- 著者
-
丸山 和昭
- 出版者
- 東北社会学会
- 雑誌
- 社会学年報 (ISSN:02873133)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, pp.71-81, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
- 参考文献数
- 23
1990年代以降,日本においては「カウンセリング」が社会に広く普及してきたが,その担い手である「カウンセラー」は多様な資格・専門性によって構成されている.本稿では,このような専門的職業の歴史を扱うにあたって,Andrew Abbottの専門職論へと注目する.具体的には,Abbottの提示した「緩い専門職規定」と,多様な職業集団の相互作用に注目した「専門職の発達理論」,及びAbbott自身によるアメリカにおける心理療法・カウンセリングの勃興に関する歴史記述を検討した.総じて,Abbottの専門職論は,従来の「専門職化」論における関心の中心にあった「一般的職業はどのように専門職となりうるのか」との問いへの新たな回答を用意するものではない一方で,知的職業一般の職域確保の過程についての分析枠組みを提供するものである.このようなAbbottの専門職論における有効性と限界についての考察から,「知的職業の誕生」,「知的職業による新規職域の獲得」,「professionalismの輸入と変容」という,個別の職業に分断されない新たな「専門職化」の視点の重要性を導き出したことが,本研究の最終的な知見である.