- 著者
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米永 哲朗
新谷 裕久
小澤 亨司
福井 正人
徳竹 宏保
可児 徳子
可児 瑞夫
- 出版者
- 有限責任中間法人日本口腔衛生学会
- 雑誌
- 口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.3, pp.325-334, 1998-07-30
- 被引用文献数
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病院内での快適な環境を構築するための改善の指針を得ることを目的として,外来患者に対し病院環境衛生に関するアンケート調査(診療室,待合室)を実施すると同時に,待合室の環境測定を行った。分析項目は,1.アンケート調査による快適性の検討,2.アンケート調査結果と環境測定値との関連性についてである。次のような結果が得られた。1.病院の環境衛生に不満を感じているものは少なく,総合評価で快適と感じているものの割合は診療室30.4%,待合室25.5%であった。快適と感じているものの割合の経時的推移は,月・時間により14.6〜38.2%の変動が認められ,7月,3月の午前に高く,5〜9月の午後に低いことが示された。2.数量化II類による快適性の判別的中率は高い精度(診療室93.3%,待合室91.6%)であり,快適性を弁別する因子は,診療室では高いほうから順に衛生状態,明るさ,騒音であり,待合室では明るさ,衛生状態,騒音の順位であった。3.待合室における環境測定値とアンケート回答には,温度,湿度,騒音ならびに明るさの因子については高い関連性が認められた。また患者の感覚に基づく快適な環境の推定値は,年間を通じて気温21.2〜25.0℃,気湿33.2〜41.5%,騒音58.9dB以下,照度750〜937 Lxであることが示唆された。4.待合室の快適性の判別分析による簡便なモニタリングに,照度ならびに騒音の環境測定値を用いることの有用性が示唆された。以上の結果,快適性の経時的推移,弁別因子ならびに数値目標が示され,より快適な病院環境を構築するうえでの指針が得られた。