著者
田辺 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.3-18, 2016-11-17 (Released:2023-06-01)
参考文献数
53

日本において、エビデンスに基づくがん検診がなぜ実現しにくい状況となっているかについて、政治学で発展したアイディア理論を用いて分析を行った。日本のがん検診は世界的に見ても早い時期に導入されたが、その後、死亡率減少のエビデンスがあるがん検診を行うべきという新たなアイディアが海外から輸入され、既存のがん検診を見直す政策変容が進められた。分析の結果、この政策変容が不徹底となっており、エビデンスが確立したがん検診に加え、エビデンスが不十分ながん検診が広く実施されている状況が明らかとなった。 その原因としては、死亡率減少という観点で有効性を評価すべきというアイディアが市町村レベルでは十分受容されていないこと、過去の政策が次の政策選択に影響を与える政策遺産が存在することが挙げられ、政策決定は必ずしもエビデンスのみに基づいて行われるわけではないという現実が浮き彫りとなった。 今後も、他の政策分野を含め、エビデンスに基づく政策を阻害する要因について、さらなる分析が求められる。

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[公衆衛生][医療][行政][政治]
2016年。とても良くまとまっているし、論考の切り口が興味深い。

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エビデンスに基づくがん検診はなぜ実現しないのか-アイディア理論を用いた一考察-|田辺 智子 https://t.co/RAX3f1vWp3 "(がん検診に限らず…)なぜ日本では有効性を確認してから施策として導入するという発想が希薄になりがちなのか、またその背景として日本特有の問題構造があるのかどうか…"

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