著者
工藤 与志文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.41-50, 1997-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

College students numbering 206 were examined on their beliefs of the movement of sunflowers, and 112 students who had the false belief participated also in the experiment. The subjects were asked to read the science text which explained the facts that contradicted their beliefs in the following three conditions: (a) the photosynthetic rule was instructed, and the contradictory facts were referred to as examples of the rule; (b) the photosynthetic rule was instructed, but the facts were referred independently from the rule; and (c) only the facts were presented. The subjects were then put to some reading comprehension tests. The frequencies in the occurrence of belief-dependent misreading (BDM) on the tests were analysed. The following results were obtained: (1) there were less BDMs in the condition of the rule and example than in the other two conditions; (2) there were no less BDMs in the condition of the rule and facts than in the condition of the facts only. There findings suggested that the instruction in the relation of the rule and example was useful in order to avoid BDM.
著者
工藤 与志文
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.41-50, 1997-03

College students numbering 206 were examined on their beliefs of the movement of sunflowers, and 112 students who had the false belief participated also in the experiment. The subjects were asked to read the science text which explained the facts that contradicted their beliefs in the following three conditions : (a) the photosynthetic rule was instructed, and the contradictory facts were referred to as examples of the rule ; (b) the photosynthetic rule was instructed, but the facts were referred independently from the rule ; and (c) only the facts were presented. The subjects were then put to some reading comprehension tests. The frequencies in the occurrence of belief-dependent misreading (BDM) on the tests were analysed. The following results were obtained : (1) There were less BDMs in the condition of the rule and example than in the other two conditions ; (2) there were no less BDMs in the condition of the rule and facts than in the condition of the facts only. There findings suggested that the instruction in the relation of the rule and example was useful in order to avoid BDM.
著者
舛田 弘子 工藤 与志文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.241-253, 2021-09-30 (Released:2021-11-16)
参考文献数
26

工藤・舛田(2013),舛田・工藤(2013)は,説明文の不適切な読解が生じる原因の一つとして,文章内容から触発された想念が読解表象に入り込む現象,すなわち「想念の侵入」を指摘した。この現象は舛田(2018)による質的研究において確認されている。本研究では「想念の侵入」と不適切な読解表象との関係について量的な分析を行った。研究1では大学生96名を対象に,説明文の読解,文章中の「重要と思う部分」と「気になる部分」の抽出,文章の主旨の記述を行わせた。その結果,適切な主旨を記述した者は,重要と思う部分に依拠して記述する傾向があったが,不適切な主旨を記述した者では気になる部分への依拠が多く,「侵入」も多く観察された。このことから,文章中のエピソードの印象深さがその要因として指摘された。さらに,文章の冒頭と結びの部分に関連する「侵入」が多かったことから,文章構成の影響も考えられた。そこで,研究2では大学生94名を対象に,研究1の文章の結末部分を入れ替えた文章を用いて調査を実施した。その結果,入れ替えられた結末部分の内容に関する「侵入」の増減が確認された。以上の結果は,トップダウン処理による読解ストラテジーの誤用という観点から考察された。
著者
佐藤 誠子 工藤 与志文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.135-148, 2021-06-30 (Released:2021-07-21)
参考文献数
18

本研究は,既有知識の変化の困難さについて学習者の推論過程の側面から検討するものである。従来の合理的モデルに従えば,既有知識が変化するには,誤概念など既有知識からの「直観的判断」とルールに基づく「仮説的判断」とが同等におこなわれ,それらが比較対照される必要があるが,実際には後者の判断に困難があることが佐藤・工藤(2015)により示されている。これらを踏まえ,本研究では三角型四角形(三角形の直観的イメージに近い四角形)の分類課題を取り上げ,大学生を対象に仮説的判断の重要性とその方法を教授する授業をおこなうことで,課題に対する判断の転換がみられるかどうかを検討した。その結果,①推論の出発点を直観的判断にしか置けず,それを支えるための説明を生み出す方向にしか推論が展開されない「自己完結的推論」が存在すること(研究1,研究2),②仮説的判断を推論の俎上に載せることができれば,自己完結的推論が抑制され,双方を比較対照する検証過程に持ち込める可能性が高まること(研究2)が示された。これらの結果から,従来の誤概念修正ストラテジーの効果および概念変化達成のための教授学習条件を再考した。
著者
西林 克彦 宮崎 清孝 工藤 与志文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.202-213, 2017-03-30 (Released:2017-09-29)
参考文献数
33

本論文は2011年から2014年に実施した教育心理学会の研究委員会企画シンポジウムである「教科教育に心理学はどこまで迫れるか」の企画者による教育心理学研究の現状に対する問題提起である。現在の心理学的な教科教育研究では「どう教えるか」という方法のみが焦点化され, 「何を教えるのか」, つまり扱われる知識とその質の問題は教科教育学の扱うべきもので心理学的研究とは無関係とされる。しかし扱われる知識の質を抜きにした心理学的研究は, 実践的な有効性を欠くのみならず, 理論的にも不十分なものになるだろう。扱う知識内容と教える方法は相互作用をするため内容別に方法を考えなければならない, というだけのことではない。授業に臨む個々の教師が, 個々の教材についてその時々に持っている知識の質のあり方を, 教授学習過程の研究に取り込んでいかなければならない。このためには, 特定の授業者が特定の知識内容についておこなう特定の教授学習過程から出発する「ボトムアップ的実践研究」が必要になるだろう。ボトムアップ的アプローチでも科学としての普遍性を求める研究は可能であり, それは教授学習過程について新しい知見を生み出していく可能性を持っている。
著者
荒井 龍弥 宇野 忍 工藤 与志文 白井 秀明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.230-239, 2001-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

本研究では, 縮小過剰型の誤概念として小学生の動物概念を取り上げ, この誤概念を科学的な概念に修正するための境界的事例群を用いた教授法の効果を検討した。本研究の中心的仮説は, 境界的事例群を用いた教授により縮小過剰型誤概念が修正されるであろうというものであり, この仮説を検証するために, 3つの実験が行われた。実験はいずれも, 小学校5年生を対象とした理科の授業として行われ, 事前テスト, 自作のビデオ教材の視聴と視聴後の話し合いによる教授, 事後テストという3つのセッションで構成された。境界的事例群として水中のプランクトン事例群及び貝事例群を単独で用い, 食べる, 動く, 排泄するシーンを示すビデオ教材の視聴を行った第1, 第3実験では, 概念の組みかえを示す結果は得られなかった。境界的事例としてプランクトン事例と貝事例群を用いたビデオ教材の視聴を行った第2実験では, すべての課題の正答率が大幅に増加し, 仮説を支持する結果を得た。これらの結果から, 縮小過剰型誤概念の修正には, 2種の境界的事例群の対提示が有効であることが確認された。
著者
舛田 弘子 工藤 与志文
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
no.93, pp.1-16, 2013-02

説明的文章の読解を通じて学習を行う場合,不適切な読解のあり方の一つとして,当該の文章には記述のない道徳的な価値を読み取る傾向が見いだされてきている。本研究では,このような誤読を生じさせる読者側の要因として「論理操作水準」を取り上げ,文章の読解表象の様相と論理操作水準との関連を検討することを主たる目的として行われた。学習者は大学2~4年生であり,材料文を読んだ後に,文章に関する課題および論理操作水準に関する課題に回答してもらった。その結果,読解については,望ましい結論の読み取りは3割程度で,不適切な結論の読み取りの方が多かった。また論理操作課題に対する正答率も全体的に低く,対象者の論理操作水準が安定性を欠き,操作すべき命題の内容によって大きく変動する可能性があることが示唆された。更に,論理操作水準と読解の関係では,論理操作水準は読解表象よりもテキストベースでの理解に対して影響する可能性が示された。論文
著者
工藤 与志文
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.40-49, 2008-06

「誤前提課題」とは,学習材料の内容と矛盾する誤った前提にもとつく質問に対して答えるよう,学習者に求める形式の課題である。この課題に正答するためには,学習者は質問に直接答えるのではなく,質問の前提が誤りであることを指摘できなければならない。これまでいくつかの教授学習実験において,教授効果の評価のために,このタイプの課題が用いられている。本論文の目的は誤前提課題を用いた6つの研究の結果を概観することであった。検討の結果,誤前提課題は再生課題や転移課題よりも解決が困難であり,教授変数,特に知識の関連づけを促進する教授の効果を最も鋭敏に検出できることがわかった。上記のことから,(1)誤前提課題は,再生課題や転移課題とは異なる知識評価法として利用可能であること(2)誤前提課題に正答できた学習者は,獲得した知識を推論過程の制御に適用できる知識水準にあること(3)知識の制御的適用を促進するには,知識の相互関連性の教授が有効であることが示唆された。最後に,今後の研究や教育実践に与える寄与について論じられた。
著者
工藤 与志文 白井 秀明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.21-30, 1991-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
11

The purpose of this study was to investigate the effects of learners' existing mis -rules (ru) on area learning. It was inferred that schoolchildren had a ru that if the perimeter of a figure is longer, the area of it is larger (perimeter-ru). The relations between the presence of this ru and the existent education of area were researched. The results were: (i) More than fifty percent of the children in each grade judged areal size in terms of the ru.(ii) The percentage of the ru-response rapidly increased after area learning. These results suggested that (a) the present education of area could not reconstruct the perimeter-ru to the correct rule (ru), and (b) rather, might strengthen misjudgments caused by the perimeter-ru.
著者
工藤与志文 藤村宣之 田島充士 宮崎清孝
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

企画主旨工藤 与志文 本シンポジウムは2011年から始まった同名のシンポジウムの4回目である。また,企画者の一人として,その締めくくりとしての意味合いを持たせたいとも考えている。今回のテーマは「教育目標をどう扱うべきか」である。そもそもこれら一連のシンポジウムは,学習すべき知識の内容や質を等閑視し,コンテントフリーな研究課題しか扱わない教育心理学研究のあり方に対する批判からスタートしたものと理解している。そのような問題意識の行き着く先は「教育目標の扱い」ではないか。これまでのシンポジウムで度々指摘されてきた教育心理学の「教育方法への傾斜」は,自ら教育目標の善し悪しを検討することが少ないという教育心理学研究者の研究姿勢と関連している。教育目標がどうあるべきかという問題は教育学や教科教育学の専門家が取り扱うべきであり,教育心理学はその実現方法を考えていればよいという「分業的姿勢」の是非が問われるべきではないだろうか。本シンポジウムでは,上記の問題意識をふまえ,教育心理学研究は教育目標そのものをどのように俎上にのせうるか,その可能性について議論したい。教科教育に対する心理学的アプローチ:発問をどのように構成するか藤村 宣之 教育目標に対して教育心理学がどのようにアプローチするかに関して,より長期的・教科・単元横断的なマクロな視点と,より短期的なミクロな視点から考えてみたい。 マクロな視点によるアプローチの一つとしては,各学年・教科・単元の目標を,発達課題などとの関わりで教科・単元横断的にあるいは教科や単元を連携させて設定し,それに対応させて構成した学習内容に関する長期的な授業のプロセスと効果を心理学的に評価することが考えられるであろう。その際には,学習内容にテーマ性,日常性を持たせることが教科・単元を関連づけた目標設定を行ううえでも,子どもの多様な既有知識を生かして授業を構成するうえでも重要になると考えられる。 より短期的に実現可能なミクロな視点からの関わりの一つとしては,各単元・授業単位で,どのような発問を設定して,子どもたちに思考を展開させることを考えることで,単元の本質的な内容の理解に迫るというアプローチも考えられる。当該単元の教材研究を子どもの思考や理解の視点から行うことを通じて,どのような力をその単元・時間で子どもに獲得させるか(たとえば当該単元のどのような理解の深まりを一人一人の目標とするか)を考え,それを発問の構成に反映させていくというアプローチである。 ミクロな視点からのアプローチの一つとして,子どもの多様な既有知識を発問の構成に活用し,探究過程とクラス全体の協同過程を組織することで,一人一人の子どもの各単元の概念的理解の深まりを目標とした学習方法(協同的探究学習)のプロセスと効果について,本シンポジウムでは報告を行いたい。発問の構成の方針としては,導入問題の発問としては,当該教科における既習内容に関する知識,他教科の関連する知識,日常的知識など子どもの多様な既有知識を喚起し,個別探究過程,協同探究過程を通じてそれらの知識を関連づけ,さらに,後続する展開(発展)問題の発問としては,それらの関連づけられた知識を活用して単元の本質に迫ることが,個々の学習者の概念的理解を深めるうえでは有効ではないかと考えられる。以上に関する具体的な話題提供と討論を通じて,教科教育の教育目標を対象とする教育心理学研究のあり方について考察を深めたい。知識操作と教育目標工藤 与志文 ここしばらく「知識操作」に関する研究を続けている。知識操作とは,課題解決のために知識表象を変形する心的活動のことを指す。近年,法則的知識(ルール)の学習研究において知識操作の重要性が示されつつある。ところで,同一領域に関する知識といっても,操作しやすい知識と操作しにくい知識があるように思う。西林氏の言葉を借りれば,知識は「課題解決のための武器」であるのだから,どんな武器を与えるかによって戦い方も変わってくるだろうし,すぐれた武器があれば勝算も高まるだろう。筆者は,「操作のしやすさ」をすぐれた武器の要件の1つだと考えている。雑多な知識の中からすぐれた武器となる知識を精選し,学習者がそれらを使えるように援助することは,重要な教育目標となると考えている。このような観点で教科教育を見た場合,わざわざ鈍い武器を与えているのではないかと思われる事例が少なくない。重さの保存性の学習を例に説明してみよう。 極地方式研究会テキスト「重さ」では,「ものの出入りがなければ重さは変わらない」というルールを教えている。このルールは含意命題の形式をとっているため操作が容易であり,ここから直ちに他の3つのルールを導く事ができる。①「重さが変わらないならばものの出入りはない(逆)」②「ものの出入りがあれば重さは変わる(裏)」③「重さが変わるならばものの出入りがある(対偶)」小学生がこれらのルールを駆使することで,一般に困難とされている課題に対して正しい推論と判断が可能になることが教育実践で明らかにされている。たとえば,水と発泡入浴剤の重さを測定し,入浴剤を水に入れた後の質量変化をたずねる課題では,小学3年生が重さの減少と気体の発生を関連づける推論を行うことができた(重さが減ったということは何かが出ていった→においが出ていった→においにも重さがある)。 一方,学習指導要領をみると,小3理科の目標の1つとして「物は形が変わっても重さは変わらない」ことの学習が挙げられている。教科書では,はかりの上の粘土の置き方を変えたり形を変えたりして確かめている。しかし,このルールは命題の帰結項(重さは変わらない)に対応する前提項を欠いており,含意命題の形式をとっていない。したがって,上記のような操作は不可能である。しかもこのルールは,変形して重さが変わる状況では使えない(極地研のルールでは,「重さが変わったんだから何か出入りがあったのだろう」と予想できる)。重さの保存性理解にとって,どちらの知識が武器として有効であるかは明らかではないか。本シンポジウムでは,知識操作という観点から,学習すべき知識の内容や質を問い直すつもりである。ここから,教育目標を対象にした教育心理学研究の1つの可能性を示してみたい。「学習者を異世界へいざなう教科教育の価値とは:分かったつもりから越境的交流へ」田島 充士 「学校で学んだ知識は,社会に出ると役に立たない」との言説は,今も昔も多くの人々にとって,強い説得力を持って受け止められているものだろう。学習者が学校で学ぶ知識(以下「学問知」と呼ぶ)は,実践現場で養成され活用される具体的知識(以下「実践知」と呼ぶ)と乖離する傾向にあると多くの人々によって受け止められているのは事実であり,学習者に対し,学外における実践知学習の場を提供する,インターンシップ等の実践演習型教育プログラムの実施も盛んである。 しかし教育心理学においては,この実践知習得をターゲットとした実践演習等の価値が認められる一方で,肝心の,社会実践に対する学問知教育(教科教育)の貢献可能性については,十分にモデル化されているとはいえない状況にある。本発表では,ヴィゴツキーによる科学的概念を介した発達論を基軸として,学問知が有する実践的価値を実証的に分析する理論モデルを提供することを目指す。 科学的概念とは,教科教育を通し学習される,抽象的な概念体系をともなう学問知の総体である。その特徴は,空間・時間を異にする,個々別々の具体的な文脈に孤立した実践知を,学習者自身がこの抽象体系に関連づけることで特定のカテゴリーとしてまとめ,相互の比較検証を可能にすることにある。以上のように学問知を捉えるならば,教科教育とは,異なる実践文脈を背景とし,異質な実践知を持つ,いわば異世界に属する人々との越境的な相互交流を促進する可能性を有するという点で,広く社会実践に開かれた価値のあるものだともいえる。 その一方で,教科学習においては多くの者が,授業文脈では学んだ知識を運用できるが,学外の人々との相互交流において応用的に利用することができない「分かったつもり」に陥る傾向も指摘される(田島, 2010)。これは本来,越境的交流の中でこそ活かされるべき学問知が,教室内の交流のみに,その使用が閉じられている問題といえる。つまり教科教育の問題とは,学問知そのものが社会実践に閉ざされているという点にではなく,現状では,多くの学習者がそのポテンシャルを十分に活かすことができず,学外の社会実践との関連を見出すことができないという点にあるのだと考えられる。 本発表では,以上の問題に取り組むべく,実践知との関連からみた学問知に関する理論的視座を提供する。さらに学習者を分かったつもりにとどめず,学問知のポテンシャルの活用を促進し得る教育実践の展開可能性についても検証する。その上で,学習者を異世界へいざなうという学問知の強みを活かした教科教育の社会的価値について論じる。
著者
白井 秀明 宇野 忍 荒井 龍弥 工藤 与志文 佐藤 淳
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.平成16年度(1)物質の基礎概念についての横断的調査:対象は小学校4〜6年生。学年末に物質の基礎概念(重さの保存や加法性など)理解度調査を行った。その結果、6年においても重さ未保存者がおり、さらに体積と重さを混同するというある種の誤概念所持が推測される誤答者も少なからずいた。(2)単元間の相互関連づけを目指す教授プランの開発とその実施及び評価:5年理科の「もののとけ方」単元を対象に単元終了時に、4年単元で既習の実験を再現し体積や重さについて増減同の確認する学習活動を追加した。その結果、物質の基礎概念と単元目標のいずれの理解についても一定の効果しか見られなかった。2.平成17年度(平成16年度(2)と同じ学習者)(1>単元間の相互関連づけを目指す教授プランの開発とその実施及び評価その1:6年「ものの燃えかたと空気」単元終了時に、乾留や燃焼などの化学変化の前後で重さと体積の増減同の確認作業をさせる学習活動を追加。その結果、単元目標のうち「二酸化炭素が火を消す働きがある」と誤答した学習者が授業後にも依然半数いた。さらに物質の基礎概念についても十分理解を促進できなかった。(2)単元間の相互関連づけを目指す教授プランの開発とその実施及び評価その2:6年「水溶液の性質とはたらき」単元内で、物質の仲間分けの手がかりとなる化学現象(水への溶解、燃焼など)や酸性水溶液に対する金属などの溶解現の前後で、物質の重さの変化を判断させた。体積は測定する機会を増やすにとどめた。結果、単元目標のうち水に溶けるか否かと火で燃えるか否かの関係は理解が促進されたが、物質の分類については不十分であった。物質の基礎概念については、体積と重さの混同など依然として十分に理解を深めることができなかった。しかし、これら3つの授業を受けた学習者は、横断的調査の6年生よりも物質の基礎概念についての理解は深まっていた。
著者
工藤 与志文 小石川 秀一
出版者
日本教授学習心理学会
雑誌
教授学習心理学研究 (ISSN:18800718)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.42-48, 2012

本論文は,小5「電流が生み出す力」の授業実践における子どもの認識とそれに関する教師の認識とのずれを示す事例の報告である。これらの事例では,事実認識とコトバの意味に関して,教師の想定していた子どもの認識と実際の子どもの認識が大きく食い違っていた。4つの事例の分析を経て,以下の点が論じられた。(1)事例で示された認識のずれは,教師と子どものやりとりの中で初めて顕在化するような微妙なものであったが,授業目標の実現に大きな影響を与えるものであった。(2)子どもの思考は具体的なイメージにしばられる傾向があり,これが認識のずれをもたらす要因の一つであった。また,コトバの操作だけでイメージを変化させるのは困難であった。(3)子どもたちに抽象概念を理解させるために,具体的な現象に置き換えて教えることは重要だが,それだけでは,個別の現象の学習にとどまってしまう可能性が高いことが示された。この点を克服するためには,抽象概念と個別的現象を結びつけるはたらきをもつ経験が重要である。
著者
工藤 与志文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

知識の活用において重要視される操作的思考の活性化要因ならびに抑制要因について検討した。活性化要因としては, 属性の共変関係に関するルール教授や事例情報による思考の方向性の制御などが挙げられたが, その効果は部分的であった。また, 抑制要因としては, 科学的思考における操作の役割について, 全般的に低い評価しか与えられていない点が挙げられた。今後, 操作の論理的側面に加え, イメージ表象や背景知識の影響についてさらに検討する必要がある。