著者
飯島 勇人
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.19-28, 2018 (Released:2018-07-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1

都道府県におけるニホンジカ管理の方針を記した特定鳥獣管理計画(ニホンジカ)を整理し、現在のニホンジカ管理の問題点を検討した。多くの計画でニホンジカの個体数に関する定量的な目標が設定されており、個体数推定の方法として階層モデルが最も多く採用されていた。しかし、事前分布やモデル構造、事後分布について説明している計画はなく、参照可能な文献も示されていなかったことから、推定の妥当性を評価することができなかった。農林業被害や生態系への影響については定性的な目標が多かった。特に、生態系への影響に関する定量的な目標を設定していたのはわずか2計画であった。モニタリング項目としては天然林の下層植生を挙げていた計画が多かったが、定量的な影響把握はほとんど行われていなかった。また、他の影響についてモニタリングしていた計画は少なかった。計画を審議する会合は多くの計画で明記されていたが、行政などから独立した科学者による評価機関が存在したのは7計画のみであった。このため、現在のニホンジカ管理に関する計画は、個体数については目標の根拠となる推定の妥当性検証に関する記述が十分でないこと、農林業被害や植生への影響については管理による効果を検証する体制となっていないことが明らかとなった。計画の改定時には、記述内容について文献を引用するなどして信頼性を高める ことが重要である。

言及状況

外部データベース (DOI)

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特定鳥獣管理計画に基づく各都道府県のニホンジカ個体群管理: 現状と課題。飯島 2018 (日本語論文、オープンアクセス) https://t.co/K5DXhe2huq シカの個体数推定や、シカによる農作物被害や植生被害の定量的なモニタリングなどに改善すべき点があるとのことです。

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