSグレードに有意差が認められ,本指標の臨床的有用性が示唆された.
著者
春田 みどり 水田 洋平 伊藤 隆安 太田 進 内山 靖
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.661-666, 2016 (Released:2016-10-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1

〔目的〕内側型変形性膝関節症患者における身体アライメントの特徴を明らかにし,アライメントと身体機能との関連性を明らかにすることとした.〔対象と方法〕内側型変形性膝関節症患者25名と対照群とする健常高齢者20名とした.身体アライメント,関節可動域,筋力,5 m歩行時間,片脚立位時間を群間で比較した.〔結果〕内側型変形性膝関節症患者の身体アライメントは頭部前方突出,腰椎屈曲,骨盤後傾,体幹前傾,膝関節内反位で,腰椎屈曲と体幹前傾には背筋力低下との関連性がみられた.〔結語〕内側型変形性膝関節症患者でみられる体幹アライメントの変化は,体幹アライメントと身体機能との相互の関連性を示している.
著者
橋立 博幸 内山 靖
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.367-374, 2007 (Released:2007-06-18)
参考文献数
34
被引用文献数
7 10

目的 本研究では,地域在住高齢者における応用歩行の予備能の定量的な評価指標を開発し,その有用性と日常生活活動(ADL)や生活範囲を含んだ生活機能との関連性を検討することを目的とした.方法 対象は地域在住高齢者107人(平均年齢72.6±5.0)とした.歩行機能検査としてTimed"Up and Go"Test(TUG),10m歩行時間,6分間歩行距離(6MD),Physiological Cost Index(PCI),Rating of Perceived Exertion(RPE)を実施した.また,日常生活活動の指標として老研式活動能力指標(TMIG-IC)を調査した.TUGは至適速度(TUGcom),最大速度(TUGmax)にて計測し,TUGmaxに対するTUGcomとTUGmaxの差の割合(TUG-R)を応用歩行の予備能の指標とした.結果 TUG-Rは級内相関係数ICC(1, 2)=0.82と高い再現性を示した.TUG-Rは6MD, PCI, RPEと有意な関連を示し,歩行の持久性および安楽性を反映していると考えられた.TUG-RはTMIG-IC手段的自立に障害のある高齢者では有意に低下しており,高い移動機能を要するADLへの関連性が示唆された.ロジスティック回帰分析の結果,屋外活動の遂行にはTUG-Rが有意に関連した.結論 応用歩行の予備能を示すTUG-Rは,指標の再現性が高く,歩行の持久性,および生活範囲等の生活機能と密接に関連する高齢者において重要な臨床指標であると考えられた.
著者
山路 雄彦 渡邉 純 浅川 康吉 臼田 滋 遠藤 文雄 坂本 雅昭 内山 靖
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G0540, 2005

【目的】<BR>2002年度より理学療法における客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination)(以下、理学療法版OSCE)を開発・実施し、その有用性を報告してきた。理学療法版OSCEは評価を中心としたものであるが、運動療法、物理療法、ADL指導など治療を含めた内容でのOSCEも必要である。本研究では、治療場面を含めた理学療法版advanced OSCEの基本的構築および学外評価者の試行の妥当性を検討することを目的とする。<BR>【方法】<BR>課題は大腿骨頸部骨折と左片麻痺を有する対象者の4課題とした。課題1は徒手筋力テストと筋力増強運動、課題2はトランスファーと物理療法、課題3は立位評価と平行棒内歩行練習、課題4はトランスファーと更衣動作(上衣)として、評価と治療を組み合わせて構成した。評価者は学内評価者(本専攻教員)8名と学外評価者(本学以外養成校の教員)3名、模擬患者は4名で実施した。学外評価者3名は、ステーション1、ステーション3、ステーション4に配置し、学内評価者と共に同一学生を評価した。対象は、総合臨床実習直前の本専攻4年生23名とし、平成15年7月24日に実施した。運営はマニュアルを用いて行った。なお、学外評価者とは事前の打ち合わせは行わず、当日にマニュアルを配布して簡単な説明を実施して試験に加わった。平均点、課題別一致率、同一ステーション・同一課題における一致率を算出し比較、検討を行った。<BR>【結果および考察】<BR>総合点の平均は、400点満点中300.7点であり、評価を中心とした前年度の313.7点と有意な差は認めなかった。課題別一致率は、課題1:66.6%、課題2:55.7%、課題3:60.9%、課題4:60.2%であった。同一ステーション・同一課題別一致率では3ステーション4課題で59.0%、52.0%、54.9%、55.6%であった。これは理学療法版advanced OSCEの難易度は従来のものと変わらないものの、評価者個人の治療感の相違から評価が一致しない可能性が高いことによるものと考えられる。今後、評価基準の見直しとともに個々の治療感の相違を緩衝することが必要であると考える。また、同一ステーション・同一課題別一致率では学外評価者の配置された3ステーション中2ステーションで、学内評価者、学外評価者に有意な差を認めなかった。このことは、理学療法版advanced OSCEにおいても準備を整えれば学外の複数の評価者でも学生を客観的に評価することができることを示唆していた。
著者
枡 良充 内山 靖 恩幣 伸子 山田 美加子 榎本 香織 軍司 晃
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.67-72, 1998 (Released:2007-03-29)
参考文献数
13

階段昇降時の動作特性を明らかにする事を目的として,F-SCANを用い足圧中心の移動軌跡を健常人・患者25名に対して測定し,以下の結果を得た。健常人の階段昇降動作での足圧中心の移動軌跡は,前足部から踵方向へ移動後,再び前方へ移動する戻り型(Aタイプ)と,平地歩行と類似したの前方向型(Bタイプ)に大別された。健常人の降段動作での足圧中心の軌跡は全てAタイプで,昇段に比較して左右への変位を認めた(p<0.01)。一方,昇段ではA・Bの両タイプがみられた。患者では,降段動作の障害がより顕著で,機能改善とともに健常人の足圧中心の軌跡波形に近付く傾向が観察された。また,杖は立脚期を安定化させる役割があることが客観的に示された。階段昇降時の動的足圧を測定する事により,降段動作の姿勢制御の複雑さの一端が明らかとなった。
著者
樋口 大輔 新谷 和文 内山 靖
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.533-539, 2007 (Released:2008-01-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1

頚髄症に対する理学療法評価項目とその判定基準を提示することを目的とした。頚髄症者55人を対象に,代表的な評価指標の中から下位項目ごとの度数分布を示し,下位項目間の関連性を検証した。その結果,手指巧緻運動障害および歩行障害は,自立度のみではなく,動作の円滑性や困難度を含めた機能・能力を評価することが適切であった。また,感覚障害は体幹の感覚障害の有無や日常生活活動への影響を考慮することが必要であることが示された。膀胱直腸障害は,排尿の開始遅延や頻尿の有無をまず聴取すべきである。今後は,これらの評価項目に基づき,頚髄症に対する効果的な理学療法を実践していくための障害構造および介入課題の検証を進める必要がある。
著者
島田 裕之 内山 靖
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.61-67, 1999 (Released:2007-03-29)
参考文献数
25

本研究は運動機能障害を有する患者に対して心拍数の測定による歩行耐久性の評価を行い,短距離歩行と長距離歩行時の生理応答の違いを明らかにした。さらに,長距離にわたって荷物を持つことが生体に及ぼす影響を明確にし,歩行障害度との関係を比較・検討した。その結果,健常者,患者ともに歩行開始直後の短距離(50m)の歩行速度と長距離(1km)での歩行速度とは相関しなかった。患者が長距離歩いたときの心拍応答は直線あるいは対数関数的に上昇を示し,特に機能障害の重度な患者では歩行距離が伸びると歩行効率は低下し,身体にかかる負荷が増大する結果となった。また,荷物を持つことにより健常者,患者ともにPCI,%HRRは有意に上昇し,歩行速度は低下し,機能障害の重度な患者ほど応答的課題に対する生理応答の変化は大きかった。以上の結果から,理学療法の臨床では実際の長距離歩行を詳細に検討することが重要であると考えられた。
著者
臼田 滋 内山 靖 原田 和宏 松葉 好子 青山 誠 永冨 史子 半田 一登
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【目的】日本理学療法士協会は平成24年度厚生労働省老人保健健康増進等国庫補助金事業として「病期・職種を問わず使用できるリハビリテーション評価指標作成事業」を実施した。本演題では,本事業のデルファイ法を用いた評価指標項目の精選と試作したリハビリテーション評価指標を報告する。【活動報告】病期・職種・疾患の違いに関わらず,患者・利用者の状態像を縦断的に評価するために必要な評価指標項目を精選するために,3回の調査で構成されるデルファイ法を用いた。対象は,臨床経験年数が10~20年の理学療法士120名,作業療法士60名,言語聴覚療法士20名の計200名で,関与する病期と勤務地域に偏りが生じないように配慮した。round1では事前に提示した評価指標120項目に対する必要度(5段階Likert scale)と追加項目を調査した。round2とround3では前回の調査結果を提示した上で,必要度を調査した。それぞれ対象の70%,80%以上が必要と回答した項目を精選した。3回の有効回答率は91.5%,84.5%,81.0%であった。round1にて92項目が追加され,round2で50項目,round3で最終的に22項目が精選された。10分以内に評価でき,結果を多職種で共有できること目指し,最終的に活動・参加の8項目(実行状況と能力),心身機能の7項目の計15項目から構成される評価指標を試作した。各項目について0~4点の5段階評定を採用した。【考察】評価指標項目を科学的な手続きを経て精選し,評価指標を試作することができた。多角的な検証を踏まえ,簡便に患者・利用者の状態像を把握でき,病期や疾患を問わず多職種間で共有しやすい指標となった。今後は,病期別,疾患別の検証や,縦断的な検証が必要である。【結論】デルファイ法を用いて病期・職種を問わず使用できるリハビリテーション評価指標を試作した。
著者
内山靖 松田 尚之 菅野 圭子 種物谷 由美 佐野 克哉 長澤 弘 石川 潤 山本 明美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.313-320, 1988
被引用文献数
3

運動失調症においては, 種々の協調障害がいかなる能力障害を引きおこすかを整理する事が重要である。このような視点より, 以下の事が結論づけられた。(1)躯幹協調機能は, 移動能力をはじめとするADLとの相関が高く, 機能障害のなかで独立して扱う必要性が認められた。(2)上記に基づき, 躯幹協調機能ステージは, 臨床的にも簡便で正確な評価が可能であった。(3)坐位重心動揺結果は躯幹協調機能ステージとの関係が密接で, 立位重心動揺における結果も含めた解析を行うと, より有効な解釈が可能となった。(4)上記より, 運動失調症における機能障害分類の重要性と, それに基づく合目的理学療法の必要性が示された。
著者
春田 みどり 大矢 敏久 太田 進 内山 靖
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Aa0881, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 加齢変化により頭部の前方突出を呈することが知られている。また、頸部痛では頸部の屈曲の程度が強いことや、頸部の位置と顎関節の機能に密接な関連があるとの報告がされている。これまで、姿勢評価として胸椎や腰椎の彎曲角度を測定する方法は数多く報告されているが、頸椎では、頭部や頸部の屈伸角度を測定するものの頸椎の彎曲を測定することは少なく、非侵襲的な測定方法は確立していない。そこで本研究では、非侵襲的で臨床適用が容易でかつ信頼性の高い頸椎彎曲の測定方法を検証することを目的とする。【方法】 対象者は健常大学生10名(年齢23.6±3.0歳)であった。頸椎彎曲の測定は3方法で行った。方法1(以下;「二次元法頸椎彎曲角度」)は、ビデオカメラによる二次元動作解析により頸椎彎曲角度を算出した。被験者は7か所にマーカーを装着し、5秒間前方の印を注視して座位を保持し、ビデオカメラ1台にて計測した。方法は、Kuoの方法に準じて行った。第2・5・7頸椎棘突起を結ぶ角度を頸椎彎曲角度とした。また、鼻翼・耳孔・第1胸椎棘突起を結ぶ角度を頭部伸展角度、耳孔・第一胸椎棘突起・胸骨丙を結ぶ角度を頸部伸展角度とし、頭・頸部のアライメントの指標とした。方法2(「ゲージ法彎曲指数」)は、型取りゲージを用いて第2頸椎棘突起から第7頸椎棘突起の形状を計測し、彎曲の頂点の高さを第2・7頚椎棘突起の距離で割った値を頸椎彎曲指数とした。方法3(「定規法彎曲指数」)は、自在曲線定規を用いて「ゲージ法彎曲指数」と同様に頸部後面の形状を計測し、頸椎彎曲指数を算出した。3方法を異なる日に同様に測定を行い、再現性を検討した。統計処理は、級内相関係数(ICC)を用いた。3方法から算出した各測定値と頭・頸部伸展角度との相関はPearsonの相関係数を用い、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 所属施設生命倫理審査委員会の承認を得た上で行った。被験者には、個別に研究内容の説明を行い文書により同意を得た。【結果】 3方法から算出した各測定値は、「二次元法頸椎彎曲角度」は160.3±8.1°、「ゲージ法彎曲指数」は0.1±0.0、「定規法彎曲指数」は0.1±0.0であった。検者内のICCは、「二次元法頸椎彎曲角度」は0.72、「ゲージ法彎曲指数」は0.84、「定規法彎曲指数」は0.55であった。また、二次元法の頭部伸展角度は106.3±10.2°(ICC 0.93)、頸部伸展角度は89.0±6.0°(ICC 0.71)であった。「二次元法頸椎彎曲角度」は頭部伸展角度と負の相関(r=-0.7)、「ゲージ法彎曲指数」と頭部伸展角度は正の相関(r=0.7)がみられたが、頸部伸展角度ではいずれの彎曲角度・指数とも有意な相関関係はみられなかった。【考察】 「二次元法頸椎彎曲角度」と「ゲージ法彎曲指数」では高い再現性が得られた。各測定値と頭・頸部伸展角度の相関関係は、「二次元法頸椎彎曲角度」では頭部伸展角度と負の相関関係、「ゲージ法彎曲指数」では頭部伸展角度と正の相関関係が認められ、頸椎の彎曲が大きいほど頭部が伸展することが示された。よって「二次元法頸椎彎曲角度」と「ゲージ法彎曲指数」は、頭部伸展に伴う頸椎彎曲のアライメント変化を表している可能性が考えられる。「二次元法頸椎彎曲角度」は、二次元動作解析を用いて頭部や胸椎、腰椎、下肢の関節を全身のアライメントを測定する際に同時に頸椎の彎曲を測定することが可能であるという点で有用であると考える。高齢者の姿勢変化を脊柱変形のみでなく頭部位置にも注目した報告があり、加齢による姿勢の変化は、胸椎や腰椎のみだけでなく頸椎にも及んでいると考えられる。そのため、加齢による姿勢変化を胸椎や腰椎のみの測定だけでなく頸椎彎曲角度を測定することで新たな知見を得ることが出来ると考える。「ゲージ法彎曲指数」は、3方法のうち最も再現性が高く、より簡便であったため頸椎のアライメントを測定する際には、臨床適用が容易な方法である。頸部痛や顎関節機能障害などにおいて頭頸部の水平軸に対する傾きを評価指標にすることが多いが、頸椎の彎曲アライメントを測定することで新たな知見を得ることが出来ると考える。今後、X線画像によって計測した頸椎彎曲角度との比較などから妥当性を検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 臨床適用が容易で非侵襲的な頸椎の彎曲角度を作成するための基礎資料が得られ、加齢による姿勢変化を呈する高齢者の姿勢評価や治療法への発展が期待できる。
著者
島田 裕之 内山 靖
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.38-46, 2001-03-31
被引用文献数
17

高齢者に対する運動介入を行い, 姿勢バランス機能が向上するかを検討し, 運動の種類の違いによって改善する機能に特異的な反応が生じるか明らかにすることを目的とした。対象は施設を利用する後期高齢者34名(平均年齢80.8±6.6歳)で, これらの対象を無作為にコントロール群, 静的バランス練習群, 動的バランス練習群に分類した。運動による介入は週2から3回の頻度で12週間継続して行った。バランス検査は全被検者に対し運動開始前, 終了時, 終了から12週間後に行った。介入群では静的・動的バランス検査, 歩行検査, 応用動作検査の全ての要素に関して機能の改善が認められ, それらの多くの機能が運動終了後にも保持されていた。コントロール群では, 最初の12週間で機能変化は認められなかったが, 24週後には姿勢バランス機能の低下が認められた。また, 介入の方法によって改善する機能は変化し, 静的バランス練習では片足立ち保持時間の延長やFunctional Reach Testの向上が認められた。一方, 動的バランス練習ではTimed Up and Go Testにおける歩行時間の短縮と, 階段を降りる所要時間が短縮した。本研究の結果から, 維持期高齢者に対する運動介入は効果的であり, 改善する機能は運動の種類に対応することから, 総合的な評価を行うことで効率的な運動処方の作成が可能であると考えられた。また, 両群に共通してFunctional Balance Scaleが改善し, 介入の効果判定に有益な指標となる可能性が示唆された。
著者
内山 靖
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

薄暗い視覚環境下では、 明所と比較して姿勢調節機構が低下しており、むしろ閉眼時よりも姿勢調節の緻密さが低下していた。また、視認性が低下しているにもかかわらず、明所と類似した歩行戦略を選択していることが明らかとなった。本研究から、薄暗い環境では姿勢調節にかかわる情報処理過程が複雑であるために機能不全が顕在化しやすく、これらの点から臨床評価指標を開発することの妥当性が示唆された。