著者
新谷 裕久 桑原 洋子 小澤 亨司 上坂 弘文 可児 瑞夫 可児 徳子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.428-439, 1995-07-30
被引用文献数
7

病院歯科診療室の気菌濃度の継続管理のために簡便で有用なKochの落下法について再検討することを目的として,朝日大学歯学部附属病院の5歯科診療室において3年間(1988,1990,1991) ,気候,環境ならびに気菌濃度の測定をSY式pin hole sampler 法(SY法)とKochの落下法により行った。分析点は次のとおりである。1:気候因子,環境因子と落下細菌濃度(落下法)因子による浮遊細菌濃度(SY法)の推定は重回帰式分析により行った。さらに,落下細菌濃度を加えることによる重回帰式の推定精度への影響について検討を行った。2:落下法とSY法との相関関係を検討し,SY法の浮遊細菌濃度の清浄閾値(0.2CFUμ)に相当する落下細菌濃度を予測区間推定した。次のような成績が得られた。1.重回帰分析による浮遊細菌濃度の推定は,落下細菌濃度因子を加えることにより,重回帰式の推定精度が向上(p<0.01)することが示された。落下法は空気汚染の簡便なモニタリングとして活用できることが示された。2.落下細菌濃度と浮遊細菌濃度は,r = 0.439〜0.606の高い相関関係(p<0.01)であった。浮遊細菌濃度の清浄闇値に相当する落下細菌濃度の予測値は0.755〜1.333CFUであり,信頼度95%の区間推定上限値は2.161〜4.116CFUであった。このことから,落下細菌濃度の空気清浄関値は約4.1CFUであることが示され,落下法は空気汚染の簡便なスクリーニングが可能であることが示された。以上の結果,継続的な気前濃度管理のために落下法の実施は有用であることが確認された。

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