- 著者
-
荒木 厚
井藤 英喜
- 出版者
- 一般社団法人 日本老年医学会
- 雑誌
- 日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.1-12, 2018-01-25 (Released:2018-03-05)
- 参考文献数
- 71
- 被引用文献数
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4
「高齢者糖尿病の診療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」によって作成された「高齢者糖尿病ガイドライン2017」のエッセンスを紹介し,解説を加えた.高齢者糖尿病では認知機能や身体機能の障害がおこりやすく,それらの評価を含む高齢者総合機能評価を行うことが大切である.高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)は認知機能,ADL,併発疾患,重症低血糖のリスクなどに基づいて設定する.食事療法は過栄養だけでなく,低栄養,サルコペニアなどを考慮して行い,タンパク質やビタミンなどを十分に摂取する.運動療法は身体活動量を増やし,有酸素運動だけでなく,レジスタンス運動やバランス運動を行うことが望まれる.薬物療法は低血糖および他の有害事象を防ぐため,個々の心身機能や病態に十分配慮して行い,低血糖やシックデイの対策を行う.アドヒアランス低下や多剤併用にも注意する.今後,認知機能の簡易な評価法の開発,介護施設入所者の糖尿病のエビデンスの集積,および大規模なレジストリー研究などを行うことが,ガイドラインのさらなる発展のために必要である.