著者
佐藤 誠子 工藤 与志文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.135-148, 2021-06-30 (Released:2021-07-21)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

本研究は,既有知識の変化の困難さについて学習者の推論過程の側面から検討するものである。従来の合理的モデルに従えば,既有知識が変化するには,誤概念など既有知識からの「直観的判断」とルールに基づく「仮説的判断」とが同等におこなわれ,それらが比較対照される必要があるが,実際には後者の判断に困難があることが佐藤・工藤(2015)により示されている。これらを踏まえ,本研究では三角型四角形(三角形の直観的イメージに近い四角形)の分類課題を取り上げ,大学生を対象に仮説的判断の重要性とその方法を教授する授業をおこなうことで,課題に対する判断の転換がみられるかどうかを検討した。その結果,①推論の出発点を直観的判断にしか置けず,それを支えるための説明を生み出す方向にしか推論が展開されない「自己完結的推論」が存在すること(研究1,研究2),②仮説的判断を推論の俎上に載せることができれば,自己完結的推論が抑制され,双方を比較対照する検証過程に持ち込める可能性が高まること(研究2)が示された。これらの結果から,従来の誤概念修正ストラテジーの効果および概念変化達成のための教授学習条件を再考した。

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なんかこれ馬鹿にされてるけど、日本数学会が出版している『岩波数学事典 第4版』の定義に従えば「三角形は四角形である」は正しくなると思うよ。 まあ高校までの素朴概念と異なるのは、それはそう。 https://t.co/6iyY2VlcYc https://t.co/8PEa3gWH9q https://t.co/YKvTdUnwdE
佐藤誠子・工藤与志文(2021) 概念変化はなぜ生じにくいのか-仮説的判断を阻害する要因としての自己完結的推論- https://t.co/uyofN4ed0R
論文リンク https://t.co/6iyY2VlcYc まず、多角形の定義について「『岩波数学事典 第4版』では有限個の点を順に結ぶ線分の集合を多角形と言うよ。他の事典(『数学小辞典 第2版』)で頂点が同一直線上に存在しないことを条件にする立場もあるけど、この研究ではその立場をとらないよ」と言ってる https://t.co/hCflfcEuK8
https://t.co/8dXUILLfHz この論文には「超算数・・・の罪深さが浮彫りに」などという結論はどこにも書かれていないので要注意。実験結果によれば,大学生は(算数で習ったはずの)定義ルールより直観を重視して,ルールに合致しない判断をしてしまう。(続く) https://t.co/28G4ZAwVjR
概念変化の推論には、直観的判断のみを出発点とし、仮説的判断との比較検討を十分に行わずに確証的に推論する「自己完結的推論」があり、それが変化を妨げるという研究。仮説的判断を推論の俎上にのせるような指導の工夫が有効。 【論文メモ】佐藤・工藤(2021) 教心研 https://t.co/8b8oOP83Yq

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