- 著者
-
柚木 秀雄
高村 典子
西廣 淳
中村 圭吾
- 出版者
- 一般社団法人 日本生態学会
- 雑誌
- 保全生態学研究 (ISSN:13424327)
- 巻号頁・発行日
- vol.8, no.2, pp.99-111, 2003
- 参考文献数
- 52
- 被引用文献数
-
4
霞ケ浦では沈水植物群落がほぼ完全に消失しているものの, 胡底の底泥中には沈水植物を含む散布体バンク(propagule bank)が残されていることが確認されている. 本研究では, 散布体バンクを活用して湖岸植生帯を再生する自然再生事業の実施箇所の一つである高浜入り「石川地区」において4基の隔離水界を設置し魚を排除するバイオマニピュレーションを行うことにより隔離水界内に散布体バンクから沈水植物が再生するかどうかを調べた. 隔離水界内では設置して2週間後に枝角類動物プランクトンの密度が11あたり500個体以上に増加し, クロロフィルa量が減少した. そして光の透適量が増加した. 隔離水界を設置して1.5ケ月後に枝角類動物プランクトン密度は減少しバイオマニピュレーションの効果はなくなったが, 隔離水界内には沈水植物のササバモ, クロモ, コカナダモ, オオカナダモと浮葉植物のビシが出現した. 沈水植物が消失した湖沼における小規模な再生の方法として, 散布体バンクの活用と魚類を排除する隔離水界の設置が有効であることが示唆された.