著者
平井 啓之 本多 清志 藤本 一郎 島田 育廣
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.296-304, 1994-04-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
12
被引用文献数
2

音声の基本周波数(F_0)の変化に伴う喉頭軟骨の位置変化を観測して、F_0調節の生理機構を考察した。F_0上昇の生理機構は主に輪状甲状筋の活動によって行われることがよく知られているが、F_0の下降については輪状軟骨の弛緩だけでは説明できない問題があり、現在でも明らかにされていない。本研究では、F_0下降の生理機構の理解を目標として、磁気共鳴装置(MRI)を用いて約1〜1.5オクターブのF_0範囲で持続発声を行ったときの喉頭の正中矢状断面の撮像を行った。複数の被験者の断層像より喉頭周囲構造の輪郭を抽出した。結果、F_0の昇降におおむね従う喉頭の上下動などの形態変化が観測された。F_0下降においては喉頭の下降に伴い輪状軟骨が回転する現象が観測された。これは声帯を短縮させる方向への回転であり、輪状軟骨の後板が頚椎の自然湾曲に沿って移動する結果生ずるものである。F_0下降に伴う喉頭下降の現象や外喉頭筋の活動の理由はこの生理機構により説明できると考えられる。

言及状況

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[首のカーブによって声帯の動きも変わる?] 声帯を囲う「輪状甲状関節」の一部である「輪状軟骨」は首のカーブに沿って傾き方が変わる可能性があるという話。 →上に位置すれば後ろに傾き →下に位置すれば前に傾く 参考論文↓ https://t.co/ieQQvmuAgs https://t.co/QWwDjPbDZb
F0調節の生理機構に関する磁気共鳴画像(MRI)の分析 https://t.co/fxuNWGoW21 “喉頭の高さの変化は1オクターブ当たり,被験者Aでは19.4mm,被験者Bでは29.9mm,被験者Cでは10.8mm”
持続発声における舌骨、甲状軟骨、輪状軟骨、頸椎の動きを述べた論文がありました。 「頸椎の自然湾曲による輪状軟骨の回転」 というのは考えたことが無かった。 喉以外からも変化を出せるってことの1つの指標になりそう。 https://t.co/ieQQvmLDis

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