著者
阿部 彩
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.362-374, 2012-12-20 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
3

日本の子どもの相対的貧困率は16%であり,約6人に1人が相対的貧困状態にあると推計される。しかしながら,この相対的貧困の概念については,研究者らも含め殆ど知られておらず,この数値の意味するところが理解されていないのが現状である。本稿では,子どもの相対的貧困率の現状と動向を把握した上で,「豊かさ」と「貧しさ」という観点から,相対的貧困と絶対的貧困の概念の違いを明らかにする。また,一般市民の貧困の概念が,絶対的貧困や物質社会に反抗する精神論に強く影響されており,それが現代における貧困(相対的貧困)の議論の本質を見えにくくしている点を指摘した。最後に,相対的貧困が,どのようにして子どもの健全な育成を妨げているかについて,一つは相対的貧困にあることが子ども自身の社会的排除を引き起こすリスクが高いこと,二つが,子どもが相対的貧困の状態であるということは,親も相対的貧困状況にあるということであり,貧困が親のストレスを高め,親が子どもと過ごす時間を少なくし,孤立させることにより,厳しい子育て環境に置かれていることを指摘した。「豊かさ」や「貧しさ」は相対的な概念であり,たとえ豊かな社会であっても相対的貧困にあることは大きな悪影響を子どもに及ぼす。

言及状況

外部データベース (DOI)

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https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjdp/23/4/23_KJ00008521584/_article/-char/ja/ まず一般市民の貧困の概念は、絶対的貧困と物質社会に対する精神論に強く影響されて、それが現代における貧困(相対的貧困)の議論の本質を見えにくくしています。 ........ 相対的貧困の恐ろしいことは,これが単に学費, ...

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ただこれも2008年調査ということで、コロナ禍も東日本大震災も、ヘタしたらリーマンショックすら食らってない社会での調査なんですよね。今の日本で調査したらどんな結果になるやら……。 文献情報はこちらー https://t.co/Kh32IEgkfj
今、読んでいる。 https://t.co/JUMzv5t2R3
子供の相対的貧困の査読付き論文で、参考文献も明確で、色んなもの読むのに大変助けになった。 阿部彩(2012)「豊かさ」と「貧しさ」:相対的貧困と子ども」『発達心理学研究』23(4), pp.362--374. https://t.co/Pmrp7404I4
あとお金…この国ではお金が無いと生きていけないんですよね… 「豊かさ」と「貧しさ」:相対的貧困と子ども https://t.co/6nT3NrrT3c
https://t.co/dxjQAYzqDF

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