著者
矢崎 真澄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.101-115, 2003-02-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
12
被引用文献数
3 1

本研究は,沿岸漁民の漁場認知に関する主体的環境の多様性について実証的に明らかにすることを目的としたものである.そのため本研究では,漁民が「シマウチ(シマナカ)」と通称する伊豆半島東南部と伊豆大島および新島によって囲まれた海域を対象地域とした.従来,沿岸漁民にとって最も重要な魚礁を中心とした漁場の認知に関する実証的研究はほとんど行われることがなかったためである.「シマウチ(シマナカ)」の海域における大陸棚は,伊豆大島南西や「オオムロダシ」と呼ばれる広範囲の漁場を除いては,幅が狭く,棚端からは500m以上の急深になっている.この海域には,多様な漁場が存在し,207の漁場が確認された.この海域においては半島と島嶼の漁業集落間だけでなく,隣接する漁業集落間においても,全く同一の漁場を異なる呼称で認知している事例を多数確認した.漁場は物理的に同一位置にあっても,異なる漁民集団の共有するそれぞれの漁場認知体系の中で名付けられている.漁場の認知の方法は,地形の知覚像に依拠する場合が多い.漁民の漁場認知にみられる重層性はそれぞれの漁業集落を起点とした漁場体系が,重なり合っているためといえる.

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【地理学評論掲載論文】矢崎真澄 2003.沿岸漁民による漁場認知の重層性に関する研究-伊豆半島東南方「シマウチ(シマナカ)」海域の場合,地理学評論76,101-115.https://t.co/sl8o4tfzyb

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