著者
原 修一 三浦 宏子 山﨑 きよ子 森崎 直子 角 保徳
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.391-398, 2015-10-25 (Released:2015-12-24)
参考文献数
22

目的:介護施設に入所する高齢者を対象とした横断研究により,健康関連QOLと音響学的分析による音声機能との関連性を明らかにした.方法:対象は,介護老人施設に入所する高齢者61名,平均年齢82.1±8.3歳である.質問紙による健康関連QOLの調査を,SF-8 Health Survey(SF-8)日本語版を用いて実施した.音声機能は,ソリッドステートレコーダーに録音した音声を,音響分析ソフトを用いて,基本周期変動指数(Pitch Period Perturbation Quotient:PPQ),振幅変動指数(Amplitude Perturbation Quotient:APQ)および,雑音成分の指標であるNoise-to-Harmonic Ratio(NHR)を算出し,健康関連QOLとの関連性を分析した.結果:SF-8の全体的健康感(GH)の得点が25%tile値未満の値を示した者(低下群)はPPQ・APQ・NHR全てにおいて,25%tile値以上の者(維持群)と比較して有意に高い値を認めた.また,活力(VT)においても,低下群は全ての音響分析の項目において,維持群と比較して有意に高い値を認めた.また,身体的サマリースコア(PCS)においても,低下群は維持群と比較して音響分析の測定項目全てにおいて,有意に高い値を認めた.年齢を共変量とした共分散分析による検討では,GHの低下はPPQ,APQ,NHR各値の増加と有意な関連性を認めた.また,VTの低下はAPQ値の増加との有意な関連性を,PCSの低下はAPQとNHR各値の増加との有意な関連性を認めた.結論:介護施設入所高齢者において,音響学的に分析された音声の音響学的要因は,身体的健康状態に関連したQOLスコアと有意な関連性を示した.音声の音響分析によるPPQ,APQ,NHRは,高齢者の健康調査とその経過を追跡する上で,一つの評価指標になりうる可能性がある.

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