著者
本田 智子 今村 徹
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.237-242, 2019-06-30 (Released:2020-07-06)
参考文献数
23

症例は 57 歳, 右利き男性。兄には左利きの矯正歴がみられた。右頭頂後頭葉皮質下出血発症 4 週時点で左半側空間無視, 構成障害, 着衣失行を認めた。音声言語の理解, 表出および読字には問題なかったが, 漢字書字に障害がみられ, 無反応, 部分反応, 存在字近似反応などの純粋失書と思われる反応に加えて, 文字の構成要素はすべて書き出されているが空間配置が乱れた構成失書がみられた。小学校 1, 2, 3 年生の教育漢字から無作為に選択した 51 文字の書取と写字では, 純粋失書は写字で著明に減少したが, 構成失書は書取と写字で同程度の割合でみられ, 偏と旁など, 部首と部首との空間配置が乱れる場合と, 1 つの部首を構成する字画の主要なまとまり同士の空間配置が乱れる場合とがあった。近年, 右半球損傷による構成失書の症例がいくつか報告されている。構成失書は従来指摘されてきた左頭頂葉病変以外にも, 非定型側性化を背景に有する右半球病変で出現する可能性がある。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 2 favorites)

#寝る前に論文読む 本田智子、今村徹/右半球損傷により純粋失書と構成失書を呈した一例 https://t.co/QDqQj3SyrG 漢字の筆順や字画は正しく再現できるのに、部分部分の空間配置だけがうまく構成できないという書字障害の例。こうした構成失書について、さらなる検討が必要であるとする。

収集済み URL リスト