- 著者
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森嶋 俊行
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
- 巻号頁・発行日
- vol.84, no.4, pp.305-323, 2011-07-01 (Released:2015-09-28)
- 参考文献数
- 39
- 被引用文献数
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本稿の目的は,近代化産業遺産保存活用の動きが広まる過程を分析することにより,鉱工業都市の脱工業化段階での都市構造や産業構造の再編に対し,中核企業と地域各主体の関係がどう投影されるかを論じることである.具体的な事例として大牟田・荒尾地域における石炭産業関連近代化産業遺産の保存活用運動を挙げ,これを検討した.当該地域における近代化産業遺産保存活用の実践は,産業特性や立地の条件によってもたらされる地域産業構造変化に加え,中核企業の歴史的な起源と地域政策に左右され,中核企業による遊休不動産処分施策に対応するかたちで進行した.保存活用運動に関連する主体は,当初は企業や自治体であったが,後にNPOや地域住民も参加するようになった.これらの主体は,「国家」「地域」「経済」「文化」といった観点から価値を主張するようになった.近代化産業遺産に対するまなざしの変化と多元化は,地域経済の変化とあいまって,保存活用の実践形態の多様化に作用した.