著者
古川 俊一 磯崎 肇
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.53-65, 2004-03-29 (Released:2010-06-15)
参考文献数
27
被引用文献数
3

政策の評価を行うに当たっては、基本的な原単位の数値が確定されている必要がある。生命価値はその最たるものであり、規制評価が政策評価の中で、主要なものとされているにもかかわらず、十分な研究蓄積に乏しい。本論文では、リスク工学の考えも応用し、第1に、死亡事故のリスクに対する「統計的生命価値」の推定モデルを探求する。第2に、自動車購入時に、使用者が評価しているリスクから「統計的生命価値」を推定する。第3に、その結果を現在我が国で主として用いられている逸失利益をベースとした人命の価値と比較し、費用便益分析においての取り扱いを考察する。道路建設等の分野における約3, 000万円という従来の人命の価値は、今回分析の結果示された「統計的生命価値」8~10億円や、質問法をベースにした場合の我が国における「統計的生命価値」において妥当な数値との指摘のある数億円と大きな格差がある。もし生命価値が、一桁高い評価を受けることになれば、規制政策等の評価結果が大きく変更される可能性がある。
著者
田辺 智子
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.3-18, 2016-11-17 (Released:2023-06-01)
参考文献数
53

日本において、エビデンスに基づくがん検診がなぜ実現しにくい状況となっているかについて、政治学で発展したアイディア理論を用いて分析を行った。日本のがん検診は世界的に見ても早い時期に導入されたが、その後、死亡率減少のエビデンスがあるがん検診を行うべきという新たなアイディアが海外から輸入され、既存のがん検診を見直す政策変容が進められた。分析の結果、この政策変容が不徹底となっており、エビデンスが確立したがん検診に加え、エビデンスが不十分ながん検診が広く実施されている状況が明らかとなった。 その原因としては、死亡率減少という観点で有効性を評価すべきというアイディアが市町村レベルでは十分受容されていないこと、過去の政策が次の政策選択に影響を与える政策遺産が存在することが挙げられ、政策決定は必ずしもエビデンスのみに基づいて行われるわけではないという現実が浮き彫りとなった。 今後も、他の政策分野を含め、エビデンスに基づく政策を阻害する要因について、さらなる分析が求められる。
著者
岩崎 久美子
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_17-1_29, 2010 (Released:2014-05-21)
参考文献数
43

エビデンスの概念は、わが国の教育分野では、一般的に知られているとは言い難いが、昨今、「エビデンスに基づく政策」(evidence-based policy)という言葉が政策を論議する文献等で多く散見されるようになってきている。本論では、このような背景にあって、第一にコクラン共同計画やキャンベル共同計画が基本とする、ランダム化比較試験(RCT)の系統的レビュー(メタ・アナリシス)で産出される厳密な定義でのエビデンスを中心に、産出、普及、活用の上で生じる課題を明らかにする。第二に広義の科学的根拠という意味で、経済協力開発機構(OECD)が、近年「エビデンスに基づく政策」という言葉を用いて政策提言を積極的に行ってきている背景を人的資本論に基づきながら論じる。そして、最後に教育におけるエビデンスに基づく政策についての方向性を示唆する。
著者
青柳 恵太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_53-1_62, 2010 (Released:2014-05-21)
参考文献数
17

開発援助分野では2000年代に入った頃からプロジェクトのインパクトを精緻に推計するという取り組みが強化され始めた。その一端としてRCTを用いたインパクト評価の事例も多く蓄積されてきている。こうした動きは主として開発経済学者によって主導されてきているが、RCTが広く用いられるようになるにつれて、長年に亘り評価研究において議論されてきたRCT導入の是非、及び初期の経済学に見られた 「理論なき計測」 に関わる議論が開発援助分野を舞台として再度問われていることが確認できる。他方、RCTが先行している疫学等の分野に比べて制度化が遅れていることが指摘できる。翻って、こうしたRCTの国際的展開の中で日本の取り組みを見ると、積極的とは言いがたいものがあった。しかしながら、近年はRCT を適用することも視野に入れつつ、インパクト評価全般への取り組みが強化され始めている。
著者
津富 宏
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.23-39, 2003-09-29 (Released:2010-09-28)
参考文献数
17

系統的レビューは、「リサーチクエッションの確定→文献の探索→文献のスクリーニング→文献のコーディング→統計分析→定型的な報告」という、一定の科学的手続きに従うレビューである。医学分野においては、この系統的レビューに基づく「エビデンス」を生み出し、伝え、絶えず更新しようという国際ネットワークである、コクラン共同計画が発展した。コクラン共同計画の成功に学び、社会政策決定への情報提供を行うことを目指して、キャンベル共同計画が設立された。キャンベル共同計画の生み出したエビデンスはデータベース化されて、電子媒体によって配布され、政策決定、サービス供給の両面にわたって、利用されることが期待される。キャンベル共同計画は、その時点における最善の「What works」を提供する社会インフラとして、Experimenting Societyを支えることになろう。
著者
南島 和久
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.3_17-3_27, 2009 (Released:2014-05-21)
参考文献数
43

本稿はNPM(New Public Management)1と評価との関係に論及する。ここでいうNPMは、政治学的にいえば20世紀最終四半期に展開した世界的な行政改革の思潮である。具体的にはイギリスのサッチャー政権下のサッチャリズムやアメリカのレーガン政権下のレーガノミクス、あるいはニュージーランドのロンギ政権下のロジャーノミクスがその源流である。とりわけ日本では、行政改革のみならず政策評価の理論的背景として紹介されることもおおい。本稿は、これらをふまえながら公的部門における「評価」についてNPMの理論的影響があったのか、あったとすればどのような意味であったといえるのかという点を検討する。またこのことを明らかにした上で本稿は、NPM論者として著名なHoodの所説に寄り添いながらNPMが惹起するもうひとつの論点、すなわち「統制の多元化」現象を指摘する。
著者
米原 あき
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.3_91-3_105, 2013-02-01 (Released:2014-05-21)
参考文献数
36

人間開発指数(HDI)は、従来の経済指数に代わる開発指数として、国際的に広く用いられており、経済指数に加えて、保健指数と教育指数も加味した複合指数である点にその特徴がある。HDIは、国ごとの開発レベルを測るランキング指数として認知されているが、HDIの理論根拠である人間開発論に鑑みれば、HDIをランキング指数として活用する方法が最善の方法であるとは言い難い。したがって本稿では、人間開発論の考え方に則り、国家ランキングによる評価にとどまらない、各国の「開発バランス」を評価するための新たな方法を提案することを目的とする。必要なデータが入手できた141か国を分析対象とし、主成分分析によって、141のHDIを教育・保健・経済の各要素に分解する。分解された3つの要素を用いて「開発バランスチャート」を描出し、これら141のチャートを類型化することによって、より包括的な開発評価に向けたHDIの応用を試みる。
著者
佐々木 亮
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1_63-1_73, 2010 (Released:2014-05-21)
参考文献数
42

貧困アクションラボがリードする「エビデンスに基づく開発援助評価」には、少なくとも3つの起源がある。それらは、ランダム化実験デザインの是非を議論してきた評価研究の系譜、独自の発展を遂げてきた開発援助評価の系譜、そして新しく当該分野をリードし始めた経済学の系譜である。それぞれの歴史的背景および現状を論じたうえで、ランダム化実験デザインの優位性と制約に関するスクリヴェンとバナージェの考え方の比較を行う。結論は、開発援助評価において、独占的というわけにはいかないが、ランダム化実験デザインが利用できるし利用すべき余地が確かに存在すると言うことである。そしてランダム化実験デザインを適用することにより、すべてというわけにはいかないが「機能する援助」が確かに存在することが証明されてきており、今後は、効果が証明された援助活動に対してより多くの資源を投入していくことが求められていくであろう。
著者
田中 弥生
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1_3-1_19, 2011 (Released:2014-05-21)
参考文献数
29

本論の目的は「エクセレントNPO」基準の設計の工程および体系の構造を説明し、あわせて課題解決策としての評価のあり方を論ずることである。本基準は日本のNPOセクターの現状について危機感を覚えた実践者と研究者が策定したものである。すなわち、現状をデータ等によって分析し、望ましい非営利組織像を定義した上で、現在のNPOセクターにおいて最も重要と判断した「市民性」「社会変革性」「組織安定性」の3つの課題を抽出し、これを基本条件とした。この基本条件に基づき、評価基準体系の構造と工程をデザインし、工程にしたがって議論を進め33の評価基準を導き出した。したがって、本基準はNPOセクターの課題に対する解決案としての意味を有する。しかし、課題解決策として評価が機能するためには、評価自体をひとつのプロジェクトとして捉え、基準の普及をしながら、継続的な現状分析と利用者からのフィードバックなど不断の見直しが必要になる。
著者
山口 誠史 松尾 沢子
出版者
THE JAPAN EVALUATION SOCIETY
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1_31-1_46, 2011

日本の国際協力NGOによるアカウンタビリティに関する取り組みは、1990年代中頃までほとんどみられなかった。しかし、1990年代後半になるとNGOへの関心の高まりや社会の様々な組織に対するアカウンタビリティ向上の要望、NGOによる補助金不正使用事件の発覚などをきっかけに、NGO独自のアカウンタビリティ取り組みの必要性が認識されるようになった。<br>国際協力NGOのネットワーク組織である(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)は、2002年に有志による委員会を発足させ、「組織運営」「事業実施」「会計」「情報公開」の4つの分野で合計322項目からなる自己審査キット「NGOのアカウンタビリティ行動基準」を策定した。その後、項目数の削減や立会人制度の導入などの改良を加えた「アカウンタビリティ・セルフチェック2008(ASC2008)」を作成し、JANIC正会員団体を対象に普及に取り組んでいる。<br>今後は、途上国で開発協力を行う現場型以外のNGOにも適用できる基準の見直しや組織強化につながる仕組みづくりなどを進めつつ、ASC2008の実施団体を増やし、NGOの社会的信頼性の向上に貢献していく。
著者
西本 哲也
出版者
THE JAPAN EVALUATION SOCIETY
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.147-159, 2007

不良債権処理に伴う失業者に対する雇用対策として、緊急雇用対策交付金の創設を中心としてセーフティネットの構築が図られ、2001年度補正により予算も付けられた。しかし、この雇用対策が本当に効果的であったかどうかは、実はよくわかっていない。雇用対策の実施を担った厚生労働省は「おおむね効果があった」と自己評価していたが、報道や国会質問により、自己評価に対する疑問や政策の効果に対する疑問が呈されていたためである。<BR>他方、わが国の政策評価制度は、「評価の評価」(メタ評価) を行なう機能があらかじめ設定されている。その役割を担うのは、総務省行政評価局による客観性担保評価と呼ばれる活動である。この緊急雇用対策交付金に対しては、客観性担保評価が一歩進んだ形で行なわれたが、同時に課題や限界も明らかになった。
著者
池上 清子 高橋 径子
出版者
THE JAPAN EVALUATION SOCIETY
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.99-106, 2003

外務省は2001年度、1994年から日本政府にイニシアティブでスタートしたGII (=Global IssuesInitiative on Population and AIDS) が2001年3月で終了したことを受け、プログラム評価を実施した。その一環で、官民連携によって現場レベルに与えたインパクトと日本国内に与えた影響について評価調査を試みた。<BR>官民連携のコンセプトは長年言われ続けてきたが、その過程で官民連携に留まらず、開発協力に従事する様々な関係者が連携しあうネットワークの出現を中心として、新しい動きがみられるようになった。GIIでみられた官民連携や他のドナーとの連携を中心とする様々な試みが、他の分野においても実践されつつある。<BR>1994年以降の政策レベルおよび現場レベルの双方での実践を振り返り分析し、「連携」を鍵に好事例の抽出を行うと同時に、課題点・問題点を検証し、今後の「連携」のあり方に対する提案を行う。
著者
小林 信行
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-14, 2020-03-31 (Released:2023-06-01)
参考文献数
24

本稿は、心理学分野の研究倫理における研究協力者への配慮を視座に、評価倫理における基本原則「人々への敬意」に関する論考を行う。そして、その論考を踏まえ、日本評価学会の「評価倫理ガイドライン」で今後反映すべき事項に関する示唆を導出する。心理学分野では、研究は実践活動よりも高リスクと見なされ、研究に先立ち倫理審査が求められる。同様に、評価協力者に著しいリスクが生じる可能性がある場合、類似する審査が望まれ、その要否の判断基準が検討課題となる。「評価倫理ガイドライン」は、評価が介入の割り付けを決定する状況を想定しないため、前記の状況でのインフォームド・コンセント、許容される統制群の設定も検討課題となる。研究倫理の「実践」から、幾つかの課題も明らかとなった。倫理審査が調査手法の選定に影響し、特定の手法を忌避する傾向が見られた。また、「理論」が提示する複数の基本原則どうしが衝突し、倫理的な判断が困難となった結果、倫理面の配慮が研究協力者の負担を重くするケースも生じている。
著者
津富 宏
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.33-41, 2016-11-17 (Released:2023-06-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿では、エビデンスを「つくる・つたえる・つかう」運動であるEBP(Evidence-based practice)の観点から、社会的投資のための評価ツールのひとつであるSROI(Social Return On Investment: 社会的収益投資)について批判的検討を行った。まず、SROIの普及状況について概説した後、SROIがCBA(Cost-Benefit Analysis: 費用便益分析)の一種であることを確認し、Nicholls et al.(2009)に従って、SROIの原則、SROIの手順について概観した。これを踏まえて、Arvidson et al.(2010, 2013)によるSROIに対する、的を得た8つの批判を紹介した。その後、SROIに関する具体例の検討を行い、SROI比率算定における恣意性やSROI比率がインフレートされる可能性を見出した。最後に、福祉国家論における社会的投資の役割についての考察を踏まえ、SROIは、投資対象としての事業や組織を評価するためではなく、EBPが長年にわたり行ってきたように、社会的共通資本としてのセクターの漸進的改善を支援するために用いられるべきであると主張した。
著者
小林 庸平
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.33-48, 2020-07-31 (Released:2023-06-01)
参考文献数
35

日本においても、エビデンスに基づく政策形成(EBPM)が進められている。本稿では、Evidence-Basedに関する議論を概観したうえで、日本のEBPMの現状を整理するとともに、その評価を行う。日本のEBPMは事前分析やロジックモデルの作成に重点が置かれており、EBPMの本来的な意味からの逸脱がみられる。次に、Evidence-Basedが先行する医療等の分野との比較を行う。具体的には、問いの設定、エビデンスの創出、エビデンスの活用という3つの観点から、医療等の先行分野と政策の比較を行う。比較分析を踏まえて、EBPMをどのように捉えどのように進めていくことが望ましいかを検討する。具体的には、問いの設定の重要性や、エビデンスの範囲、つくる・つたえる・つかうのウエイト、エビデンスに対する需要創出の重要性等を指摘する。
著者
西出 順郎
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.17-30, 2016-08-31 (Released:2023-06-01)
参考文献数
39

本稿は、自治体評価の20年の歴史を研究及び実務の視点から振り返り、今後の自治体評価について若干の検討を加えるものである。はじめに我が国の自治体評価の特徴である組織管理への接近について、その要因を自治体評価が台頭した2000年前後の自治体を取り巻く環境から抽出する。次にそれゆえの自治体評価の課題、課題克服のための処方箋、さらには処方箋の限界等を記述する。最後に自治体評価の近年の動向を考察し、自治体評価の行方について、その方向性を模索する。
著者
山谷 清志
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-14, 2023-05-31 (Released:2023-09-28)
参考文献数
45

1990年代末に日本で導入された政策評価は、総務省「政策評価に関する標準的ガイドライン」(2001年)によれば、国民に対する行政の説明責任を徹底する、国民本位の効率的で質の高い行政を実現する、国民的視点に立った成果重視の行政への転換を図る、この3つの目的を持つ。行政学はこの目的を持つ政策評価の安定的運用を考えるために行政責任論、行政管理論、NPM理論から政策評価を解釈しようとした。ただ、いずれの解釈にも難がある。ここではその行政学の取り組みの歴史を振り返り、なぜ2021年から政策評価は再検討されるようになったのか、その意味を考察したい。政策評価の再検討が実務で成功する条件を探るのが、本稿のねらいである。
著者
今田 克司
出版者
特定非営利活動法人 日本評価学会
雑誌
日本評価研究 (ISSN:13466151)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.27-37, 2022-09-30 (Released:2023-09-28)
参考文献数
26

近年、「社会的インパクト評価」について論じられることが増えてきた。一方で、評価研究の中で、この概念が定着しているとは言い難い。本論では、社会的インパクト評価の概念整理を試み、国内外における理論や実践の議論が、概念を成長・進化させていると論じる。具体的に取り上げるのが、2010年代中盤以降の北米(特に米国)におけるインパクト投資とインパクト測定・マネジメント(IMM)の動きと、日本国内における内閣府社会的インパクト評価ワーキンググループによる概念整理である。これらを概観し、新たに見出された社会的インパクト評価の特質として、学び・改善、マネジメント支援や意思決定のための評価の側面が強調されていることを述べる。