著者
星 瑞希 鈩 悠介 渡部 竜也
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.25-37, 2020 (Released:2021-07-11)
参考文献数
14

知識偏重の歴史教育に代わるアプローチとしての「歴史する」授業は歴史学の学問的アプローチの再現とする傾向が見られる。本稿では,保苅実による歴史学の方法論をめぐる議論,レヴスティクとバートンによる歴史教育の議論の分析を通して,「歴史する」の捉え方の位相の差異を示し,「歴史する」を歴史学の学問的アプローチに一元化してしまうことの課題について考察を行う。保苅とレヴスティクらは,歴史学の学問的アプローチのみならず社会には多様な歴史実践が存在することを認め,それらを多元的社会や参加民主主義といった理想的な社会の実現と関連させ論じる点において共通している。彼らの論を踏まえれば,学問的アプローチへ一元化することの課題は,(1)学問的であるとみなされない人々の語りを排除してしまい,多元的社会や参加民主主義の実現に逆行するおそれがあること,(2)子どもたちの歴史を学ぶ意味を満たしにくくなる可能性があることである。

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