- 著者
-
林 昌子
- 出版者
- 人体科学会
- 雑誌
- 人体科学 (ISSN:09182489)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.1, pp.22-30, 2019-07-15 (Released:2019-12-25)
- 参考文献数
- 40
キリスト教史上において、輪廻転生思想は決して稀ではなかった。むしろ、イエスの時代の信仰に、あるいは福音書に、初期キリスト教時代教父たちの思想やグノーシス的キリスト教の流れのうちに輪廻転生思想は存在する。公会議等によって正統と異端とが峻別されていった歴史は、同時に、異端とされたキリスト教が、中心のローマから東西の辺境に拡散した歴史でもある。辺境世界のキリスト教では、輪廻転生思想が採用されることも珍しくない。多様性と実用性が重んじられる近代においてはなおさら、キリスト教がその教理の内に輪廻転生思想を取り入れる余地がある。本論では、日本のプロテスタント神学である21世紀の実存論的神学において、輪廻転生がどのような理由で受け入れられたのかを考察する。聖書に根拠の乏しい予定説が、後の時代に教理として形成されていった過程を是とするならば、実存論的神学が万有救済説および輪廻転生説を教理として採用することに、神学上の誤謬は生じない。むしろそれらを積極的に採用することが、日本にキリスト教を土着させるための一助となる。