著者
古田 智久
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.79-85, 1995-03-31 (Released:2010-05-26)
参考文献数
38

ホーリズムというタームにより直ちに連想されるのは, いわゆるデュエム=クワインテーゼであろう。このテーゼが科学理論 (物理理論) の構成というダイナミックな認識論的プロセスを射程としていることは明らかである。ところが, クワインは, このテーゼを言語理解という心理的なプロセスにも適用しようとする。それに対して, デイヴィドスンは, 言語理解のプロセスを考察する際にまったく異なるタイプのホーリズムが当の考察に対する制約となることを指摘している(1)。本論文のねらいは, それぞれのホーリズムの特性記述を行うことを通して, 科学理論の構成と言語理解とが方法論的に異なる営みであることを確認することである。デイヴィドスンの見解が正しいとすると, 根源的翻訳という思考実験を想定するに際してクワインが定位した見通しが適切であったとは言えないことになる(2)が, 一方では, 〈翻訳の不確定性と理論の決定不全性とは質的に異なる〉という, いくぶん旗色の悪い(3)クワインの主張が方法論的な観点から見た場合擁護されうるものであることが示唆される。

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