- 著者
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武居 渡
鳥越 隆士
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.1, pp.12-22, 2000-06-30 (Released:2017-07-20)
- 被引用文献数
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本研究は手話言語環境にある聾児の非指示ジェスチャーの特徴について明らかにし, 手話の初語との関連について検討することを目的とした。ろうの両親を持つ聾児2名 (5カ月〜15カ月) のコミュニケーション場面がピデオに収録され, 子どもの手の運動を記述し, 分析した。その結果, 非指示ジェスチヤーに関して以下の4点が明らかになった。第一に, 手がコミュニケーション手段として使用される前に, 非指示ジェスチヤーが出現した。第二に, 非指示ジェスチヤーの多くはシラブルを構成し, リズミカルな繰り返しがみられた。第三に, 非指示ジェスチヤーは, 6カ月前後では「記述の困難な単なる手の動き」として観察されたが, 10カ月前後にはそれが「リズミカルな繰り返し運動」ヘと変化し, 1歳を過ぎると「一見サインのようなジエスチャー」が多く見られ, 発達に伴い質的に変化していった。第四に, 非指示ジェスチャーと初語との間に, 連続性が確認された。これらの結果から, 非指示ジェスチヤーは, 音声哺語の特徴と多くの点で類似していることが明らかになり, 手話言語獲得において, 非指示ジェスチャーが手話の音韻体系を作りあげ, 哺語の役割を果たしていることが考えられた。