著者
小宮 友根
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.192-208, 2009-09-30 (Released:2012-03-01)
参考文献数
47

J. バトラーの理論は社会学にとってどのような意義をもっているだろうか.本稿では「パフォーマティヴとしてのジェンダー」という考え方の検討をとおして,この問いに1つの答を与える.はじめに,パフォーマティヴィティ概念がJ. デリダの「反覆可能性」概念に接続されていることの問題点を指摘する.1つは,「行為をとおした構築」という主張の内実が不明確なままにとどまっていること.もう1つは,それゆえ「攪乱」という戦略が採用されるべきであるという主張にも十分な根拠が与えられていないことである.だが,バトラーがなぜ「社会的に構築された性差」という意味でのジェンダー概念を批判していたかに注目するなら,パフォーマティヴィティ概念についての異なった解釈を導き出すことができる.ここでは,人間の行為を因果的に説明する議論のもつ限界の外で「性別の社会性」を論じることの重要性を考察することからその作業をおこなう.そのうえで,私たちが言語による記述のもとで行為を理解していることと,私たちが多様なアイデンティティをもつことの論理的関係へと目を向けるものとしてパフォーマティヴィティ概念を解釈するなら,その内実は経験的にあきらかにしていくことができるものになり,それゆえ社会学にとって重要な課題を示唆するものになることを論じる.

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社会学の分野における「二次文献」としては、たとえば小宮友根さんによるこういう論文がありますね。あえて選んだんですけど。 https://t.co/BUqViwgl8k
@syakkin_dama 最近の小宮先生の活動を踏まえて、過去の小宮先生の論文読むの楽しいです。これとか。 https://t.co/S1APMqBdfc
バトラーの“理論”って、根拠が薄く、説得力もいまいちなので、もうちょい実践の記述を大事にしたほうがいいよね、という論考。 ▷小宮友根「行為の記述と社会生活の中のアイデンティテ:J. バトラー「パフォーマティヴィティ」概念の社会学的検討」(2008) https://t.co/2H1FfwlZEJ

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