著者
杉山 幸丸 栗田 博之 松井 猛 木本 智 江川順子 順子
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第28回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.19, 2012 (Released:2013-11-01)

1960年代から1970年代前半にかけて餌付けされた野生ニホンザル(Macaca fuscata)で高頻度に奇形個体が誕生した。多いところでは新生児の40%を超えたという。高崎山でも5%に近づいた。初期には近親交配と人工餌、とくに特定国からの輸入大豆に付着した農薬がその原因として指摘されたが、特定できないままその発生頻度が減少して話題に上らなくなった。しかし減少してもゼロに帰したわけではない。最近5年間の高崎山は0.2%である。私たちは奇形発生が頂点に達した1970年代後半以降の高崎山個体群の資料を中心に、その発生頻度の変化を分析した。奇形児の発生は投与餌量と相関を示した。これは個体数増加の著しい時期とも一致する。しかし総個体数とも出産率とも相関していない。すなわち、高栄養条件で出産率が向上して奇形胎児が流死産せずに誕生したという説は必ずしも適切ではない。最終的な究明にまでは至らなかったが、投与餌が原因として残された。また、多発時にも指摘された遺伝的要因も家系集積の存在からその原因の一部として残された。奇形は雄に多く発生したが統計的な有意差には至らなかった。また多くの奇形が手足とも第4指に圧倒的に多く見られたが、その原因は不明だった。

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