著者
羽山 裕子 樫村 芳記 阪本 大輔 中村 ゆり
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-9, 2012-01-31

ニホンナシ'幸水'やリンゴ'王林'を用い,リボン型製剤を用いてMA包装用段ボール箱内で1-methylcyclopropene(1-MCP)を処理した場合の鮮度保持効果について検討した。リボン型の1-MCP製剤は,水に溶解させて1-MCPを発生させる粉末型の製剤に比べて1-MCPの発生速度が遅く,規定量の1-MCPを発生するまでの所要時間は6時間であった。また,MA包装用段ボール箱内でリボン型製剤を用いて1-MCPを発生させた場合,箱内の1-MCPの濃度は最大でも規定量の66%であり,規定量の50%以上の濃度を保持した時間は4時間に満たないものと推測された。一方,ニホンナシ'幸水'やリンゴ'王林'に対する1-MCPの処理効果は,リボン型製剤を用いてMA包装用段ボール箱内で処理しても,果肉硬度の低下,地色の黄化,pHの上昇が顕著に抑制され,粉末型製剤を用いて気密性容器内で処理した場合とほぼ同等の高い鮮度保持効果が得られた。本方法を用いれば,処理庫等の設備がなくても簡便に1-MCP処理できることから,個人出荷等の小規模な経営体においても利用しやすいより実用的な処理方法として期待できる。
著者
伊東 明子 羽山 裕子 樫村 芳記
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.253-261, 2003-07-15
参考文献数
26
被引用文献数
5

花芽形成における糖および糖代謝の影響を明らかにするため,ニホンナシ'幸水'の短果枝頂芽に対し,5月24日から9月2日にかけ,時期をずらして3週間ごとに遮光処理(光透過率24%)を行い,芽における炭水化物含量(フラクトース,グルコース,ソルビトール,スクロース,デンプン)およびソルビトール異化酵素[NAD依存型ソルビトール脱水素酵素(NAD-SDH),NADP依存型ソルビトール脱水素酵素(NADP-SDH)]とスクロース異化酵素[スクロース合成酵素(SS),酸性インベルターゼ(AI)]の活性を測定した.5月24日から7月28日にかけて行った遮光は,芽におけるフラクトース,グルコースおよびソルビトールの含量を低下させると同時に,遮光期間中の芽の新鮮重増加を抑制したが,それ以降の時期(7月28日から9月2日)の遮光は,糖含量・芽の重量のいずれにも影響しなかった.また,遮光時期により,NAD-SDH,NADP-SDH,AI(遊離型)およびSSの活性が増加した一方,AI(膜結合型)活性の減少が認められた.芽の成長速度は,芽のフラクトース,グルコース,ソルビトール含量とそれぞれ正の相関を示した.また,ソルビトール含量は全SDH(NAD-SDH+NADP-SDH)活性およびAI(遊離型)と,グルコース含量はNADP-SDH活性とそれぞれ負の相関が認められた.以上より,炭水化物の供給が制限されている状態では,糖含量が芽の成長の制限要因になると考えられた.また,遮光により芽の糖異化活性が増加したのは,これにより,芽が同化産物を取り込む力(シンク力)を増加させるためでないかと考えられた.糖含量の低下がシグナルとなり,芽における糖異化活性の増加を誘導している可能性が示唆された.
著者
齋藤 寿広 壽 和夫 澤村 豊 高田 教臣 平林 利郎 佐藤 明彦 正田 守幸 寺井 理治 西端 豊英 樫村 芳記 阿部 和幸 西尾 聡悟 木原 武士 鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
雑誌
果樹研究所研究報告 (ISSN:13473549)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-9, 2015-03

1. '美玖里'は,1995年に農林水産省果樹試験場(現農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)において'石鎚'に'秋峰'を交雑し,育成した実生から選抜した果実品質が優れる中~晩生のニホングリ品種である。1999年に一次選抜し,2000年からクリ第6回系統適応性検定試験に供試した。2009年2月の平成20年度果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会(落葉果樹)で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2011年3月9日に,登録番号20474号として種苗法に基づき品種登録された。2. 樹勢は強く,樹姿は直立で,枝梢の発生量は多い。雌花の開花期は'筑波'より遅く'石鎚'とほぼ同時期,果実の成熟期は育成地では9月下旬~10月上旬で'筑波'と'石鎚'の間である。若木での収量は'筑波'や'石鎚'と同程度である。双子果,裂果,腐敗果の発生は栽培上問題とならない程度に少ない。環境条件により,虫害果が多発する場合がある。3. 果実は円形で,褐色を呈する。系統適応性検定試験における平均果重は26g程度で'筑波'や'石鎚'と同程度以上で,揃いは良好である。果実の比重は'筑波'や'石鎚'より高く,肉質,甘味,香気ともに'筑波'と同程度以上で'石鎚'より優れ,食味は良好である。渋皮剥皮は困難である。果肉は黄色で,'筑波','石鎚'と比較して明度が高く,黄色味が強い。4. 関東地方以西の産地で特性を発揮できるが,東北地方での適応性は不明である。既存の主要品種と比較して果肉色や食味の点で優れており,ゆで栗等家庭用消費の他,付加価値の高い加工原料としての利用が期待される。
著者
齋藤 寿広 壽 和夫 澤村 豊 阿部 和幸 寺井 理治 正田 守幸 高田 教臣 佐藤 義彦 平林 利郎 佐藤 明彦 西端 豊英 樫村 芳記 小園 照雄 福田 博之 木原 武士 鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
pp.1-9, 2009 (Released:2011-05-24)

1. ‘ぽろたん’は、1991年に農林水産省果樹試験場(現農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)において‘550-40’に‘丹沢’を交雑し、育成した実生から選抜した渋皮剥皮性が優れる早生のニホングリ品種である。1999年に一次選抜し、2000年からクリ第6回系統適応性検定試験に供試した。その結果2006年10月4日付で‘ぽろたん’と命名され、‘くり農林8号’として登録、公表された。2007年10月22日付けで種苗法に基づき第15658号として品種登録された。2. 樹勢はやや強く、樹姿はやや直立である。枝梢は密に発生し、太く、長い。雌花の着生は多く、結果性はやや多い。果実の成熟期は育成地では9月上~中旬で‘国見’と同時期である。3. きゅう果は扁球形で‘国見’と同程度の大きさで、果実の側果側面の形は帯円三角形、横面は尖円形である。平均果重は30g程度で‘国見’より若干小さいが、‘丹沢’よりやや大きく、揃いは中程度である。双子果の発生はやや多く、裂果の発生は少ない。果実の比重は‘丹沢’や‘国見’より高く、肉質はやや粉質である。果肉は黄色で甘味、香気ともに‘丹沢’や‘国見’より多く、食味は良好である。環境条件により、虫害果が多発する場合がある。蒸しグリでの渋皮剥皮性は易であり、焼きグリにした場合、チュウゴクグリ程度に容易に剥皮出来る。4. 試作を検討した関東地方以西の産地で特性を発揮できるが、東北地方での適応性は不明である。ニホングリで唯一渋皮剥皮性が優れる品種であり、家庭での消費増大はもとよりニホングリの新規加工需要の創出等多方面での利用が期待される。