著者
佐久田 静 橋本 衛
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.85-95, 2020-06-25 (Released:2020-07-09)
参考文献数
21

意味性認知症(SD)は進行性の意味記憶障害を中核とする神経変性疾患であり,自閉スペクトラム症(ASD)は社会性の障害と,限定され反復的な行動および興味関心が幼児期早期から見られる神経発達症である.我々は両者の症候学的類似性に着目し,SDの行動を日本自閉症協会広汎性発達障害評定尺度で評価することにより,SDはASDと診断しうるほど両者の行動が類似していることを明らかにした.両者の共通する行動障害の背景に,ASDにおいては「中枢性統合の障害」と,SDでは「抽象的態度の障害」と従来より呼ばれてきた,「細部の具体的なものに捉われて,対象や状況の全体像が読み取ることが困難である」という共通の認知の障害がある可能性を指摘した.

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>神経変性疾患研究で得られた神経生理学的知見は、神経発達症の病態解明に大いに参考になるだろう。 一方で、神経発達症のケアで確立した環境の構造化や養育者の疾病教育などの手法は、神経変性疾患患者が呈する行動障害や人格変化に対するケアの実践に参考になるかもしれない https://t.co/bSp0gVGbND
「抽象的態度の障害」と「中枢性統合の障害」は同義か? 「定型発達児は個々の意味を統合し、全体像を把握する(中枢性統合)。しかしASD児は、過度に細部に捉われるあまり、外界をばらばらに認識することになり、結果として文脈や場面全体を無視してしまうことになる」 https://t.co/hA0XG1EBcb

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