著者
中村 光
出版者
一般社団法人 日本老年療法学会
雑誌
日本老年療法学会誌 (ISSN:2436908X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-7, 2022-11-21 (Released:2022-11-23)
参考文献数
45
被引用文献数
2

コミュニケーションとは「意味の共有」と定義される。一方が共有を望んで頭の中の意味を記号化しメッセージとして発信し,他方がそれを受信して記号を解読し頭の中に同じ意味が生じれば,コミュニケーションが成立したことになる。また,コミュニケーションの場には必ずコンテキスト(文脈,状況)があり,同じメッセージであってもコンテキストによって意味は異なってくる。コミュニケーションの問題を引き起こす障害は,大きく4つに類別できる。①記号の入出力の問題が聴覚障害や音声・構音障害であり,②記号の操作の問題が大脳左半球の損傷で生じる失語症である。また,③主にコンテキストの利用の問題として,近年では認知コミュニケーション障害(CCD)という概念が提唱されている。CCDとは,注意・記憶・遂行機能などの認知機能障害を背景にしたコミュニケーション障害で,大脳の右半球損傷,前頭葉損傷,瀰漫性損傷によって生じることがある。さらに,④認知症は意味の問題に加えて②③も併発しているものと捉えることができる。失語症に関して日本では最近まで,機能障害水準の評価尺度がほとんどでコミュニケーション障害(活動制限)水準を直接評価する尺度は乏しかったが,現在は複数のものが開発・発表されつつある。CCDの評価尺度は開発の途上にある。最後に,老化におけるコミュニケーションの問題についても,CCDの研究・臨床で得られる知見が有用であろうと論じた。

言及状況

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中村光先生の論文読みました。 コミュニケーション、認知機能などの単語が含まれていると、ついつい読んでしまう
とても嬉しい気持ちになった
日本老年療法学会誌より、中村光先生の総説「コミュニケーションと認知機能 ―障害と評価―」 認知コミュニケーション障害と、コミュニケーション障害(活動制限)へのアプローチの重要性が的確に述べられていて大変勉強になりました。 #ひとりjournalclub https://t.co/rnWYRfCTuM
@umisora02870837 そうなのですね!中村先生の昔を存じませんが還暦を迎えられた今でも時折鋭さはご健在で、的確なご指導をいただいています。感謝ですね。。私は最近の、この総説が好きで読み直しています。https://t.co/F5E5lgRRuU

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