- 著者
-
稲垣 稜
- 出版者
- 一般社団法人 人文地理学会
- 雑誌
- 人文地理 (ISSN:00187216)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.2, pp.151-166, 2019 (Released:2019-07-13)
- 参考文献数
- 48
- 被引用文献数
-
2
横断データにもとづいて大都市圏郊外の買い物行動を明らかにした研究は数多く存在するが,縦断データに焦点を当てた研究は少ない。本研究では,大阪大都市圏の郊外に居住する人々の買い物行動に関する長期的な縦断データを収集する。対象地域は大阪大都市圏の東部郊外に位置する奈良市の平城ニュータウンであり,アンケート調査にもとづいて分析を行った。バブル経済期までは,大阪大都市圏の上位中心地である難波・心斎橋,下位中心地である大和西大寺駅周辺で高級服を購入するスタイルが維持されていたが,バブル経済崩壊以降難波・心斎橋の利用割合が大幅に低下した。最寄品である普段着の購入においても,1980年時点では百貨店の利用が一定程度あった。しかし1980年代以降,平城ニュータウンに総合スーパーが立地したことにより,普段着を平城ニュータウン内で購入する割合が上昇した。本研究では,大都市圏における買い物環境の変化に伴い郊外居住者の買い物行動が絶えず変化してきたこと,さらには現住地への入居時期により買い物行動の変化の仕方が異なることを明らかにした。