著者
吉村 泰幸
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.277-299, 2021-07-05 (Released:2021-08-03)
参考文献数
281

ベンケイソウ型有機酸代謝(CAM)型光合成は,水分の損失を最小限に抑えた代謝経路であり,近年,温暖化する気候条件下に対して安定した収量を確保する農業生産の一つの手段として,圃場試験も進められている.この代謝を持つ植物は高温・半乾燥地帯の景観を占めるが,熱帯林や亜熱帯林の着生植物,高山植物,塩生植物,水生植物としても確認されており,現在,地球上の様々な環境下で生育している.よって日本においてもCAM植物が自生し,農業利用に適用できる可能性もあるが,国内に自生する植物種やその生育地についての情報はほとんどない.そこで本研究では,国内外の文献を元に国内に分布するCAM植物種を抽出し,特に,その生育環境について検討した.その結果,日本においても,岩場,海岸,山草地,畑・路傍,極相林,貧栄養湖等にCAM植物が生育していた.栽培種を含め国内に分布するCAM植物は,ヒカゲノカズラ植物門ミズニラ科の5種,シダ植物門ウラボシ科3種,イノモトソウ科1種,マツ門(裸子植物門)ウェルウィッチア科1種,被子植物では,モクレン類コショウ科1種,単子葉類7科25属86種,真正双子葉類11科53属140種で,合計23科83属237種であった.そのうち栽培されている種が185種と全体の約8割を占め,在来種も56種の分布が確認されたが,ほとんどの種は,岩場や海岸など厳しい水分環境下で生育していた.また,帰化種も33種確認されたが,海外で確認されているアカネ科等におけるCAM型光合成を持つ種は確認できなかった.

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『近年,地球温暖化による干ばつ,高温化による農業生産 への影響が危惧されており,このような環境下で安定した 収量を得ることができる農業が求められている』 日本国内に分布する CAM 植物及びその生育環境 吉村泰幸 (農研機構農業環境変動研究センター) https://t.co/9Rd9FOGnM4
@raptorial_owlet https://t.co/Wn8Kn2aAQf

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