著者
伊東 明子 羽山 裕子 樫村 芳記
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.253-261, 2003-07-15
参考文献数
26
被引用文献数
5

花芽形成における糖および糖代謝の影響を明らかにするため,ニホンナシ'幸水'の短果枝頂芽に対し,5月24日から9月2日にかけ,時期をずらして3週間ごとに遮光処理(光透過率24%)を行い,芽における炭水化物含量(フラクトース,グルコース,ソルビトール,スクロース,デンプン)およびソルビトール異化酵素[NAD依存型ソルビトール脱水素酵素(NAD-SDH),NADP依存型ソルビトール脱水素酵素(NADP-SDH)]とスクロース異化酵素[スクロース合成酵素(SS),酸性インベルターゼ(AI)]の活性を測定した.5月24日から7月28日にかけて行った遮光は,芽におけるフラクトース,グルコースおよびソルビトールの含量を低下させると同時に,遮光期間中の芽の新鮮重増加を抑制したが,それ以降の時期(7月28日から9月2日)の遮光は,糖含量・芽の重量のいずれにも影響しなかった.また,遮光時期により,NAD-SDH,NADP-SDH,AI(遊離型)およびSSの活性が増加した一方,AI(膜結合型)活性の減少が認められた.芽の成長速度は,芽のフラクトース,グルコース,ソルビトール含量とそれぞれ正の相関を示した.また,ソルビトール含量は全SDH(NAD-SDH+NADP-SDH)活性およびAI(遊離型)と,グルコース含量はNADP-SDH活性とそれぞれ負の相関が認められた.以上より,炭水化物の供給が制限されている状態では,糖含量が芽の成長の制限要因になると考えられた.また,遮光により芽の糖異化活性が増加したのは,これにより,芽が同化産物を取り込む力(シンク力)を増加させるためでないかと考えられた.糖含量の低下がシグナルとなり,芽における糖異化活性の増加を誘導している可能性が示唆された.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (2 users, 3 posts, 1 favorites)

【備忘】 CiNii 論文 - ニホンナシ'幸水'の花芽形成期における芽の糖代謝 : 遮光による影響 http://t.co/u2lhOIYj
こんな論文どうですか? ニホンナシ'幸水'の花芽形成期における芽の糖代謝 : 遮光による影響(伊東 明子ほか),2003 http://id.CiNii.jp/HjJiL
こんな論文どうですか? ニホンナシ'幸水'の花芽形成期における芽の糖代謝 : 遮光による影響(伊東 明子ほか),2003 http://id.CiNii.jp/HjJiL

収集済み URL リスト